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14話 一時期あだ名が無自覚シスコン番長だったらしい俺

装備を外し、シャワーを浴びて、ツインの部屋で一人ゴロゴロする。冒険者カードを眺めてみるとレベル10まで上がっていた。格上相手だと成長が早いというやつのせいだろうか。格上って感じもしなかったが、レベル差分で補正がはいったのかもしれない。


スキルも増えて、投石、挑発、矢かわし、カウンター、ダブルスラッシュ……スキルについての説明をみると戦闘中の行動によって習得するものと純粋にレベルで習得するものがあるようだ。まあ魔法使いと違ってスキルのある無しでそこまで劇的に変わるかと言われるとそこまで変わらないのだが。


レベルアップや補助魔法など身体能力がコロコロ変わるのでそっちの方が変化としては大きい。戦士系の正解が今のところ能力値を上げて物理で殴るしか見えないのだが。なにかこう、必殺技的なものが欲しいところだ。なんかあるかもしれないが今のところそういうのはない。


避けて切る、受けて切る、崩して切る。結局のところその辺に集約される。……やっぱり魔法剣な物がほしいな。一番安いのであれば買えそうなのだが、このラインの品はやたら丈夫とか切れ味鋭いとかそんなエンチャントがかかっている程度のもので、俺が求める魔法剣とはちょっと違う。




「金、金、金、金がほしい」

「なにを言っているんですかあなたは」


ガチャリとドアを開けてフィリが入ってきた。風呂あがりのようだ。


「アリスはすぐに寝てしまいました。慣れないことをして疲れたのかもしれませんね。随分はしゃいでたのもありますし」


お子様か。お子様だった。もう一人のお子様は俺の反対側のベッドに座った。


「そうか。まあ遺跡の中結構広かったしな。疲れんのもしゃーないな」

「なんというか、あなたはあの子には意外と気を使いますよね。遠慮するわけではないですけど」


そりゃそうである。見た目まんま友人の妹で、いい子っぽいし。元の世界の方のアリス、宮原妹の方はあんな風に変なスイッチ入って語りだしたりみたいなオタクっぽい所はない。いやまあそこまで深い付き合いではないから、もしかしたら宮原妹にも語り出すスイッチが有るのかもしれないけど。


爆発物に異常な興味を示す中学一年生……異世界だからまあいいけど、平和な日本だとだいぶ危ないな。そういう子もいるのかもしれんが。


「……特に他意があるわけではないんですけど、私と扱いが違うのは気に食わないです。ああ、もちろんあの子の方も無駄にからかったりいじめたりしろということではなく、フィリの待遇を改善しろということなんですけど。奴隷だからといって好き勝手してもいいわけじゃないというのは分かるでしょう? あなたの奴隷になったというのをあなたの物になったこととイコールと考えてもらっては困ります。フィリの魔法の有用性も分かったでしょう」


何やら早口でまくし立てられるが、まあつまりこういうことだろうと、頭を掴んでワシワシしてやる。フィリはしばらくむずがるように身体を捩った後、手で掴んで押しのける。


「……こういうのをやめろと言っているんですが」

「まあいいじゃん。なんつうかさ、妹を思い出してなあ」


アリスを見たせいだろうか、昔の可愛かった頃の妹を思い出す。フィリは小学校高学年くらいの時だろうか、なんとなく俺と距離を起き始めたあとの妹に態度が似ている。現実の妹の今はかなりアレだが。見た目はずっと可愛いのに、兄に対する態度が地獄めいているというか。


「妹さんがいるんですか」

「おう。年は中一、お前と同じくらいだな。背はもうちょびっと高くて、髪の毛は俺と同じで黒くて、かなり長めに伸ばしててな、可愛い。昔は俺が一緒に風呂入って髪洗ってやったりしたんだがなあ。最近は反抗期っていうか、兄に対する敬意が感じられないというか」

「たぶん、いえ、間違いなく鬱陶しいと思われてますね」

「俺のどこが鬱陶しいってんだ」

「言動全てですよ」


深々とため息をつかれた。いや、まあ、わかってるんだけども。治す気はない。っていうか無理。どうせ俺は妹と接するときに鬱陶しいくらい構いに行く以外の対応を知らないダメ兄である。


