幸せな状態
そして気づけば主思いのフィズが、空気のように気配を消していたのだがそれから、何かに気づいたのかグレンと一緒に帰っていった。
厄介事でも降ってきたのだろうか?
「これで明日のデートはお流れにならないかな? そういうわけにもいかないか。……明日は早起きかな? いえ、雨でも降らないかしら」
そう思って空を見て見るけれど晴れ渡っている。
これから天気の崩れる兆しなど、何処にも見えない。
雨よ降れ~、雨よ降れ~と念じてみたが特に何もおこらない。
そういえばあの選択画面を呼び出したら何か起こらないだろうか?
淡い期待を胸に開いてみるが、特に私の望む結果はえられそうにない。
残念、無念、そう私が思っていると、
「ふふふ、グレンと仲がよろしいようで」
「何処がよ」
「時間の問題だなと思いました。んふふ」
楽しそうに妖精ミフィをみながら、他人事だと思ってと私は思う。
今日のデートは凄く、グレンの掌でコロコロされていた気がした。
だから私は悔しい思いをしたというのに、どんな仕返しをするべきなのかが何も思いつかない。
一体どうすれば。
焦燥感に包まれていた私は、もしやもう少し前世の記憶を引き出せば、なにかいいことを思いつくかもと気づいた。
経験さえあればあんな小僧などひとたまりもない、みたいにならないだろうか?
というわけで私はミフィに聞いてみるがそこで、
「えーと、前世の記憶を引き出すどーのこーのはあまりオススメできない方法なんです」
「そうなの?」
「ええ、失敗すると頭が……なんでもないです」
「ちょ、ちょっと、どうなるのよ!」
「……大丈夫だったからいいじゃないですか」
「ミフィ!」
実はその魔法は危険だったということが発覚してしまった。
しかも頭が……。
一応性格がちょっと積極的になった程度ですんでよかったと私は思いつつそこでミフィに、
「こういったことが出来る妖精さんは結構いるの? その魔法が使われた人って結構いる?」
「幾らかはいますが、頭が……になる可能性があるので、頭がアレな感じにしたいなら幻覚キノコ胞子などを使ったほうが楽なんですよね。だから、持っていても使う妖精はいないと思いますよ」
とのことだった。
でもその割には、
「グレン達、何だか私その前世の記憶みたいなものになれているように見えたのよね。何でかしら?」
「他にそういう人がいるとか?」
「それはそれで興味があるわね」
といった話をしていたけれどそれ以上話しの進展がなかった。
ミフィ自身がその人物に思い当たりがなかったかららしい。
「私だってなんでも知っているわけじゃありませんよ。ミシェルの側にいるために能力に制限をかけていますしね」
「そうなの?」
「そうなのです。でもこの体のほうが省エネだし、大人バージョンよりもお菓子はいっぱい食べれるし、いい事ずくめですよ~」
そこで大きな一口大のチョコレートを両手に持ち、ミフィはかぶりつく。
たしかに体格に対するチョコレートの大きさは、私に比率を合わせると大きなバースデーケーキ並みになってしまう。
お菓子が大好きなミフィの場合は、幸せな状態だろう。
「私も幸せになりたいわ」
「なれますよ、今度こそ」
私の小さなボヤキに、ミフィがそう答えたのだった。




