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笑顔で言いやがった

 私は現在、ハムとレタスのサンドイッチを口にしながら真剣に考えていた。

 そう、つまり今日はデート一日目なのである。

 どうせ前のように、言い合いになって喧嘩に発展し別れることになるだろうという予感が、私の中で70%近くを占めていたのだけれど、どうやらそうでもないらしい。


 こうやってほのぼのと食事をしたり心配をされたり、気づけば私の秘密を話していたり。

 ちょっとチョロすぎるような気もするけれど、なんかこう……受け答えをしていると意外にグレンが誠実なような気もする。

 私の心配もしてくれるし。


 思えばあの駄目王子は、自分の事だけで私の心配をしてくれたことはなかった。

 暗い夜道も私一人で平気なようだった。

 こっそりお忍びであっていたとはいえ、あれはどうなんだろ~な~と思う。


 あ、でも口では君は心配だよと言っていたが行動は伴っていなかっただけか。

 そしてグレンも、今は口でそう言っていただけだ。

 危ない危ない、またイケメン補正に惑わされてしまう所だった。


 そう一人新たな危機に頷いているとそこで、グレンが半眼で、


「また、イケメンのいうことは信じないぞ、と思っただろう」

「なぜバレたし!」


 私が悲鳴を上げるように呟くとそこでグレンが小さく笑う。


「ミシェルがそのお笑顔を浮かべる時、大抵、イケメンは信じられないわとドヤ顔になるからだ」

「……く、どうでもいい所ばかり見ているのね。というか私が都合が悪い所ばかり!」

「そんなわけあるか。再会したからとりあえず、ミシェルのことは出来る限り覚えておこうと思っているだけだ」

「……」

「しかも大抵すぐに、これだからイケメンは! という謎思考になるからな。その時の表情は何度も見せつけられたので、嫌でも覚える。そもそもミシェルは心の中で思っていることが顔に出るからな」


 そう言われた私は、何かこのグレンに言い返したかったけれど、全て思い当たるフシのある話だったので呻くしかなかった。

 いつか絶対、ギャフンと言わせてやるんだと心の中で私は誓っているとそこで、


「これでも俺なりに結構我慢して、口説いているんだから少しくらいは信用するべきだな」

「ふん、すぐ私を怖がらせたりするくせに」

「……別にからかっているだけだ」

「……冷たい目で見てやる」


 というわけで私はとても冷たい氷のような、絶対零度の眼差し(当社比)で見つめた。

 だがグレンは笑うだけでそれどころか、


「俺がこれだけ優しく譲歩してやっているというのに、ミシェルはどうして素直にならないんだ?」

「何処が優しいのよ」

「普通にデートしてやっているだろう。それ以外にミシェルを手に入れる容易な方法はいくつかあるからな」

「どんな方法よ、言ってみなさいよ」


 売り言葉に買い言葉で言い返してやるとそこでグレンがいつものように意地悪く笑い、


「もっと簡単な方法は、俺の別荘に連れ込んでミシェルの意見は関係なく“既成事実”を作ることだけれどな」

「……変態」

「やらないでやっているんだから俺に感謝しろ」

「私がそう簡単にどうこうできると思わないことね」


 と鼻で笑ってやったら、グレンの顔が私に近づいてきてほほに唇が触れた。

 完全に油断した。

 私が凍りついているとそこでグレンが私に、


「明日のミシェルの手料理は楽しみにしている」


 そう、笑顔で言いやがったのだった。




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