全部、●REC、という感じで
暫く手を繋いで、ぼんやりと景色を見ていたが、残念ながら私はグレンに対しての好感度がそこまで高くなかったのと、
「……そろそろ手を放そうか。俺は放すタイミングが掴めなかった」
「奇遇ね、私もよ」
初めこそはなんかいいかなという気もしたが、いつまでも握っているとそれはそれで……夢がないなと私は自分のことについて思った。
さて、時間について確認すると、気づけばそろそろお昼らしい。
「ここなら座る所もあるし、ここで食べない?」
「それはいいかもしれないな」
といった話になり籠を開くと、色々と入っていた。
野菜などが挟まれたサンドイッチに、果物や焼き菓子、飲み物は瓶に詰められた美味しそうなハーブティ。
なかなか美味しそうだが、少し二人で食べるには多いわねと思っていると、
「みしぇる~、お腹がすいたよぅ」
「ミフィ! 家の中で瓶詰めにして封印しておいたのに、どうしてここにいるの!? と言うかお菓子と一緒に封じておいたでしょう!」
そうなのだ、家においてきても飛んでくるであろう彼女。
こんな面白い展開はすぐ横で見ていなければと言いやがったので、そういった処置を施したのだが、どうやらあの程度の封印ではたやすく解かれてしまうようだ。
次はさらに工夫せねばと思っているとそこで要請のミフィが、
「ふ、私くらいの妖精さんになると、あの程度の封印は無いにも等しいのです」
「……クッキーは?」
「……封印を解いた際に粉々に砕け散りました。なので朝から何も食べていないんです」
「……妖精さんてそこまで食事は必要じゃなかった気が」
「ふふふ、気分的なものです。さあ、お菓子を。さっきまでのグレンとの会話と行動は全部、●REC、という感じで映像録画を魔法で行っておきましたので、再生されたくなければ私に菓子をよこすのですぅ~」
「! く、仕方がないわ、ほら」
「ああ! 魅惑のチョコレート!」
差し出すとすぐに包み紙からチョコレートを取り出して、食べ始めるミフィ。
おとなしくなったミフィは置いておくとして、今飛び出してきたミフィの直ぐ側に何者かが潜んでいるのに私は気付いた。
髪の色から察するに、
「フィズ?」
「……気づかれてしまいましたか」
現れたのはグレンの従者であるフィズである。
彼は頬をかいてから、
「グレン様が上手く出来ているか様子を見ていたのですが、なかなか興味深い話が聞けました。あ、いえ、口外しませんので、ご安心ください」
そう告げたフィズに、私は何だかなと思う。
前世の記憶だの言っても特にそこまで気にしていないようだ。
文化的な、それこそ魔法などがあるからなのか、他にもそういった事例があるのだろうか?
そんな疑惑が私に湧いてくるので、あとでミフィに聞いてみようと思う。
思い出させたのはミフィの力なので、妖精さんにある程度ありがちな力なのかもしれないから。
けれど今は他に言うべき言葉があり、
「グレン、量もあるし、フィズも一緒にどうかしら。私達だけ食べているのもね……」
グレンが口に含んでいるがために頷く。
それにお言葉に甘えてとフィズも、たまごサンドを口にする。
実はこのサンドイッチの中で特にうちの料理人が自慢しているのがこのたまごサンドだったりするのだ。
などと考えているとそこでたまごサンドに手を出して、美味しかったらしく黙々と食べていたグレンが、
「ミシェル、さっきの異界の知識だか何だかの話を聞いていて気づいたが、西の井戸には近づくな。別な理由での暗殺があるかもしれないから」
「心配しすぎだと思うわよ」
「心配して何が悪い」
強い口調で言われて私は、それ以上何もいえなくなってしまったのだった。
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