「ノートにでも書いてろ。」
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「何がフッ、だよ。馬鹿はお前だ。」
突如出現した中二病野郎につい言い返してしまう。
「!?……はぁ、全く。理解の乏しい男はコレだから困る。お前はこれからどんな目に遭うか知らないらしい。」
優也は傷付いた素振りを一瞬、一瞬だけ漏らしてすぐに中二病モードへと戻った。
「何言ってんの、お前。どんな設定? 未来予知か何かか?」
僕がこうして言い返してしまうのは多分気恥ずかしさもあるからだろう。
かつての僕の設定は、皮肉な事に未来予知。
数秒後の未来から半年後位までが見えるがそれ以上は時間軸の交わりが複雑化する為全ての未来を見ることが困難に……。
なんて、真っ黒な歴史を持つからこそ僕はこいつに共感せざるを得ない。
だからこそ恥ずかしい。
すると優也は僕を嘲るように笑う。
「はっ、笑わせてくれる。未来予知は貴様の力であろう?」
「───何……!?」
何者だ、こいつは。まさか───
「まさかお前は……僕を……知っている、のか?」
正確には僕の黒歴史を。
だがそんな筈は無いのだ。ネット上で公開してはいたがそれは既に削除済みであるし何より現実の情報等一切入力していない。
あり得ない。あり得る訳がないんだ。
現実の僕の顔を知っているなんて。
気付けば手が酷く汗ばんでいる。冷汗も止まらない。
「おいおい、いい加減にしてくれよ詩音。いや、シシ。」
「嘘……だろ……。そ、そんな……お前は……」
「お前は───誰だ。」
僕は確かシンと言う名前で公開していた筈だ。
未来が見え、何が起きるか分かっていても未来を改変する事が禁じられている為全てを見殺しにして来た咎人、罪を意味する「シン」と……そう名付けた筈だ。
「まだシラを切るのか。シシよ。」
「い、いや!違う!」
「何が違うと言うのだ!」
「僕は……シシじゃない。シンだ。」
かつての名を口にする。
それがどんな意味を持っているか分からない程、僕とシンは切り離されてはいなかった。
僕は……俺は、感じていた。
かつての自ら望んで得て、望んで棄てたこの力を。
身勝手な己の所為で失った過去を。
何より楽しみ、苦しみ、生きていた、己自身を───。
「シシじゃない……? それはどう言う……シン、と言ったか? ……ぁ。」
あぁ……。ああ!
「そうだ。俺がシンだ。」
俺はかつての名を叫ぶ。還ってきた己の名を。
「時間軸干渉の咎人、シンだ!」
立ち上がるとそう言い放ち、眼を閉じる。
見える、見えるぞ。
全ての時が。
これから起きる全ての事が。
「感謝する。優也とやら。いや、止そう。俺の名を言わせたのだ。貴殿も名乗られよ。」
眼を閉じたまま優也を指差し、未来に靄のかかった黒き男の真の名を問うた。
「あっ、いえ? 僕は優也ですけど?」
───はっ?
眼を開けるとそこに未だかつて見ぬ衝撃的な未来が。
「突然何を───っぁふ。」
隣の席に女子生徒が一人。
こんな事をしている僕を気にも留めずに読書をしていた。
「ゆっ、優也───」
優也に助け舟を求めようと振り返ると既に眼帯どころか十字架ですらも付けていない。
「はい?」
僕は優也の胸倉を掴みつつ小声で話す。
『おいテメェ、何一人だけ普通の人みたいな振る舞いしてんだ。この中二病野郎……!』
『馬鹿止めろ俺まで中二病みたいに思われるだろ!』
『歴とした中二病だろうが!!』
「あの。」
ヒソヒソと話している最中に読書の彼女が声を掛けてきて僕も優也も同時に「「はいっ。」」と返事をする。
「ヒソヒソと後ろで話されると気が散るので止めて貰えませんか?」
単行本───ラノベだろうか。
本を閉じてズレた眼鏡を直しつつ睨む彼女はポニーテールをなびかせ、その吊り上がった瞳からは殺意にも似た恐怖を感じた。
優也も同じく顔面が硬直している。口も開きっぱなしだ。
蛇に睨まれた蛙の様に身動き一つ取れない僕等に彼女は更にこう続けた。
「気色の悪い中二病共が。家帰ってノートにでも書いてろ。」
これはとんだ女が隣になってしまった。
未来予知が無くとも僕はここでの生活に波乱を感じずには居られなかった。
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僕の設定は召喚獣を剣に宿したり魔法の様に放ったりバリエーションの豊富な、「魔法剣士」ならぬ「召喚剣士」でした。
ー以下用語説明ー
【中二病】
己の「かっこいい」と思う物になりきる、またなろうとする、口調を真似る、等の事をする人を総じて「中二病」と呼ぶ。
【ラノベ】
ライトノベル。ライトなノベル。
【時間軸干渉の咎人】
かつて少年は───(以下省略
当然、タイムオブクリミナルなんて熟語は存在しません。
これは妄想の産物です。




