がんばってください
困ったようなグレン。
何でそこでグレンがそんな顔をするのだろうと私は思った。
彼が本当は何をもって近づいたのか私は見極めないといけないのだが……この状況では、本当に……いやいや、そんなはずは。
などと考えているとそこでグレンが、
「これで、ミシェルにお前だけが好きなんだ、なんて言っても信じないよな」
「当たり前よ。そもそも昔から好きでした~、とか時々見に来ていたって、だったら話しかけてくればいいじゃない。ただ立ってじ~と私を見ているとか、“不気味”じゃない?」
「ぶ、“不気味”……俺が“不気味”だと!?」
そこでかっと目を見開いそう言い返したグレンに、そうか、この人自覚なかったのかと私は思いながら、
「では考えてみましょう。グレンには昔であった幼馴染の女の子がいたとします、美少女ね」
「それはミシェルじゃないのか?」
「……私ではなく興味のない女をイメージして」
「興味のない女で美少女ね……全部、ミシェルになるんだが」
「私は何人いるのよ」
「10人くらいかな」
グレンの頭の中がどうなっているのか、一瞬気にはなったけれど、そんな量産型私ちゃんはクローン人間みたいで怖いので、そのイメージを払拭してもらうために、
「イケメンなんだから最近女性の方から告白とか無いの?」
「あったが何か?」
「とりあえずその人の髪の色と目の色を変えて」
「……分かった」
「よし、準備はいいわね。そのこと昔遊んでいたとして、その子が実は木陰から貴方が知らない内にじっと見つめていて……大人になったら目の前に現れて、あなたが好きですと現れたらどう思う?」
「……」
「それも初対面で嫌な女を演じつつ、実は貴方のことが本当は好きなのと言ってきたらどうする?」
「……断ったら呪われそうだな。根に持たれそうだし」
グレンがそう答えた。
一方私はと言うと、呪われそう、という意見は特に自分の中にはないことに気づいた。
そもそも幼い頃の記憶を呼び覚ましてみると、
「……呪ったり根に持たれたりは、グレンの場合はなさそうね。断っても」
「……いや、根に持つぞ、俺は」
「昔の性格を思い出す限り、全く想像出来ないわね」
よくも悪くもあっさりした性格で、女の子だと思っていたグレンはそういうタイプではなかった。
そこでグレンが嘆息した。
「ミシェルの中で昔の俺は、どんな風に見えていたんだ?」
「普通の友達。憧れていた部分もあるかも。私はあの頃はあんなに活動的ではなかったし。連れ回されて一緒にいるのも、結構楽しかったの」
「……」
グレンは黙ってしまった。
私の受け答えは特におかしくなかった気がしたのだけれど、と私は思っているとそこでグレンが深々とため息を付いた。
「変な女に育ったな、ミシェルは」
「な・ん・だ・と」
「そうだろう? もう少し大人しかったら……はあ」
「だから何で溜息をつくのよ」
「いや、俺は断られたら根に持つタイプだから」
「ん~ 、いや、最近再会したら性格が悪くなっていた感じだし、そういうこともありうるの? でも根に持つって、持ったからって何をする気なの?」
「……どうするかな。そのうち考える。今はデート中だしな。この一週間でミシェルの気持ちを俺に完全にむけさせないといけないし」
「そうですか、頑張ってください」
「頑張るよ」
私は最後まで抵抗しますがね、と私が思ったのはいいとして。
そこで、私は懐かしい場所にたどり着いたのだった。
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