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24話 夢の終わり

玉座の裏にある隠し階段を下る。それなりに長い、薄暗い通路を進んでいくと扉があった。鍵もかかっておらず普通に入れる。不用心なやっちゃな。


中に入ると、かなり広い。そこは天蓋付きのベッドが中央に据えられたやたらと豪華な寝室だった。そのベッドに腰掛けているのは、開いたまま浮かぶ分厚い本を横に侍らせ、薄手のネグリジェのようなものを着た色気ムンムンの金髪美女。


「ふーん、こうなるか」


女はこちらを見つめて、つまらなそうに呟くと、何故かぽんっと煙を上げてロリ化した。アリスを大人にしたような感じだったのが、数年前のアリスにそっくりな感じになっている。


「なぜ小さくなったのか」


せっかく眼福だったのに。


「ホントはこっちのほうが好きなんでしょ」

「んなわけねえだろ」


ひどい風評被害である。


「素直になればいいのに」

「俺は正直者で有名なんだ」

「嘘つき」


少女は微笑んだ。ドキッとする。いやしてない。してないです。




「とりあえずそういうのいいから。あんたは誰だ。宮原母……じゃないよな」


雰囲気が全然違う。あの人はもっとポヤポヤした感じで、こういういかにも小悪魔系というか、悪い女な空気を醸し出すような人ではない。


「その通り。私はグリモア、名無しのグリモア。昔々に滅びたとある世界の最後の記録。今は、そうね、開いた人の願いを叶えるランプの魔人、みたいな」


立ち上がり、宙に浮かび、俺の頬を怪しく撫でる。


「宮原くんの望みと滅びた世界を混ぜて作った世界だったのだけど、気に入らなかったみたいね。今度はあなたの望む世界を作らない? 嫌いな所は好きなように変えて、ここで楽しくやり直しましょうよ」

「そうします」


思わず即答。あれやこれやな欲望が噴出する。


「ほんとに正直者ね……」


自分で言ったくせに呆れたような顔をするグリモア。


「でもま、いいわ。承諾してくれるならそれが一番。さあ、楽にして身を委ねて……」


抱きしめようとした金髪ロリを押しのける。ついつい良い返事をしてしまったが今のは無しだ。脊髄反射だったからなし。


「いや、素晴らしく魅力的な話なんだがな」

「そうでしょう。どんな願いも叶うわよ? なにしろ世界ごと作り変えるんだから。ダメだったら後で修正もできるし。どうして嫌がるの?」


心底不思議そうな顔をして小首を傾げるグリモア。可愛い。


「俺が楽しくやってたら、間違いなく鎌田と宮原のやつらが邪魔しに来るからな。また元の木阿弥だ。野郎三人でひたすら無限ループで戯れるとか、不毛すぎるぜ」


俺がそうしたように、鎌田がそうしたように。俺が俺の夢で遊びはじめたら今度は奴らがやってくるだろう。気に入らねえぜと中指立てて。


「男の子の友情ってよく分かんないわね……」


呆れられる。まあそんなもんである。アホばかりなのだ。俺もアホだし、奴らもアホだ。だが、だからこそこうして腐れ縁の付き合いが続いているのだとも思う。




「まあ、仕方ないか。私を閉じたら、お終いよ。夢は終わり、世界は全て元に戻る」


横にプカプカ浮いている光る本を指差して言う。これが本体とかそういう感じなんだろうか。


「案外あっさりだなあ」

「次の人の所に行くからね」


にっこり笑顔で言われる。そんな簡単なもんなのか。


「マジかよ」

「マジよ?」


少女は軽く頷いた。人から人へと渡り歩いて夢の世界を見せる。都市伝説っぽい。なんか生気とか吸収してそうだな。


「そういうのはやってないわよ。ただ、誰かに私の故郷のことを覚えていて欲しいの。ただそれだけ」


少女は寂しそうに笑った。


「それでも閉じるだけじゃなくて、私を壊そうとするなら私と戦ってもらうわよ。裏ボス戦ね。限定的とはいえ、ここでは神様じみた力を持ってるのは確かだから、挑むなら覚悟してね」

「いや、それはいいよ。ゲームならともかく」

「ゲーム気分で挑んでくれればよかったのに。ボロ負けして帰って、世界を隅々までまわって強化してそれでも負けてって感じで」


流石にそれは御免こうむる。どんだけ時間かかるんだ。やりこみ要素は暇つぶしにやるものだ。人生かけて暇つぶしするとか冗談じゃない。


「ほんとは私の事とか、この世界のこととか、世界中の遺跡をめぐって、古代文字を解読してもらったら分かるはずだったのよ? 宮原くんもちょっとずつパワーアップさせるつもりだったのにとりあえず護身用につけた能力だけの状態で倒してくれちゃってさあ」

