これで口は塞いだ
妖精のミフィの観察眼はあてにならないが、忠告はありがたく受け取ることにした。
婚約破棄は無事手に入れることはできたが、記憶にある限り、異界の知識(乙女ゲーム)を総動員すると現在危機的状況にあるはずだ。
そして私から王子を寝取ったという元親友ユウも、巻き込まれて大変なことになっているはずなのだ。
確か、ゲーム内であの駄目王子愛していたミシェルは、身を粉にしてあの王子を救っていたような気がするが……結果として口ではありがとうと言っていても、あの駄目王子はミシェルの事は便利な“道具”としか思っていなかったようだ。
女の扱いの上手いいイケメンという屑王子。
喉元過ぎれば熱さを忘れるというのはよくできた言葉だ。
「そんな風にいいように使われる可能性があるなら、早く恋人を見つけておいた方がいいわね。でも王子ね」
「どうしたのですかミシェル」
妖精のミフィが私に問いかけてくる。
とりあえず、天然腹黒な彼女に、透明なガラス瓶に詰められた色とりどりのキャンディ……そのうち黄色いものを一つ取り出して彼女に差し出す。
嬉しそうに受け取った彼女は、喜んでそれを口に入れる。
くくく、これで妖精ミフィの口はふさいだと私は思いながら、
「恋人を作っておいて、彼がいるからよりを戻せませんて言ってもいいのだけれど、今回こじれた相手が一応は王子だって事なのよね」
「もごっ……地位的なもので、対抗できる相手を探したい、という事ですか?」
「それもあるけれど萎縮しちゃっても面倒だなって。王子が求婚してよりを戻したいって言っているのに別の男に走っている、という陰口はもう私としては勝手に言っていればで切り捨てればいいけれど、男がそれを納得するか」
その恋人になった男に色々な意味での圧力がかかる可能性も無きにしも非ず。
面倒なことになったと思いながらも、
「いずれ、彼自身の行いから王子としての地位は取り上げられて廃嫡されるはずだし、その時まで逃げ回って息を潜めるほうが妥当かもしれないわね」
嘆息するように私が告げると妖精のミフィがじっと私を見つめて、
「もしやあ今回もまた、“ゲームとやらの知識”がおありなのですか?」
「今回持って……“聖女”の時もあったの?」
「ありましたよ~、あーるぴーーじーだの何だのと言っていましたが、要所要所の“予言”しか“聖女”は知らないようでしたが」
その説明を聞きながら、ゲーム内は途中の道などはほとんどカットされているのと、出現イベントがないと、珍しい敵も出てこないからなのだが……それである程度は事足りたはずなので問題はない……はず。
そう私が思っているとそこで妖精のミフィが、
「今回もゲームの知識があるのですか?」
「あるわよ、違うゲームだけれど」
「では“予言”の能力は使える、ということですね。それを使ってこれからの危機を回避というわけには?」
「そうしたいのは山々なんだけれど私のプレイしたゲームは、あの駄目王子と結婚しちゃった後なのよね」
「……グレンでいいから捕まえておきましょう。今日はミシェルに色々言われていたので明日くらいまでにはしおらしくなっているはず」
と言ったようにまたグレンを薦め始めたので、やはり一個の飴玉では口が塞げなかったかと思い、緑色の飴をもう一つ妖精のミフィに渡したのだった。
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