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リリスは みをかためている!

「さがってください!」

 ビリビリと空気を震わせる程のベズリーシアの声量。

 それは老人たちへの警告と同時に敵に対しての牽制ともなり得ていた。

「な、なんじゃ。誰かおるのか」

 老人の1人が銃を抜き周囲に対し警戒を始めた。

 だが姿が見えている訳ではない。そもそも本当に敵がいるというのか。

「上です!」

 ベズリーシアがそう言うのと同時に木の上から木の葉がガサガサと落ちてきた。

 そのまま襲ってくるのかと思いきや、木の上に隠れていた何かは木を伝い離れていった。

 恐らく分が悪いと判断して逃亡を図っているのだろう。

「皆様は村に戻り、戸締まりを徹底してください! リリス先輩! フォローお願いします!」

 そしてベズリーシアの取った行動は追跡である。当たり前のようにリリスのフォローを期待している。

 しかしそれを懐かしむ余裕が今のリリスにはない。

 老人たちを差し置いて、ベズリーシアは走り始める。

「ちょ、待って! 今魔法が使えないんだってば!」

 仕方なくリリスも走り始める。

 最近運動していなかったから足が重い。

 シャワーで汗を流したばっかりだというのに、また汗をかくことになりそうだ。

「どういうことですか! この期に及んで笑えぬ冗談はよしてください!」

 打って変わってまるで忍者のような足取りの走りを見せるベズリーシア。ついていくのに必死だけのリリス。

「いや、冗談、じゃ、なくて……」

 杖がないんだってば。

 そう言いたい。けどついていくだけで精一杯なのである。 

 やばい。息ももう切れてきた。っていくらなんでも早すぎる。どれだけ運動を怠けていたのかが露呈してしまった。

「あぁ、なるほど! この程度の些事は自力で解決を図れというメッセージでありますか!」

「……ちが」

「ふふ、ならば久々にリリス先輩に魅せつけるであります。腕がなりますね」

 意味深な笑みを浮かべながら、途中で木から降りてきてそのまま前を疾走する男についていくベズリーシア。やはりというか木の上に潜んでいたのは魔物ではなく、人間であった。

 でもちょっと待って。もう無理。限界。ほんとごめんなさいって感じ。あとはほんとお願いします。

 そんな弱音と同時にこっそりフェードアウトでもしたるかな、と思っていた時であった。

 目の前を走っていた男は立ち止まった。

 ゼーゼーと肩で息をしながら、リリスも立ち止まる。くそ、逃げる機会を逸した。

 割と森の深い位置まで誘導させられた感があるけど、どう考えてもこれは罠だ。

 よく見れば動物の骨が多く見受けられるし、なんなら焚き火の後まである。

 どう考えてもこれ、この山賊が根城にしている場所まで誘導されてるんですけど? 大丈夫なんですかベズリーシアさん?

「観念したようでありますな」

 ベズリーシアは拳を構えたままその男に向き合った。

 なに、なんでこの子は息も切らさないで疾走できてるの? あっちの男もちょっと辛そうにしてるっていうのに。若さ? これが若さと老いの対比なの?

「観念してもらうのはこっちの方だな」

 パチン、と男は指を鳴らした。

 森の奥から現れたのは男達の群れである。背後からも木の上から飛び降りてきた男達がリリス達を囲んでいた。

 お世辞にも品性が良いとは言えない身柄である。くたびれた衣服に、その手に持っているのはサビだらけのカトラス。流石に銃の類は持っていないようだが、魔法使いが潜んでいるかもしれない。いずれにせよ気を引き締めなければ。

「ここらへんで伝説の武道家様がウロウロしてるって聞いてな。まさかリリス様まで釣れるとは思ってなかったが、いやぁ、運がいいなぁ」

 ひゃははは! と大きくひと笑いすると、周りを囲んでいる男たちもくすくすと笑っていた。

 リーダー格はこの眼の前の男のようだ。

「何が目的でありますか」

 リリスとしては杖がない以上、完全に何もできることがない。ベズリーシアに全幅の信頼をもって現場を委ねることにする。

 決して楽をしているわけでも。できるだけ目立たないようにしてこっそり帰るとかそんなことを考えている訳ではない。

「んなもん決まってるだろ。金目のモノを奪って、お前達を倒した山賊として名を売るためだよ!」





―・―・―・―・―・―・―・―・―・―・―・―・―・―・―・―・


さんぞくのかしら があらわれた!

さんぞくのてしたA があらわれた!

さんぞくのてしたB があらわれた!

さんぞくのてしたC があらわれた!

さんぞくのてしたD があらわれた!




「ではリリス先輩は自分の活躍をみていてください!」

 言われなくてもそうするしかない。リリスはそんな言葉を飲み込み、首肯だけで応えた。



リリスは みをかためている!

ベズリーシアは ばくれつけんを はなった!

さんぞくのてしたBに 348のダメージ!

さんぞくのてしたBを たおした!

さんぞくのてしたCに 376のダメージ!

さんぞくのてしたCを たおした!

さんぞくのてしたAに 355のダメージ!

さんぞくのてしたAを たおした!

さんぞくのてしたDに 342のダメージ!

さんぞくのてしたDを たおした! 

さんぞくのかしらの こうげき!

ミス! ベズリーシアは ダメージを うけない!


ベズリーシアは しっぷうのごとく おそいかかった!

さんぞくのかしらに 447のダメージ!

さんぞくのかしらを たおした!


さんぞくのむれを やっつけた!

それぞれ 

210ポイントの けいけんちをかくとく!


―・―・―・―・―・―・―・―・―・―・―・―・―・―・―・―・



「どうですか! 自分に衰えはありませんよ!」

 にっこりと満面の笑みでガッツポーズを見せるベズリーシア。

 相変わらずだなぁ、とリリスはボコボコに殴られた山賊達を哀れんでいた。


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