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19話 神様にでもなったつもりかよ

命からがらドラゴンの群れから逃げ出し、街道を通って目的地である鉱山街に到着する。屈強な男たちや、たぶん男、というかオス? とか性別不明とか色々なのが闊歩していた。


パッと見のんびりした田舎街といった感じであるが、妙にピリピリした空気を漂わせている。革命軍とやらなのだろうか、帽子や服の肩に揃いのマークを縫い付けているのが多い。広げた翼のついた剣のような、というかあれは某ロボアニメのテロ組織のマークではなかったか。


「なに考えてんだあいつ……」


絶対アホだろ。元からアホなのは知っていたが。たぶんなにも考えてないのだろう。いや、何かしら考えてはいるだろうが、斜め上というか斜め下というか。


「なんか、怖い感じだね……」

「アリス、あまりフィリの側を離れないように」

「うん」


ロリ二人がくっつき、小さいほうがふんすと気を張っている。まあ実際その辺のチンピラ程度では相手にならないだろうが。大幅なレベルアップの恩恵は、まだ実際には見ていないがカードによれば補助系の上級魔法が充実し、対人系のえげつない急所攻撃技も強化されていた。


アリスの学生証、冒険者カードと実質の機能はあまり変わらないそれも見せてもらったが、戦闘技能は少なくとも基礎ステータスがかなり高くなっていた。二人でいれば心配はいらないだろう。


宮原に渡された情報に従い、街で一番でかい商館に向かう。警邏の私兵っぽいのがうようよしていた。どう考えても過剰、である以上はやはり鎌田が革命軍なるテロリスト集団を率いているのはもはや間違いない。


いかめしい門番に最初は不審げにジロジロと見られたが、話が通っていたのか、俺の名前を出すとすぐに中からスーツらしき服を着た美人が出てきた。兵士がペコペコしているので偉い人っぽい。


「って、委員長じゃねえか」

「や、久しぶりだね。川上くん」

「しかも俺のこと分かるのかよ」




ひらひらと手を振り、にこやかに俺の名を呼ぶ少女は白坂七美。通称委員長。160半ばと背が高く、全体的に均整の取れた体つきに、大きめおっぱい。明るい茶髪、元の世界では染めていたショートカットはこちらでは地毛のようだ。


ピンで止めた髪の横から程々の長さの尖った耳が飛び出している。まさかのエルフ化である。軽い性格だが意外に真面目で、細々した仕事やHRの司会進行などきちんとこなしていた。


アホ高校とはいえ成績もトップの方だ。悪乗りで推薦されてそのままワハハと笑いながら引き受け、結局まともに仕事できないダメな方のクラス委員こと鎌田とも仲がよく、ここにいるのはその縁なのかもしれない。ロリ軍団ではなくぜひともこっちとお近づきになりたかった所だ。鎌田の野郎め。


アリスに裾をぐいぐい引っ張られ、フィリには踵をガシガシ蹴られる。お互いの攻撃力と防御力が上がった分ケリの威力が上がり、もはや無視できない衝撃力となって俺に襲いかかる。よろける俺をフィリは迷わず追撃し、アリスはどうにか立たせようと裾を引っ張りあげる。


委員長はそんな俺達をケラケラ笑いながら眺めていた。ブラウスを内側から押し上げる隔絶した戦闘力に目を奪われていたことを、この場にいた全員が気づいたとでも言うのだろうか。


体全体を見るように気をつけていたはずなのだが、いつの間にか一部に視線が吸い寄せられていたらしい。俺もまだまだ精進が足りない。というか最近まわりにいたのが戦闘力低すぎたせいというか。蹴りが激しくなったので頭を押さえつけて距離を離した。ぐるぐるふーふー言っているフィリ。なにがそこまで気に入らないというのか。


「仲良しだねー」

「うん!」

「……ぐるる」

「不本意ながらな。で、色々聞きたいこともあるが、まず鎌田のやつは?」


玄関先で立ち話ってわけにもいかないし、と委員長は俺たちを商館の中に招き入れた。調度なんかもいかにも豪華で高そうな感じだったが、玄関ホールの一番目立つ位置に、マッスルポーズをとってニカッと笑う鎌田の巨大な絵が飾られていたため品格を著しく落としていた。


マジで救いようのないアホだな……。俺は一番奥の分厚い木の扉の前に通され、フィリたちは別の部屋に委員長とともに向かうようだった。


鎌田と俺、二人だけで話そうということらしい。フィリたちは少し心配そうにこちらを見たが、このアホどもに限って万が一もない。自信満々で頷いてやった。まだ少々不安そうではあったが、一応納得したのか、頷きを返して委員長について行った。




