めっちゃラブラブだった夫
手を伸ばしてきたグレンに私は何かの危機感を覚える。
なので私はその手を流れるように掴み、関節技を……かけられなかった。
焦ったように逃げ出すグレン。
ちっ、逃げられたかと私が舌打ちするとグレンが、
「なんで令嬢ミシェルがこんな、体術に詳しいんだ」
「自分の身は自分で守ることにしているの。残念ね、この私がチョロく良いようにされるなんて思わない事ね!」
「く、扱いにくい女だ。そもそも何でこんなに腕力が……しかも身体能力の強化を使っていないじゃないか! 見ている限り!」
「ふふん、こう見えても、片手でリンゴは握りつぶせますわよ?」
得意げに告げる私。
さて、私がこの令嬢ミシェルになったのはつい最近であり、その間にここまで体を鍛える事は出来ない。
つまり、この能力はあの大人しかった令嬢ミシェルが手に入れたものだったのだ。
では、ここで何故その令嬢ミシェルはこの能力を手に入れたのか? という疑問がわいてくる。
だがその理由は単純明快である。
そう……この令嬢ミシェルは、裏切った寝取り女の親友ユウを暗殺したかった。
しかも、人の手が信用できないので自分の手で確実に。
だが人を殺すというのは、魔法を使って攻撃するには準備に時間がかかり、武器を使う場合では、殺傷能力の高い武器は重いので身体強化の魔法を使う必要があるが、その間に逃げられてしまう。
ならば、即座に武器をもって暗殺できるだけの筋肉が必要だ。
そして相手は人間。
逃げるだろうから少しでも早く追いつくために筋肉を強化し、そして反撃を食らった時に受け流す能力もあった方がいい。
だから体術は必須。
しかも一度失敗すれば相手も警戒する。
だから失敗は許されない。
そう、私の愛する(ダメ)王子は渡さない!(※今は、どうぞどうぞ、である)。
果たして、その情熱により令嬢ミシェルは片手でリンゴを握りつぶす腕力を手に入れたのである!
そんな、方向性は別として努力家、令嬢ミシェルだからこそできたような能力だったりする。
真面目な人間を怒らせると怖いよなと私は思いました。まる。
そこで誰かが走ってきた。
グレンと昨日いたフィズというイケメンだった。
そこで対峙する私とグレンを見てフィズが、
「グレンさ……グレン、何をやっているんですか?」
「昨日、話していたサプライズティーパーティへのお誘いをしようとしたら、現在抵抗されている」
「……グレンさ、が、抵抗されて捕まえられないって、令嬢ミシェルは何かの武術の達人ですか!?」
「さあな。だがこうなったら魔法でどうにかするしかないな」
「! 普通に会話で何とかしましょうよ!」
「ここまでやってやられたままでいられるか!」
「何を言っているんですか!? そこは意地を張る所じゃないでしょう!?」
悲鳴じみた声を上げるフィズ。
こっちの人は意外にもまともだった。
少しだけフィズの好感度が上がりつつ私は、そばに隠れているだろう妖精のミフィに告げる。
「ミフィ、お願い! 私に手出ししようとするイケメンがいるの! ちょっと痛い目に合わせちゃって!」
「はーい(^O^)/……いいんですかミシェル」
「何がよ」
戸惑っている妖精ミフィ。
何でいきなり怖気づいているのかと思っていると彼女はグレンを指さし、
「この人、ミシェルの前世で、めっちゃラブラブだった夫の転生体ですよ、彼」
そうグレンの事を告げたのだった。
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