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普通普通、普通って何?

 料理と次のデートの約束をさせられてしまった私は、どうこの危機的状況を乗り越えるかについて思案していた。

 どこか、どこかに抜け道はないものか。

 私は僅かなヒントも見逃さないように必死に考えて、


「そ、そうよ、まだ日程が決まっていなかったからそのまま保留……」

「ちなみにミシェルの母君にはこれから一週間連続デートといった話をつけてある。残念だったなミシェル。俺からは逃れられない運命なのさ」

「その悪役みたいな台詞、どうにかならないの?」

「……ならどういえば良いんだ」

「普通でいいんじゃないの?」


 そう私が投げかけるとグレンは黙ってしまった。

 そして暫く、普通、普通……と小さく数度呟いてから、


「ミシェルの普通ってどういったものだ?」

「普通は普通よ。普通……」


 そこで私は考える。

 私にとって都合のいい男像の発言は、場合によってはあの駄目王子の手管になるらしい。

 それはそれで嫌だ。

 

 となると、普通ってなんだろうと思う。

 このグレン自身が何を望んでいるのかというか目的がわからないというか、それを考えるとどうしようかと私は考えてから……グレンの手を私は握った。


「え?」


 グレンが小さく声を上げた。

 驚いたような顔で私を見てから、私から顔を背けた。

 何よその反応と思った私は、


「デートっていい出したのはそっちじゃない! 何で顔をそむ……け……」


 そこで私は気づいてしまった。

 このグレンの耳が赤い。

 とりあえずグレンの顔を覗き込もうとすると体ごと傾かせて私から逃げていく。


「……顔赤いわね」

「……」

「何でそんなになるのよ」

「……」


 しかしグレンは答えない。

 おかげで私だって当てられてしまったようの頬が熱くなってくる。

 これは歩きながら風に当たり冷やさないといけない。


 そう思ったので私は、


「と、とりあえずデートだし、歩きましょうか」

「そ、そうだな」


 と言った受け答えをしながら私たちは手を繋いだまま、歩き出したのだった。









 気まずい、とても気まずい。

 先ほどの反応、手を繋いだだけだよね? 私はただグレンと手を繋いだだけだよね?

 そうは思うものの、今この状況で私はグレンに何を聞けというのか。

 

 ま、まさかグレンは本当に私が好き、とか?

 い、いや、落ち着け面食いな私。

 イケメンはあの駄目王子もイケメンだったでしょう? 


 このグレンだっていつ何時あんな風に他の女に走って……というか、そもそもこのグレンの女性関係、私は全然知らない! と私は気づいた。

 これは後で人に調べさせないといけない案件である。

 そうすればどうして、彼が私に近づいたのかが分かるはずなのだ。


 すでに私の知りうる異界の知識(乙女ゲーム)から逸脱してしまい、先が読めない。

 とりあえずは自分の身は自分で守る、そのためにも私はグレンに聞いてみた。


「グレン、一つ聞いていい?」

「なんだ?」

「グレンくらいのイケメンだったなら、彼女は幾らでもいたんじゃない?」

「……付き合っては見たが好みじゃなかったから全部、婚約は流れた。お陰で両親は……いや、なんでもない。それでそうやって聞いてくるのは、あの駄目王子みたいに浮気をしていると思ったのか?」

「でもそういえばあの駄目王子も君だけだよって言いながら、他に何人もいたし」

「ん? ミシェルの親友だけじゃなかったのか?」

「何で知っているのよ、というか他にも二人は確実にいたはず」


 それを聞いてグレンは黙ってしまった。

 まあ当然の反応な気もした私だけれどそこでグレンが、


「それは、イケメン不信になるな」


 そう、珍しく困ったように呟いたのだった。


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