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13話 金髪ロリ錬金術士仲間になる

「どう、すごいでしょ!」

「すごいでしょじゃねーよ!」


ドヤ顔の金髪に迷わず強めにチョップを入れる。


「ふぇぇ!?」


頭を押さえて涙目になるがこれはいかんだろう。


「あとお前も地味に見捨てて逃げてるんじゃねーよ!」

「いえ……つい」


若干後方の通路の曲がり角から顔だけ出しているフィリに向かって叫ぶ。いつのまにか自分だけ安全圏に退避していたのだ。まあ回復役がやられたら終わりだというのはわかるが。


「あのさぁ、自爆寸前だったんだけど?」

「れ、錬金術の発展に犠牲はつきものだって! PKの先輩たちも言ってたし……!」

「全く必要ない犠牲が出そうだったじゃねえか! お前良く今まで無事だったな!?」

「……実はモンスターと戦うの初めてだったの。……えへへ」


照れ笑いを浮かべながら頭をかくアリス。


「えへへじゃねーよ!」


ぷにぷにの両頬をそれなりの力で引っ張る。


「ふぁああああああああああ!? いひゃいいひゃいひゃいーっ!!」


ぐいぐいやってからパチンと離す。涙目で赤くなった頬を押さえて悶えている。遠くから戻ってきていたフィリが何故かジト目で見つめてくる。女の子をいじめるんじゃないとでも言いたいのか。だがこれは怒っとくべきだろう。俺は悪くねえ。


「モンスターと戦うの初めてって、どうやってここまで来たんだよ。あとさっき言ってた爆弾の実験とかもどうしてたんだ。普段からやっててあの大暴投じゃ命がいくつあっても足りんだろ」

「学校からこの街までは馬車で来て、遺跡までは弱いモンスターを寄せ付けなくなるっていう道具が学校で売ってたから、それを使ったの。他の学生が作ったのなんだけど、効果は抜群だったね!」


上級ゴブリンには全然効いてないみたいだったし、タイミングが悪かったら普通に死んでたんじゃないだろうかこの子。この世界のゴブリンは女をさらってどうのこうの、とかするような生き物ではないらしいから薄い本みたいな事態にはならないだろうが、普通に殺意にあふれてるからなあ。


「爆弾の実験は、普段は長めの導火線を使って遠くから火をつけてたから……」

「ぶっつけ本番で爆弾投げるんじゃねーよ。まあ、性能自体はよかったから次からは俺が投げて……」


俺がそう言った瞬間表情を厳しくして叫ぶ。


「素人さんに爆弾を触らせるわけにはいかないよ!」

「ええ……」


なに言ってるんだこの子。助けを求めてフィリを見たら首を振られた。処置なしとは。


「アカデミーの生徒は変わり者が多いと聞きますから。無理やり取り上げるわけにもいきませんし、残念ですが仕方ないでしょう。……非常に残念ですが」


わりとマジでしょげているフィリ。爆弾投げたかったのだろうか。


「変わり者? ……確かに多いかも」


知り合いや、例の先輩たちとやらを思い浮かべたのだろうか、苦笑いを浮かべる。


「まあ、私は平凡で普通だけどね」


何故かドヤ顔で言うアリスに弱めの手刀を落として半泣きにさせると、またフィリにジト目で睨まれた。いや、これはフリだっただろ。本人にそのつもりはなかったかもしれないが。


「投擲技術に関してはおいおい鍛えていけばいいでしょう。補助魔法を使えばかなり飛ばせるようになるでしょうし。私とキャッチボールでもして練習しましょう?」

「うん、ありがと!」

「なんの、これからは同じパーティの仲間なんですから」


あれ?


「そうだね。一緒に頑張ろう!」


いつの間にそういう話に。首をひねる。


「爆弾なんてまっとうな手段では手にはいりませんからね。面白い使い道も思いつきましたし」


ボソリとつぶやき、にやりと笑う。ロリ二人が戯れているほほえましい光景だったはずなのに、なんか黒いぞ。


「アリスはそれでいいのか?」

「ユーキも古代文字に興味があるんでしょ? 爆弾使えて遺跡の調査もできるならバッチリだよ」


まあ、本人もこう言ってるし、ほっぽり出すと死んじゃいそうだし、構わないか。


「しかし、仲間を増やすなら肉壁になりそうな頑丈なやつか、眼福な感じのおっぱいでかい子が良かったんだがなあ」


思わず漏れたひとりごとは、ピクリと揺れる獣耳にしっかり届いていたらしく、じゃれている最中だった銀のロリがこちらをじっとりと睨んだ。


直接攻撃が来なかったことをニコニコしながらフィリを撫で回しているアリスに感謝するべきなのだろうか。今回は睨まれるばかりで戦闘に発展しないので助かる、ような別にそんなこともないような。


