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恋は盲目、純粋だったんだ

 そこはほんの少し暗い場所だった。

 そういえば先ほど別れた道のうち、細い道の方を歩いていた気がする。

 この道はあまり通る者がいないらしく、道の所々に雑草が見え隠れしている。


 そんなこの場所に、幼い私とグレンがなぜここに来ていたのかというと、


「……爆発竹がこんなに。ジメッとしているから沢山……」

「そうだな、また石を拾って投げてみるか?」

「あの音が嫌いだって私、何回も言ったよね?」

「さあ、覚えていないな」


 白々しく告げるグレンを殴りたい衝動を私が抱えているとそこで、


「この場所、覚えているか? ミシェル」

「確か採りに来た気がする。そういえば、ここも覚えがある……もしかして小さい時に一緒に来て遊んだのってこの別荘だったの?」

「そうだぞ。ようやく思い出したのか。それに俺の別荘にも案内したから俺が初めてであったあの場所も通ったはずなんだよな」

「お、覚えていない」


 たしかに遊んだ記憶はあるけれどそんなの鮮明に覚えていない。

 そもそも別荘だって他にも幾つもあるし。

 ずっと会っていない人物との出来事を覚えていられるほどに記憶力はよくないのだ、私は。


 でもそれは一般的だと思う。

 悩み始めた私にグレンが、


「しかしあの頃と、変わっているようで変わっていないな、ミシェルが」

「変わってない?」

「その悩んでいる顔、子供の頃とそっくりだ」

「……そう」

「性格は少し活動的だがな。俺の知っているミシェルだと婚約破棄になんて行きそうにもないし、あの王子を本当に愛しているようだったからな。俺は手出しできなかった。どういう心変わりをしたのか逆に聞きたいくらいだな」


 そう言って笑うグレンに私は目を瞬かせて、


「なんだかあの駄目王子を愛しているようだったから、手を引いたって聞こえるわね」

「そうだ。悔しかったが、ミシェルの愛が欲しかったから、好きだったから諦めた」

「……諦めがいいのね」

「いや、悪かったようだな。実際に再会したあの時、あの化粧をしていなかったら、攫っていたかもしれないしな。あれは衝撃的だった」


 恐ろしいものを見てしまったぜ、と言うかのように呟くグレン。

 だが私としては、熱烈に口説かれているような気がしないでもない。

 しかし攫うとか、


「私を誘拐なんて出来ない気がしますけれど」

「……本当に、どうしてこんなになったんだろうな。中身も含めて」

「中身……」

「ある日突然頭を打ったかのように変わって婚約破棄をいい出したのと、ミシェルの母君から聞いていたが、やはり頭でも打ったのか?」

「別に打ってないわよ。ちょっとお友達の妖精さんが、私の前世の記憶を少し思い出させてくれただけで」


 さり気なく告げてみる。

 まあ後で冗談と言ってしまえば終わりだろうと私は思ったのだが、そこでグレンは黙ってしまった。

 次に私を見て、


「……それで婚約破棄を?」

「そうよ。確かに昔のミシェルの記憶もあるけれど、それに別の記憶を足すとこう、ね。あの王子のダメさ加減に気づいたのよ」

「……そうか、それで、よくあんな白々しい発言にミシェルはコロッと行くなと思っていたんだが、そうか。うん」

「……ちょっと、今の発言、私が昔は騙されやすいアホの子って言っていなかった?」

「恋は盲目、純粋だった」

「後から取り繕ったって、そうはいかないわよ!」

「はは。……でも、なるほどね。それはミシェルの両親には話したのかな?」

「いいえ。……まて、前世の記憶は今のは冗談で……」


 私は慌てて取り繕うとしたけれど、グレンはそこで嗤った。


「また一つミシェルの弱みを手に入れたな」


 それを聞いて私は、こいつだけは絶対に気をつけねば、そう思った所で、湖を見渡せるような場所に休憩用のベンチが置かれているのが見えたのだった。

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