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11話 得意分野を喋らせると話が止まらないタイプの子

宮原妹。確か俺の妹と同い年で13歳だったと思う。金髪ハーフ美少女妹とかいう野郎の妄想ノートから飛び出してきたかのような異質な存在だ。


見た目以外は全体的にダメ人間の宮原と違って、見た目も中身もナイスガイな宮原父と、再婚相手の金髪巨乳美女、イギリスだか北欧だか、どっかその辺の人らしい野郎にとっては義理の母。金髪巨乳義母とかこれもまたエ○ゲーじみていて野郎をぶちのめしたくなるが、とにかくその二人の間に生まれた、宮原の異母妹ということになる。


父母の良いところばかりを受け継いだらしく、見た目はそれこそ金髪美少女だ。肩まで伸ばしたふわふわで綺麗な金色の髪をリボンで片側にくくったサイドテール。絶壁な妹やフィリと違いすでに将来性をうかがわせる控えめとはいえ確かな膨らみ。


アホの宮原と違って成績優秀。穏やかでのほほんとした、一緒にして安心するような素晴らしい人格のあらわれた、少女の柔らかさを残した柔和な顔つき。


非の打ち所のない少女であった。初めて会っていくらか話した時は宮原の妄想具現化存在ではないかと実在を疑ったものだ。欠点はといえば、運動神経があまり良くないらしいということだが、そんなもんマイナスポイントにはならない。


しかしそのせいで、俺と同じくほどほど程度には運動できる兄宮原を尊敬するとか言う血迷ったことをしているので、そこは盛大なマイナスポイントだ。奴を始末してこの唯一の欠点を解消してあげたいと常日頃から思っていた。そんな宮原妹がファンタジーな格好をして目の前にいた。なにがどうなっているのだ。




「あ、あの!私ミヤハライモートじゃないよ! 私の名前はアリス!」

「宮原妹じゃねえか」


宮原妹の下の名前はアリスで、フルネームは宮原アリスだった。見た目も名前もまんまなので間違いなく本人である。


「兄貴がどこにいるか知ってるか? 鎌田のやつは一応会ったから、やっぱりあの野郎が怪しい。俺は今回のコレの主犯はあいつだと思ってる。情況証拠しか無いが、まず間違いないだろう。兄を差し出すのは気が引けるかも知れないが、奴自身のためでもある。隠し立てせずに教えてくれ」


「ふぇ……違うもん! 私ミヤハライモートじゃないもん!」

「新手のナンパですか? 意味不明なことをまくし立てるのはやめてください。怖がってるでじゃないですか、変態」


適当な屁理屈を交えつつ一気にまくし立てながら詰め寄った所、涙目で叫ばれ、さらに間に割ってはいった冷たい目線と直接的な罵倒が突き刺さる。一体俺がなにをしたというのだ。


「変態じゃねーよやめろそういうの!」

「さっきおもいっきりパンツ覗いて興奮してたじゃないですか! 言い逃れのできない変態行為ですよ!?」

「ふぇ? ふぇぇぇぇん!!??!?」


フィリの発言を聞いて、ハシゴを見て、俺を見て、自分のスカートを見た後、スカートを押さえてへたり込み、ガン泣きする宮原妹(仮)

それを見てさらに視線の温度を低くするフィリ。


「いや、ちげーよ! あれはお前のリアクションが面白かったからであってエロ系の意図はねえよ!」

「見たんじゃないですか!」

「ガキのパンツじゃ興奮しねーよ!?」

「私ガキじゃないもん!」


涙をダラダラ流しながら謎の方向に向かって反論する宮原妹(仮)


「拉致があかないのであなたは少し離れていてください、変態」


しっしと俺を追い払うフィリ。非常に不本意だが、確かにガチ泣きしている年下の女の子とコミュニケーションを取るのは俺には難易度が高すぎる。程々に距離を取ることにする。