「全部鎌田が悪い。文句は奴に言ってくれ」


勘でマークシートの問題8割くらい当てたこともあるようなやつだ。こういうのに正攻法で挑むことは全く期待できない。アリスも結局遺跡より爆弾だったしなあ。帰ったらコンビニで花火を買ってやろう。浮いていた本を手にとる。


「それじゃあ、さよなら。できればこの世界のこと忘れないでね」

「ああ、記憶力悪いから自信はないけど」

「最後まで締まらないわねえ」

「仕方ないだろ。今度はもうちょっと勇者っぽいやつを引っ張り込めよ」

「そうするわ」


苦笑する彼女は少し距離を取ると小さく手を降った。もう二度と会うことはないのだろう。宮原家のアルバムを見れば、懐かしむことくらいはできるかもしれないが。


「じゃあな」


ぱたんと本を閉じる。世界が折りたたまれていく。視界が暗転した。これが俺の、俺達の冒険の終わりだった。






起きたら普通に自室のベッドに寝ていた。スマホを見ると日付はあの日の翌日。全て夢だったかのようだ。いつも起きる時間より少し早いくらいで、カーテンの隙間から日差しが差し込み、鳥が鳴いている。


しばらくぼんやりしたあと着替えて出る。いつものように母親の作った朝食を食べ、いつものように高校に行く。教室につくとすでに宮原と鎌田が俺の机の側に陣取ってダベっていた。


「おお、川上。いつもながら不景気な顔をしているなあ」

「うるせえよ」

「おっす。まあお前が景気良さそうな顔してても腹立つけどな」


ゲラゲラ下品にわらう宮原を睨みつける。


「黙れマザコン野郎」

「おい!」


真っ青な顔で叫ぶ宮原。期せずしてこいつのアキレス腱を握ってしまった。別にいらないけど適度に使って楽しむことにしよう。


「マジで手を出したらお前の親父に密告するからな」

「出さねえよ! 馬鹿なこと言うんじゃねえ、冗談でも親父にそんなこと言うなよ? 俺殺されちまうぜ」


まあ、流石に現実で手を出すほどのクソ野郎だとは思っていない。そのうち巨乳の彼女でも捕まえるだろう。いや無理か。犯罪起こすくらいなら二次元で我慢してくれ。




俺と宮原が適当に話していたら、いつの間にか鎌田の側に委員長が座り、仲よさげに話し込んでいた。おのれ。あっちでやることやっていたらしいし順当にくっつくのだろう。


こいつらと付き合うようなおかしい女子がいるとは思っていなかったが、委員長の懐の深さは想像を絶するものらしい。それを思えば宮原のド級マザコン振りを見ても引かない子も世界中探せば一人くらいはいるのかもしれない。見つからないことを祈っておこう。


宮原がすさまじい顔で睨みつけると、鎌田はワハハと笑い、委員長は頬を赤くしながら微笑んだ。俺はまあ、なんだかんだ言っても祝ってやろうと言うくらいの気持ちはあるが、宮原はどうにかして破局させてやろうと画策しているようだった。


そんなんだからもてねえんだよと煽ってやるとロリコン扱いで煽り返されたのでリアルファイトに突入する。そういえばいつの間にかクラスで俺のロリコン説が定着していた。風評被害を垂れ流しているのは間違いなくこいつである。制裁が必要だ。


宮原の死体を投げ捨て、いつものように過ごし何事も無く授業が終わり放課後になる。無意味に教室に残り復活した宮原とダラダラだべる。鎌田はデートに出掛けた。やっぱり宮原のやつの嫉妬マン作戦に賛同するべきかもしれない。まあそれもほどほどに帰宅する。




本当に帰ってきたのだなあという思いが今更ながらに湧き上がる。大して長い時間ではなかったが、あちらで過ごした日々を思い出す。


今はもうあえない人たち。宮原のクソみたいな欲望を打ち砕いたことに後悔は全く無いが、少しの寂寥感はある。柄にもなくセンチメンタルな気持ちになって家に入ると、そこには妹の優菜が仁王立ちしていた。


