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忍び寄った魔の手(笑)

 その日の夜の食事は味も思い出せない。

 大好きなオムレツ(香辛料がいい香りがする)を食べたが何も記憶できなかった。

 私の中にある焦燥感が大きすぎたのかもしれない。


「どうしよう、これからどうしよう」


 現在布団の中で、私は真剣に考える。

 私はグレンに対してしてどうすればいいだろう。


「いきなりな展開だしね。まさか、昔のあの子が男となって現れるとか、性別何処にいった展開はありえなさすぎる」


 最後に喧嘩別れしたものの、その前は仲が良かったのだ、彼女とは。

 自由で活動的な彼女は外で遊ぶのが好きだった。

 家でお人形遊びや編み物、刺繍ばかりをする私を引きずり出すように、彼女は私を呼んだ。


 同い年の女の子が少なかったので、彼女に連れられて野原や森を駆け巡り、時に木の実を採って食べた。

 釣りの仕方も知っていて、確か岩の後ろの……を餌にして、魚を釣ってみたりした。

 他にも彼女とは本を読んだり、木陰で眠くなったら子守唄を歌ってあげた気がする。


 姉妹のような友人だった。

 あの頃の私は大人しかったのでそんな彼女に羨望に似た感情を持っていたような気がする。

 純粋だった私が持っていたものは、陽の光に輝く透き通ったガラス玉のような輝かしい憧れだった。


 それが、アレである。

 アレ以外の何物でもない。

 しかも男だった。


 幼い頃の記憶を呼び覚まそうとすると、グレンの幼少時代の女装は明らかに美少女だった。

 しかも、時折魔物と遭遇しても剣は振るうし、魔法は使うしで。

 あの頃から攻撃魔法はグレンが得意で、私は回復系の魔法が得意だった。


 よくよく考えれば剣を持っている辺りであの子、女の子っぽくないよなと私は気づくべきだったのである。

 それを普通にグレンちゃんつよーいと、目を輝かせていた気がする。

 なんだか昔の自分もこの前の婚約破棄前の自分も、


「世間知らずの綺麗なお嬢様といった感じ。色んな人の“悪意”に私は少しも触れていなかった。それが敗因なのか」

「……しなくていい苦労はしなくてもいいのでは?」


 そこで私の呟きを聞いていたらしいミフィが飛んでくる。

 耳に心地良い言葉だけれど、


「そのつけがあの駄目王子なのはちょっとね。グレンなのも嫌だけれど」

「えー、まあいいですけれど。これからの展開を私はニマニマしながら見ましょうか」


 妖精のミフィは他人事のように言う。

 ヒドス、と私は思いながらも眠気を催して眠ってしまったのだった。








 次の日の朝、いつもどおりの時間に起きた私は、すでに奴らの魔の手が忍び寄っていたことに気付かされた。

 それは朝食時にいった母の言葉。



「今日の朝、グレン様が来て、ミシェルにデートのお誘いをしに来たの」

「!」


 口に含んだクロワッサンを吹き出しそうになった私は、即座に水を飲んだ。

 どうにか楽になった私に母が、さらに衝撃的な言葉を私に投げつけてくる。


「わかったわ、ミシェルに伝えておくわね。良いわよと言っておいたわ」

「!」

「それとこの籠が、お弁当。ふたりでたべてね」

「!!!!」


 何が起こっているのかさっぱり分からないでいる私に母が、これを持っていつもの場所に待っているのだそうよと、付け加えたのだった。



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