「妙なこと吹き込むんじゃねーぞ」

「あなたじゃないんだからそんなことしませんよ」


へたり込んでいる宮原妹(仮)の側にしゃがみ込むと、フィリは何事かぼそぼそと話し始めた。内容が聞こえないので少し近づこうとすると銀色にキッと睨まれ、金色はビクリと怯えるような震えとともにこちらを見つめてくる。


仕方ないのですごすごと戻る。しばらく背中をさすったり、ハンカチで涙を拭いたり、何かしら問答をすることしばらく、手持ち無沙汰でやたらと長く感じたがそう大した時間ではないだろう。




落ち着いたらしい宮原妹(仮)をつれてフィリがやってくる。フィリのほうが背が小さいのにその後ろに隠れようとしているから隠れきれていない。おどおどしながらこちらを見る姿に罪悪感が。


「あの、ごめんなさい。びっくりしちゃって、泣いちゃって」

「いや、こっちこそまくし立てちまって悪かった」

「あなたの謎発言について心当たりはないそうですよ。兄弟はいないし、あなたのことも今日が初対面。王都にあるアカデミーの学生さんだそうですから、身元もしっかりしています」

「あー、じゃあ、他人の空似? なのか?」


そっくりというか、本人だと思うんだが。まあ異世界だし、そんなこともあるのか。納得は行かないが、たちの悪い冗談をいうような子ではないし、目の前にいる宮原妹(違)もそんな悪い子には見えない。


「そうだと思うの……」

「重ね重ね悪かった」

「ううん、分かってくれればいいの」


そう言うと花が咲くように微笑む。ほんわかした空気が流れる。こんな所もまんまなんだが、ううむ。まあもう言うまい。


「それで、ええと……アリス」

「なあに?」

「アリスはなんでこんなところに? 道中ゴブリンとかうじゃうじゃ居ただろ」

「いなかったよ?」


首を傾げるアリス。あれ?


「フィリたちが片っ端から始末しましたからね」

「そういやそうだ」

「再び湧くまではまだ少し時間があるはずです。帰り道には復活してそうですけど」

「そうだったんだ」


危ない橋を渡ってるなあこの子。いや、見た目で強さはわからないし、もしかしたら強いのだろうか。


「自衛手段とかはちゃんとあるのか?」

「うん! 私、錬金術士だから!」


待ってましたとばかりに目を輝かせてしゃがみ込むと、斜めにかけていた鞄から何かを取り出し床に並べていく。

導火線のついた円筒形の……ダイナマイトらしきもの、ダイナマイトらしきもの、色違いのダイナマイトらしきもの、ダイナマイトらしきもの……。ずらずらと並べられるそれらは明らかに鞄の容積を超えているような気がした。


「……これはなんだ?」

「爆弾だよ!」


思わずフィリを見る。目をそらされた。なんなのだこれは。一体どうすればいいのだ……


「こっちのやつはサクラマイト試作一号、こっちは試作2号、こっちはプラムマイト試作23号、こっちは我ながら傑作の試作14号で……いろいろ実験したりマイナーチェンジしたりしてるんだけどやっぱり威力的にこれが一番手ごろで……」


ものすごい勢いで喋り出す。なんというか、あれだ、オタクだこの子。得意分野に関してしゃべりだすと止まらないタイプの。


「OK分かった。アリスの爆弾は素晴らしい。後で実演して見せて欲しいくらいだ」

「本当!?」


喜色満面である。嘘だよば~か! とか言ってやりたい衝動に駆られたが多分、いや間違いなく泣かれるのでやめておく。なんかこの子苦手だわ……!


「本当だ。でもまあとりあえずそれは後にしよう。結局ここには何をしに来たんだ? 見ての通り何もないとこだが」

「あるじゃない、壁画!」


1 ガキのパンツじゃ興奮しねーよ(大嘘)

2 ガキのパンツじゃ興奮しねーよ(本当)

3 ガキのパンツじゃ興奮しねーよ(本当、ただし後々興奮するように性癖改造される)

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