顔立ちはいいが性格に難がある。中学校に上がったばかりだというのに、兄に対して暴言ばかり吐いている不届きなやつだ。だがなんか今朝は表情が柔らかかったような気がする。今はいつもの不機嫌顔に戻っているが。


「お兄ちゃんさ、ダメだからね?」

「は?」

「あたしの友達に手を出したら絶対許さないから。絶交するから。分かった?」

「意味が分からん……が、絶交は困る。まあ中1に手だしたりしねえよ」


自信満々に答えると凄まじく不満そうな顔をされた。どうしろというのだ。


「あ、ゆーきさんこんにちは!」

「よぉアリス」


優奈の後ろから顔を出したのは宮原妹、アリスだった。魔法少女みたいな格好ではなく、普通に私服を着ているのに違和感を感じた自分に苦笑する。


「ゆーきさん、前は私のこといつも宮原妹って呼んでたよね」

「そうだな。名前で呼ばれるの嫌なら戻すか?」

「ううん。むしろ嬉しいよ!」


えへへと笑うアリスの頭をわしわし撫でていると優奈に腹パンされた。いつもより鋭い一撃。腕を上げたな……。


「女の子の頭に気安く触るんじゃない! お兄ちゃんはさっさと上行って! それですぐ戻ってくること!」

「お、おう?」




よくわからないまま首をひねりつつ自分の部屋へ行く。階段を登った二階の隅。やたらと西日がきついので夏場は死ぬほど熱くなるが冬は温かい。寒いのが苦手な俺としてはありがたい立地だ。


ドアを開けると、知らない女の子がベッドに寝そべって漫画を読んでいた。少年誌の限界に挑戦しているやつだ。脇には読み終えたのか表紙だけホラー漫画も重なっている。背丈は妹よりも少し低いくらいだろうか。妹の友達? 勝手に人の部屋に上げるんじゃないと文句を言わないといかんな。


「遅いです」

「そりゃすまん。で、君は一体どこの誰……」


俺がドアを開けたことに気づいて、漫画をおいて起き上がり、ベッドの縁に腰掛けた少女がこちらを見据える。日本人離れした銀色の髪、睨みつける翡翠の瞳。一対の犬耳こそ無いものの、彼女は間違いなく……


「妹さんのクラスメイトで友人、留学生のフィリです。どうも、“はじめまして”、優樹さん」

「……ああ、はじめまして。川上優樹だ。よろしくな」


頭をポンポンと叩く。彼女は両手で頭に乗った俺の腕をひっ掴むと後ろへ倒れこんだ。当然掴まれていた俺は彼女を押し倒すようにベッドに倒れることになる。


「絶対に逃がさないといったでしょう?」

「別に逃げる気もなかったけどな」


腕を掴んでいた手が俺の後頭部に回された。ベッドの上で体を支えていた腕の力を少し抜き、フィリの望むようにしてやった。




最近の女子は肉食系らしい。ロリコンの汚名を着せられることのないよう宮原と鎌田には絶対に見つからないようにしなければならない。鎌田は委員長経由でどうとでも黙らせられるだろうが、宮原が問題だ。


嫉妬の鬼と化した奴が何をやらかすか想像がつかない。間違いなく斜め下をすっとんでいく発想でろくでもないことをしでかすだろう。今から対策を考えなければ。


別のことを考えていたのに腹を立てたのか舌を軽く噛まれる。目線で謝ると不愉快そうに寄せられていた眉根が得意気に吊上がる。もはや目の前の銀色と、その肌の柔らかな感触以外のことを考えるのに割く思考など存在しなかった。


終わり!閉廷!以上!皆解散!

活動報告であとがきっぽいものを書いて終了予定です。




登場人物まとめ

川上優樹:主人公。短気で喧嘩っ早いが弱い。ロリコン・シスコン。

フィリ・フィエラ・フローネ:銀髪ケモミミ取れたロリ。主人公のことは自分がついていないとダメだと思っている。ダメンズ好き。

宮原アリス:金髪ふくらみかけロリ。若干ミリオタ。主人公のことは兄の友人の近所の兄ちゃんという感じ。まだ。


鎌田俊一郎:筋トレマニア。見せ筋なので喧嘩は弱い。巨乳好き。

白坂七美:委員長。鎌田の彼女。包容力が凄まじい。やはりダメンズ好き。


宮原総司:見た目は優男だが運動音痴。マザコン。

川上優奈:ツンデレブラコンヤンデレ実妹。フィリ・アリスとはクラスメイト。二人の態度に危機感を抱き兄の監禁調教計画を練り始める。

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