諦めて薄化粧にしてみた
私の得た化粧が、実は必要ではないものだった件。
努力が徒労に終わってしまった私は、がっかりしてその日はふて寝した。
妖精のミフィは私に何かを言っていたが、私はその日機嫌を悪くしていたので口を利かなかった。
次の日。
諦めてのろのろと起きた私は、銀色の髪に櫛を通す。
サラサラの髪はつややかで、特に櫛を通さなくてもいいほどだった。
次に今まで使っていた化粧セットを見て、次に古い木箱お渡しは取り出した。
以前気に入って使っていた化粧道具が入っていたものだ。
それを取り出して私は化粧をする。
懐かしい感触。
そして薄くしているのかしていないのか程度に顔を整える。
それから朝食を食べるために食事の間に向かうと、そこに辿り着く前に両親と遭遇。
泣いて喜ばれてしまった。
「だから言ったじゃないですか。あの化粧はちょっとって」
「……解せない」
「いい加減無駄な努力だって認めましょうよ~」
妖精のミルフィは相変わらず黒い。
これではあのイケメン達が言っていたことの方が正しいみたいではないか。
「気に入らないわ。イケメンが正しいなんて」
「そのイケメンの部分が気になりますが、まあ、折角なので服を着て昨日の場所に行ってみませんか? まだあの人たち居るかもしれませんよ?」
「いたらどうだっていうのよ」
含みのあるこの妖精に聞くと、楽しそうに笑う。
「いいからいいから」
「……確かに令嬢ミシェルだと認めさせないと私の腹の虫がおさまらないわね。よし、着替えて行ってみるか」
そう私は決める。
その用のドレスは今日は水色を基調として白いレースと、模造真珠を合わせたものだ。
清楚で上品というと、こちらのイメージな気がする。
その水色のドレスに合わせたのは紫色の石のペンダントだ。
アメジストに似たその石は、魔力をため持ち主を守る効果が付されている。
こういった所はファンタジーっぽいよなと私は思う。
だが思って、何か変な感じがした。
だって私はミシェルとしてこの世界に生まれ落ちて、魔法の練習もがんばったのだ。
清楚カレンダの花のようだのと言われていたらしいが、記憶の中のミシェルは強力な魔法も使える子だった。
「でも折角だからゲームっぽい選択画面で魔法が使えたら楽……」
私は冗談で言ったつもりだった。
だがそう告げると同時に、水色の選択画面と幾つもの魔法表示が……。
「き、消えろ……消えた」
私の意思で出し入れできるらしい。
便利と言えば便利だが、
「別のゲーム能力が混ざっている気がする。この乙女ゲームの会社って、そういえば他のゲームも作っていたような……でもよく思い出せない」
そちらの方からの流入だろうと私は片付けて、そのうちこれも使ってみようかと思ったのだった。
この前と同じように湖の畔を歩いていくと、グレンがいた。
同じ場所にいるのはどうしてだろうかと私は思った。
フィズは今はいないらしい。
そこで珍しくグレンが微笑んだ。
私の胸が高鳴る。と、
「良かった、さらに悪化していなかった」
「何よ、言われた通りに変えてみたけれどどう?」
「そうだな、見違えた。綺麗になった」
「そ、そう……」
素直な勝算は私にはうれしかった。
けれどそこでグレンが黒い笑みを浮かべて、
「けれどこんな場所に貴族の令嬢が一人来るのは……危険だと思わないか?」
嗤うような声。
そこで、いつもと違うものを感じて見上げた私に向かって、グレンが手を伸ばしたのだった。
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