ともかくも、とりあえずは爆弾は封印し、来た時と同じようにゴブリンたちを倒しつつ戻ることにする。またアーチャーの群れが出て、爆弾使ってまとめて吹き飛ばしてえなというタイミングもあったが、どうしてもダメだというので投石で対処する。この謎のこだわりは何なのかと思うが、まあ仕方ない。装備制限のようなものだと思うことにする(ゲーム脳)


前衛俺、遊撃フィリ、後ろのほうで応援アリスというパーティ構成だったが、レベルが上がったのか来た時よりも楽ではあった。無事に遺跡から脱出し、街まで戻る。





ターバンを巻いた柴犬コックがやっているカレー屋で、インドカレーとかではなく普通に日本風の奴を食べるというやはり突っ込みどころのある夕飯をとる。結局俺以外特に疑問を呈することもなく食事を終え、宿まで戻ってきた。


「で、どうするか。男女別でいいか、金もかなり稼げたし。ツイン一つとシングル一つで……」

「えっ、みんな一緒じゃないの?」


マジかよ、と思いアリスを見るときょとんとした顔をしていた。


「せっかくだから、一緒にお話とかしようよ」


にこやかにそう言う。まさかその手の知識が無いのだろうか。パンツ見られるのは恥ずかしいけど同じ部屋で寝るのは問題ないってたぶんそういうことだよなあ。


「よし。じゃあ三人部屋で」


営業スマイルの宿の親父さんに、俺はキメ顔で決断的に宣言した。


「なに考えてるんですか」


足を踏まれる。これもちょっと久々な気がするが実際は全然そんなことなかった。


「いいじゃねえか。親睦を深めよう」

「ダメです。アリスも、この人は変態なのでもっと気をつけるように」

「ふぇっ!? ……あっ」


初対面の時のパンツを思い出したのか、真っ赤になるアリス。性的なアレはないのだが、この子にはうまく説明できる気がしない。


「おまえほんとやめろよマジで」

「あなたが態度を改めればいいだけです」


それはそうなんだが。そういうわけにもいかない。人生には潤いが必要だと思う。潤いと言うには胸部装甲とか色々足りてないが、例えるなら夕飯時に冷蔵庫にまともな食料がなかったとして、腹がすいたので菓子をつまむ。それは避けられないことではないだろうか。……豚を見るような目とはこんな感じだろうかと思った。


「え、エッチなのはダメだよ!」


手をギュッと握って叫ぶ姿にほっこりした。


「ツイン一つとシングル一つで」

「初めからそうすればいいんです」


結局無難に落ち着き、それぞれの部屋へ……行こうとしたらフィリに逆の方へ押しやられる。


「あなたはこっちです」

「こっちはツインだぞ。アリスと一緒に寝ていいのか?」


なにがしたいんだ一体。そしてきょとんとするアリスは実に可愛らしい。ほんとに一緒に寝てもいいかもしれない。妹も小学生の頃は妹だき枕じゃー! とかやってもキャイキャイ喜んでいたし、寝心地いいし。


「いいわけ無いでしょうが。私があなたと同室です。昨夜と同じく」

「えぇ! 私だけ仲間はずれはずるいよっ」

「マジかよお前そんなに俺のことを……」

「寝言は寝て言ってくださいと何度言わせれば気が済むのですかあなたは。これがありますからね。あまり離れすぎるのは良くないので」


トントンと首輪を指すフィリ。なんだ、主人と離れると爆発でもするのかよと思ったが、たぶん契約書にそういうことは書いてなかったし、あまり非道な感じのものでも無かったので爆弾首輪の線は薄いだろう。


しかしまあフィリが言うからにはなにかそういうのがあるかもしれない。細かくて長い文章をもう一度読むのめんどくさいからわざわざ確認はしないが。


「アリスの部屋で寝るまでお話しましょう。寝る部屋は別ですけど、それならいいでしょう?」

「うん。お風呂も一緒にはいろうよ」

「え、いえ、それは……」

「いいからいいから~」


あっという間に機嫌を直したアリスはフィリを確保し、俺に手を振るとシングル部屋へ駆けていった。

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