「フィリもあなたを見ていると故郷の弟を思い出します」

「なんで弟だよ」

「馬鹿な言動しかしない悪ガキでしたから」


故郷の弟、のことを思い出しているのか、えらく優しい目をしていた。こんなところを見せられると確かにこのロリっ子はお姉さんなのだなと思う。


「俺とはにても似つかんな」

「そんな減らず口もそっくりですよ。あの子が大きくなったらあなたみたいになるのかと思うと今から心配です」

「俺に似たナイスガイになるならなんの心配もいらないさ」

「そうだといいんですけどね」


冗談めかしてキメ顔で適当に言った言葉にクスクスと笑う。なんならフィリの故郷に行ってみてもいい、と少し思ったが、それはフィリが嫌がるだろう。なんだかんだで覚悟を決めて家を出たんだろうから、成果のない内に帰りたくないだろう。


それはそれとして妹に会いたい。今となってはムカつくことばかり言う小生意気なやつだが、昔は俺によく懐いてたし、最近でもたまにデレ発言っぽいのが飛び出すこともあった。なんだかんだで一生会えないとなったら発狂しそうだ。


鎌田はこの世界にいた。宮原妹、アリスもいた。しかし記憶がない、というか転移者としてではなく元からこの世界の住人として存在していたっぽい。他人の空似なのだろうか。あるいは本の力で宮原あたりがどうにかした可能性もあるが、それにしては別に宮原に都合のいい性格してたわけでもないし。よく分からん。


もしかすると妹似の誰かもこの世界にいるのかもしれない。もしそれがデレデレブラコン妹だったりしたら俺もこの世界に永住するのになんの迷いも……いや、流石に冗談。とにかくどうにかなんとかして元の世界に帰ろう。




「ところで、昼間言ったことですが」

「ん? なんだっけか」

「爆弾の使い道のことです」


そういえばそんなこと言ってたような。なんだろうか。土建屋にでも鞍替えするのだろうか。発破解体専門?


「アリスに詳しい話を聞いてみました。少し、いえ、だいぶ苦労しましたが、可能なようなので当面はそれを目標にするのがいいかと」


フィリは瞳を濁らせながら言う。あっちこっちに話題が吹っ飛ぶマシンガントークに付き合わされたのだろうか。ご苦労様としか言いようが無い。


「なにをする気なんだ?」

「それはまあ、実際やってみる段になってからのお楽しみということで。ひとまずはレベル20程度まで上げたいところです」


爆弾使ってやりたいことねえ。ダイナマイト漁でもするんだろうか。この国の法律は知らんが、合法ならやってみてもいいかもしれない。


「あなたは……10まで上がりましたか。かなりの数倒しましたしね。アリスはまだレベルが低いので、今日あたりのレベル帯でしばらくやっていく必要がありそうですが」


フィリはベッド脇のデスクに置いておいた冒険者カードを操作してステータスなどを眺めて言った。


「そういやレベルとかステータスとかどうなんだアリスは」


錬金術士と言っていたがそれ以外は知らないなそういえば。


「レベル6のアルケミスト、後衛職で種族もヒューマンなので肉体系のステータスは期待できませんね。魔力や器用度はかなり高いのですが、戦闘に活かせるスキルは持ってないので本当に錬金術専門という感じです。とはいえレベルを上げればそれだけマシになりますし、攻撃手段が爆弾投擲しか無い、というかする気がないらしいのですぐに投擲スキルも覚えるでしょう」

「爆弾は実際強かったしな。しかしレベル6もあったのか。意外な。」


正直普通に攻撃魔法的なものを使って欲しいところだ、ファンタジー的に考えて。だがまあ優秀な範囲攻撃ではあるから爆弾は爆弾でいいのかもしれない。


「レベルは……元は1だったそうです。今日パーティでゴブリン狩りした分で上がったようで」

「よく生きてたなマジで」

「本当に。私も気をつけますけど、あなたもできるだけ目を離さないようにしてあげてください」

「分かったぜお姉ちゃん」


フィリが顔を赤くして俺の顔面に投げつけてきた枕をキャッチして自分の枕の上に重ねて置いてそのまま布団を被ってやった。両方まとめて引っこ抜かれ、片方が顔面に叩きつけられる。視界が枕で塞がれる寸前、羞恥に顔を染めながらも、笑顔を浮かべるロリっ子の姿が見えた。勝手に電気が消される。


「おやすみなさい!」

「おう、おやすみ」


しばらくすると、安らかな寝息が暗闇の中に響いた。

ロリ姉という素敵な概念流行らせコラ!

ロリBBA並に流行れ流行れ……(呪詛)

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