新たな人生の始まり
悲劇のヒロイン(笑)な私、ミシェルはこのたび無事、“婚約破棄”を成功させた。
「いやー、良かったわ。あんな目に見える剥き出しの地雷男と縁が切れてようやくすっきりしたわ。……でも、あの縋り付く様は、本当に足蹴にしたかった」
そう思いながら先日の出来事を私は思い出す。
私、ミシェルは前世の記憶がある。
ただしどんな人物なのかは覚えていないのだから、“知識”があるといった方がいいのか。
異界の知識というとファンタジーっぽくて何か重要そうなイメージではあるが、実際は……という感じである。
そしてその“知識”から私は、策をめぐらせて、親友ユウとの濡れ場という現場(修羅場)に突入し、婚約破棄をもぎ取ったのである。
だがそういった話になった時の王子の、
「待ってくれ、ミシェル、出来心だったんだ!」
「(#^ω^)」
あの時私の唇の端がとてもひきつったのを覚えている。
ユウがベッドの上で、え! という顔をしていたがそんなのはどうでもいい。
「あれを思い出すと腹立つわね。よし、枕にあの王子の名前を書いた紙を乗せて……」
私は枕を踏んでみた。
何かに目覚めそうになった。
というわけで、私はそれを止めてこれからについて考える。
「これからどうしようかな。結構色々と展開があったはずだけれど、ゲーム内のヒロインちゃんにでも会ってみようかしら」
折角だから遊びにいってもいかもしれない。
でもその前に、恋人探しでもしてみるかと思う。
あの王子の印象が強烈すぎて、早く別の男性に上書き保存したい。
二股で済めばいいが、今思い出したが他にもいたような気がする。
私とユウ二人ではすまず、よく浮気男が使う手で、
「恋人もいないんだ。でも君が気になるよ」
みたいな感じで口説いた第三、第四の女性がいたようないなかったような……。
「もっとよく思い出せ私。いや、思い出さなくていい私。女好きだけれど女に優しくない中身があれで見かけと地位だけがある男は、脳内からリセットすべき」
私は変な事を思い出して頭を抱えたくなった。
こういうのを、ハーレム男というべきなのかもしれないが、前世で少年向け商業ラノベのハーレム好きの男性に聞いてみたら、沈黙の後、
「男だってそんな男は嫌だ。というか、××は絶対にハーレムを誤解している」
との事でその後、2時間ほど説明されてしまった。
そこは熱く語る所なのか、と思いはしたが、浮気、寝取られはハーレムではないらしい。
簡単にまとめると、とにかく異性にモテたい、の一言に集約できるようだ。
そう考えると、納得できた。
私だって異性にモテたいし。
さて、それはおいておくとして、そういえば別ルートであの親友のユウにミシェルが王子の件に関して問い詰めるシーンがあった気がする。
だがそれを聞いたユウが告げた言葉は、
「貴方が王子を満足させられないからよ」
と薄く笑われて言われたりするはずだった。
……本当にミシェルは人を見る目が無いなと思ったが、色々な災厄(王子を含む)を丸っと投げたので、小さく私は、ふふっ(はーと)、と笑うだけで済ますことにした。
でもこんなことを考えていても仕方がないと私は思いなおす。
なので、最近流行の、油絵の具を塗り重ねていくように、重ねて、盛って盛って、強い色をいれてという、貴族間で流行のメイクをして美しく装った私。
両親には、そろそろその化粧は止めた方がいいのではと言われたが……彼氏ができるまでという事で待ってもらっている。
「よし、外を散歩してこよう」
そう決めた私はその日……私の“運命”と出会う事になるなど、少しも予想していなかったのだった。
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