何者かが私の別荘に接近してくるのを探知した
その日の夜までに、グレン達が再び訪ねてくる事はなかった。
それに関しては良かったと思う。
「でも何時会ったのかしら。全く思い出せない。思い出せないとそれはそれで気持ちが悪い」
あれほどまでのイケメンは早々転がっていなそうなのだが。
イケメンと言えばイケメンだが、多分グレンの方があの駄目王子よりも美形である。
性格は抜きにして、あんなレベルのイケメンはそんなに見た記憶が無いはず。
そうなってくるともう一つ可能性が出てくる。つまり、
「私を誰かと間違えているってことね、令嬢ミシェルを別の人物間違えるとは……やはりイケメンは駄目ね」
とりあえず今度はイケメンではない人物で誠実な人を選ぼうと私は決めた。
だがこの世界にイケメンでない人物はいるのだろうか? と妙な疑問が湧く。
ゲームに限らず漫画や小説でもそうだが、平凡といいつつイケメン、また、その逆も然り、という法則がある。つまり、
「この世界には、イケメンしかいないかもしれない可能性が」
驚愕の事実!
私はイケメンしか彼氏に出来ない!
それはいいこと……なのか?
「……私、疲れているのかな。うん、そうね。寝よう。もう遅いし」
自分に言い聞かせるように呟いて私は、そのまま夢の中に落ちていったのだった。
次の日。
その日は雲一つない快晴だった。
悩みすら全部お空の彼方に全て吹っ飛んでくれたら嬉しいな(はーと)と、その青空を寝間着姿で窓から見上げていた私は、何者かが私の別荘に接近してくるのを探知した。
まだ遠目でしかその姿は確認できない。
しかし、約120秒以内にこの別荘に到着する距離にいるのは確実である。
つまりその対象は、私の部屋から、一分間に80mほど移動したと仮定すると約160m程度離れた場所にいるのである。
ここは所々に木々が密集する視界の悪い別荘。
それ故に対象はその木々に隠れてしまい、発見が遅れてしまったのだ。
何てことだ、時間がない。
私は慌てて化粧や身支度を整える。
今日はゆっくり寝てよ~、疲れたし~、二度寝~などというだらしのない行動をして油断していた私が愚かだったのだ。
あの髪の色からすぐわかったが、彼らが来たのだ。
まさか本当に来るとは、そう思いながら慌てて着替えて化粧をする私。
そして何とか身支度を整えた所で部屋を叩く音と共にメイドが、ミシェル様、お客様ですと私に告げたのだった。
何なんだこの状況は。
談笑するグレンと私の父母。
ちなみにグレンの隣にはフィズが座って黙ってニコニコしている。
私の方には妖精のミフィがいて、何も言わずに今はおとなしくしている。
しかしこのグレンの好青年プリは何だ?
母と父が凄く有効的な感じで話しているのはいいのだが、初めて湖のほとりで会った時のあのグレンの“意地悪”そうな何かが何もない。
見事に隠されてしまっている。
これは、にゃーと鳴く、猫をかぶっているような状態である。
状況が把握できない。
何が起こった、私が部屋の入口で凍りついていると、そこで私に気づいたらしい母が、
「ミシェル、久しぶりに貴方の古いお友達が訪ねてきたのよ」
そう私に告げたのだった。
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