「おう貧乏人、しばらくぶりだな。俺はずいぶん金持ちになったぞ。伏して敬うがいい」


部屋の中に入ると、いかにも成金といった感じのギンギラギンな格好にでかい体を収めた鎌田が座っていた。やたらでかくて豪華そうな丸テーブルに2つの椅子。俺は呆れながら奴の向かいに座った。


「死ね」

「いつもどおり切れ味鋭くて何よりだ!」


ワハハと笑い、ガウンっぽいのとかもろもろの分厚く豪華な服を脱ぎ捨てると暑苦しいタンクトップ一丁になる。安っぽいうちわで扇ぎながら、この格好暑くて仕方なかったわ、などと言いつつワハハと笑う。マジでぶん殴りてえ。間に机がなかったら迷わず殴ってる。


「奴隷からのし上がった俺の人生成功譚を余すことなく友であるお前に語りたいところなのだがな、今日はそのために来たわけではないのだろう?」

「ああ、宮原の奴に聞いたぜ。革命軍がどうのこうの」

「おう、あれな。最高にかっこいい名前を考えたんだが白坂に却下されてしまってなあ。分かりやすい名前のほうがいいと。実に惜しい。部隊章のデザインは俺の案が通ったんだが」

「最高にどうでもいいからさっさと話を進めろ」

「せっかちなのも相変わらずだな。変わらぬことが嬉しくもあり、雑談を楽しめないことが寂しくもあるな」


俺がせっかちなんじゃなくてこいつの話があっちこっちへ脱線しすぎるだけだと思う。


「そうだな、宮原にこの世界についてはなんて聞いた」

「なんも分かんねえってよ」

「それは嘘だ」


一刀両断だった。まあ、そんな気はしていた。野郎がなにも知らないってことはないだろうと思っていたのだ。しかし妹(仮)の前で質問は既に拷問に変わってるんだぜするわけにも行かなかったし、フィリに血なまぐさいものを見せるとテンション上がっちゃうし、あの場では追求できなかった。


「そうか」

「俺の部下が王宮で例の本の存在を確認した。宮原が自室でニヤニヤしながら眺めてたようだ。それを使って“何か”をするのも」

「何かってなんだよ」

「はっきりとはわからん。だがろくなことではあるまい」


たしかにあいつは調子に乗るとろくなことをしない。調子に乗ってなくともろくでなしだが。


「一応予想は付いているがな」

「なんだよ」

「物事を都合のいいように変える力だ」

「馬鹿じゃねえの」


なんだそれは。神様にでもなったつもりなのだろうか。


「初めは適当にプロを雇って探らせていたんだが、芳しく無くてな。よほど王宮の守りが堅いのかと思っていたが、子飼いの隠密を投入したらあっさりだ。プロの方の末路、というかみんな足洗ってたんだが、そのへんから色々考えて、その他調査や実験の結果を元に結論に達した。ほぼ間違いないと思う。白坂も同意した」

「お前はともかく委員長が言うなら間違いないな」


「なぜ長年の友である俺より白坂のほうが信頼度高いのかさっぱり分からんが、まあいい。都合のいい、といっても当然制限はあるし、範囲も効果もかなり曖昧なもののようだが効果は絶大だ。この国、地球の多民族国家とか目じゃないレベルで色々いるだろう?」

「ああ、そうだな……」


色々なイロモノたちを思い出す。人種が違うとかどころでないのがたくさんいたなあ。


「表面上平穏だが、当然様々な摩擦がある。普通に優秀な人間がトップやっててもバンバンテロが起こるレベルだ」

「そういう話は聞かねえけど」

「そこよ」


マッチョな巨体をぐいと乗り出す。距離的には遠いはずなのだが圧迫感と暑苦しさが非常にキモい。なぜ女性陣がここにいないのか。目線をそらす先がないので睨み返す。


「問題が起こってる所に宮原が行くとすぐに治まる。暴動なら即座に鎮圧されるし、自然災害なんかでも速攻で止まる」

「マジかよ」

「マジだ。だが俺と、恐らくお前も、この世界に来る前にあの本と関わった人間はその効果をうけない。そして俺たちと関わった人間も効果を受けづらくなるようだ」


子飼いの人間でなら情報収集成功したとかいうのはそれでか。


「なるほどな。で、お前が革命軍がどうのやってんのは神様ごっこやってる宮原が気に食わねえから野郎をぶっ殺すってか」

「そうだ」


笑みを消し、真顔で、力強く断言する鎌田。こいつはわりといつもにこやかだが、ガタイも顔もいかついので笑っていない時はかなり迫力がある風貌になる。……ていうか、え、マジで?

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