「へたれ」
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「───ん……。」
見慣れた天井……ではなく壁。
僕は横向きで眠るので起きたら天井を見るのは中々に稀だ。
たまには仰向けに寝てみようかと思った事もあったが息苦しくて眠れなかった。
「ふぁぁ……」と欠伸をする。
僕は足元辺りに違和感を感じた。
何か入ってる?
布団を勢い良くめくるとそこには猫のように丸まった先生がすうすうと寝息を立てていた。
「マジかよこの先生……。」
驚いたと言えば驚いたが予想通りと言えば予想通り。
昨日の食事だって「はい、あーん。」を初体験してしまう事態になる程にこの人は積極的だ。
何が彼女をこうさせるのか僕には全く理解できない。
僕みたいな男にそこまでの魅力はない。
勉強は中の下、顔は省いて、体格はひ弱、性格は元中二病ゲームアニメラノベオタの上にパソコンに関しても知識はタイピングが出来る程度だ。
オタにしても中途半端、何に関しても秀でた物は見当たらない。
性格だって「お察し」だ。
だがそれでもなお好いてくれている。
過去の約束が起因してるとはいえ好かれていないと出来ない行為だ。
僕はリコ先生をまじまじと見つめてみる。
髪は天使の輪が出来る程の艶、睫毛も長く綺麗に反っている。顔立ちは雰囲気に沿って幼く、やはり少女にしか見えない。
彼女は一向に起きる様子が無い。
無防備で無警戒なその姿を見せられて僕はおかしくなったのかもしれない。
いや、好かれて好いてしまったのか、単純に魅せられたのか。
指先で少し、頬に触れる。
布団の中にくるまっていたせいで温かい。
そっと撫でると20代とは思えない柔らかさが手の平全体に伝わる。
いいのだろうか。
寝ているのをいい事に。
「先生、嫌だったら……起きて下さいね……。」
僕は囁く様に言った。
リコ先生の顔に、顔を近付ける。
少しずつ、少しずつ。
起こさないように、バレない様に。
でも、バレて欲しい。
「先生が……悪いんですよ……。」
そんなはず無い事は分かっている。
それでも僕は言い訳のように、言い訳の代わりに囁く。
お互いの息が掛かる距離。
僕の鼓動が、呼吸が、浅く、速くなっていく。
僕は生唾を飲み込んだ。
良い匂いがする。
女の子特有の、甘い匂い。
ここで僕は躊躇した。
踏み止まれた。
僕は……こんなやり方でしたかった、のか。
可愛くても、まだ好きになってすらいない子に、無理矢理。
僕は急に自分が一線の際に立っている事を悟った。
だめだ。しちゃいけない。
男として、しちゃいけない。
僕は顔を上げようとした。
「へたれ。」
すると寝ているとばかり思っていたリコ先生は手を伸ばす。
僕の頬に両手で触れると、僕を少し睨む。
心なしか先生の顔は紅潮している。
これは暑さか、それとも。
「わざわざさせないで。」
先生は───璃子は僕の顔を引っ張る。
そのまましがみ付く様に、強引に唇を重ねた。
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元々の予定では幼女先生登場回は2話程度のサブキャラ予定でした。
人生思い通りには行きませんね。




