斎場
厳かな葬式だ。
読経の声に、すすり泣く声。
ゆるやかに流れる時間。
しかし、厳然たる直方体が、嫌でもここを葬儀の場と変える。
焼香もすみ、親戚以外は一旦斎場から外へと向かう。
「こちらで、釘を打つ真似をしてください」
渡されたのは、大きくても3cmぐらいの石だった。
土葬の時の名残で、釘を打つことにしているらしい。
このあと火葬することから、本当の釘を打つことはない。
コンコン、コンコンと代わり番こに打ち付けると、いよいよ出棺だ。
今回死んだ爺さんの兄弟やその孫の男たちだけで、ゆっくりと運んでいく。
車はすでに斎場の玄関前につけられていて、乗せるとレールに沿ってゆっくりと車内へと入る。
代表者と、火葬場までの地図やルートをやり取りして、いよいよ車に乗り込む。
親戚連中の大半はこれでお別れだが、火葬後の骨壺などを受け取るために、向かうのだ。
「御出棺です」
クラクションが大きく鳴らされると、車はゆっくりと動き出した。