この妖精の観察眼はあてにならない
やはりこの妖精さんは無自覚に黒い。
私は自宅への帰り道、その妖精ミフィの言葉に頭痛を覚えながら、
「それはないわよ。なんであんな行動をとるのよ。好きだったらあの化粧をほめてもいいでしょう!?」
「いえ、あの化粧はあの人の感性が正しいと思います」
「……百歩譲って、いきなり捕まえて怖い事を言うなんて、絶対におかしい」
「では、好きならどのように行動するべきだと思いますか?」
そこで妖精のミフィが私に問いかける。
私を好きだったらどんな行動をとるか。
「そうね、もっと容姿などを褒めたたえてお世辞を言って、君だけが全てだよ、みたいな?」
「それはあの浮気駄目王子です」
「……」
「ダメ男の手管です。また一つ賢くなりましたねミシェル」
ミフィはにこりと笑って私に告げるが目が笑っていない。
そんな妖精ミフィに私は聞いてみた。
「ミフィはそんなにあの駄目王子が嫌いなの? 私も嫌いだけれど」
「……視界に入れるのも嫌ですね」
「あ、はい」
笑顔で言い切った妖精さんにそれ以上私は聞くのを止めて代わりに私は、
「でも、ミフィと出会ったのは私がまだ、10歳くらいの時だったわよね」
「そうですよ、あの頃もお人形のように可愛かったですよね、ミシェルは」
「あの頃に、グレンに似た人物に私は会っていたかな?」
「? いませんよ」
「そう?」
「そうですよ、あんな黒髪で赤い瞳のイケメン、子供の頃も可愛かっただろうし、そうだったら覚えていますよ」
「となると私があいつに会ったのはもっと前。うーん、記憶にないわね」
「そんな話を、先ほどの……フィズという人がしていましたね。グレン……うーん、分かりませんね。実は偽名とか?」
「偽名? 偽名、ね。だから思い出せないのかな?」
そう私は真剣に悩む。
思い出せないのはそれはそれで気持ちが悪いのだ。
ミフィの時のようにまだ一部思い出せないような記憶があるのだろうか?
だがあの性格の悪さを考えると、思い出さないような気もするが。
何か彼の言っていたことでヒントが無いかと私が考えているとそこでミフィが、
「でもあのグレンという人は後で謝りに来るって言っていましたね」
「……来なくていいのに」
心の底からそう思って私が言うと、妖精のミフィが、
「まあまあ。つい出来心だったのかもしれませんよ」
「ミフィ、何であいつの肩を持つのよ」
「……よりを戻そうと駄目王子が言ってきた時、彼氏がいた方がいいのではないかと。それに……私、覚えていますから。前世の“聖女”様が凄く幸せそうでしたし」
「今と性格が違うんじゃないの?」
「大体あんな感じでしたよ付き合う前は。好きな子相手にどう付き合おうかと努力しているのが緊張もあって裏目に出ていましたが……付き合ってしまえばデレデレでした」
「……」
「それに今回は本当はお茶会に呼ぼうとしていたみたいですし。結果はあれですが、ミシェルに喜んでもらおうと企画したのは、本当だと思いますよ」
ミフィがそう諭してくるが、やはり自分で男を探そう、この妖精の観察眼はあてにならないから新しい彼氏は自分で見つけよう、そう私は思ったのだった。
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