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なんか、ドク枝さんうざいみたい。

 主人公は僕だよっ!リョナ子視点。

 春眠暁を覚えず。とはよくいったものだよ。

 僕は朝にめっぽう弱いんだよね。

 ま、それは年中だけど。


 今朝もだるい。濃いめのコーヒーを飲みながら今日の仕事をチェック。


 お、今日はレベル4が一件だけだ。しかも午後からだね。午前中暇ができたからゆっくりメンテでもしてますかね。

 この仕事は罪人ありきだからね、一気に押し寄せる時もあるけど、こうやってごく稀に暇な日もある。


 今日は余裕を持って仕事ができるね。

 そう思ってたんだけど、内線がかかってきたの。

 う、この部屋番号は。

 嫌な予感しかしない。でも、無視すると後が面倒。

 仕方ない応じますか。


「・・・・・・はい、リョナ子ですけど」


「あ、リョナ子? 私だけど。ちょっとお願いがあるのよ」


 籠もった声。相手はドク枝さんだった。特級拷問士の先輩でとても優秀な人。なんだけど、とても厄介でもある。だから今すぐ切りたい。


「・・・・・・なんですか?」


「うんとね、なんか知らないけど私の今日の仕事なんだけど、なぜかレベル1が数件入ってたのよ」

「はぁ」


「でね、ご存じの通り私の執行って毒を使うじゃない。だからこういう低レベルの執行って向いてないのよね」

「はぁ」


「だから、代わりにあんたやりなさい」

「お断りします」


 そう言いガチャリと受話器を置いた。

 なにが、ご存じの通りだ。知らないよ、たく。

 

 これで済むはずはない。相手はあのドク枝さんだ。また電話が来た。

 とらないと永遠に鳴り続けるだろう。他から連絡が来るかもしれないしそれは困る。


「今度はなんですか」

「ちょっとなに切ってるのよっ! レベル1よ、リョナ子ならちょいちょいでしょ、やりなさいっ。それとも先輩のいうこと聞けないのっ!? ジュース奢るからっ」


 たしかにレベル1ならすぐ終わるけど。言い方が気にくわない。

 このまま断り続けるか、要求を飲んで終わらせるのがいいか、どっちが楽か天秤にかける。

 そして、僕は後者を選んだ。ドク枝さんとこれ以上話してると執行以上に疲れそうだし。


「・・・・・・今回だけですよ。そもそも僕じゃなくて、一級や二級に回したらいいじゃないですか。経験を積ませるために一件でも多く執行させなきゃですよ」


「いないわよっ! 一級や二級の知り合いなんて、誰もいないわよっ!」


 そういや、ドク枝さんは特級なのに直属後輩いなかったね。全身から面倒くさそうなオーラでてるからなぁ。


てなわけで嫌々僕がやることになりました。


 ドク枝さん自ら罪人をここに連れてくるって言ってたけど。


「コンコン、ドク枝よ」


「あ、どうぞ」


 外からガスマスクをつけたドク枝さんが現れた。首を紐で繋がれた罪人達も一緒だった。


「SNS屑三銃士を連れてきたわよ」


「SNS屑三銃士ぃ?」


 何言ってんだ、この人。


「まず、態度が悪いと店員に土下座を強要させその様子をSNSに投稿、土下座強要クソ野郎」


「次に、災害時にデマを流し拡散させた、災害時デマ拡散クズ人間」


「そして、勝手に個人を盗撮、それをネタにして笑う、勝手に盗撮ゲス」


「最後に、バイト先の店で、不衛生な事ことや常識知らずの事をして店側に多大なる被害をもたらせた脳タリンバイトテロ」


四銃士じゃないの。

 

 それにしてもあれだね、この手の度が過ぎた悪ふざけは後を絶たないね。線路に入ったり他にも色々あるみたい。


「はい、ちゃっちゃとやって頂戴。私見てるから」


 見てるのかぁ。帰ってくれないかなぁ。

 ま、いないものとして迅速にやりましょうかね。


 目隠しされた罪人四人のレベルは全部1。

 僕はリョナ子棒を手にした。


「最初は土下座強要クズ野郎からかな」


 僕がそういうと、その土下座強要クズ野郎が僕の前で土下座しはじめた。


「すいませんっ、ちょっと調子にのったつーか、お客様は神様なのにー、あっちの態度もあれだったんでー、ほんと、痛いのは嫌なんでー、軽めにお願いしまっす」


 僕は、無言でその頭を思いっきり踏みつけた。コンクリートの床に顔面をたたきつける。


「ががあぁあっ」


「はい、次」


 続いて、災害時時デマ拡散クズ人間。

 目隠しされてても次が自分の番だと雰囲気で察したみたい。

 必死に弁明を始めた。


「いや、その、みんなも喜んでたし、こう災害時だからこそ、こういうジョークも必要かなって・・・・・・」


 僕は、無言でその子の人差し指を握ると、関節の曲がらないほうへ力を込めて折り曲げた。鈍く、不快な感触が手に残る。


「ひぎぃぃぃっ、いあたい、いだあいああい!!!!」


「はい、次」


 三人目、勝手に個人を盗撮ゲス。

 しばらく俯いて暮らしてもらおうかな。絶妙な場所に狙いをつける。


 僕はリョナ子棒を、盗撮ゲスの首元に振り下ろした。


「あがああああああ」


「はい、次」


 最後はバイトテロか。馬鹿なことをしてまで目立ちたいならお望みに答えよう。

 僕は顔面、鼻先を狙ってリョナ子棒を振りきった。


「あおあぁあががああぁっ」


 ちょっと、鼻が曲がっちゃったね。しばらく固定させる治療が必要かな。あれ目立つと思うよ。


「はい、終わり」


 ま、こんなもんでしょ。この人達には今後後先を考えて生きてもらいたいものだね。行動を起こす前にそれによってどんな影響がでるか少しでも想像できるようになればもうここに来る事もないよ。


「ご苦労様。ま、特級なんだからこのくらい当たり前よね、二級でもできるもの」


 一言多いんだよなぁ。ご苦労様だけでいいんだよなぁ。


「はい、そうですね。じゃあ終わったんでさっさと罪人つれて帰ってください」


 僕はこれからレベル4の仕事があるからね。ドク枝さんに構ってる場合じゃない。


「こいつらの移動は職員に任せるわ。丁度いい機会だからこのままリョナ子の執行を見てあげる」

「いや、まじで帰ってください」


「遠慮しなくていいわよ。特級は独自のスタイルを持つ者も多い。リョナ子はなんていうか地味なのよねぇ。だから私が色々アドバイスしてあげる」

「いや、本当に大丈夫なんで、帰って下さい」


「遠慮はいらないってのに。同じ特級でも経験の差が・・・・・・」

「いや、冗談抜きで帰ってください」


「だから・・・・・・」

「いや・・・・・・」


 こんなやり取りをしてる内に罪人が運ばれてきました。

 そしてドク枝さんは帰りませんでした。


「罪人のレベルは4。幼女を連れ去り監禁罪。幸いすぐ見つかったけど女の子の恐怖は計り知れない」


 さっきはレベル1だってけど、今度は4だ。気合いを入れ直そう。

 

「ジロジロ」


 だけど、ドク枝さんが近くで見てる。かなりやりづらい。


 罪人は両手を上に吊した。さて、どう展開させよう。


「しかし、幼女を連れ去るとはね・・・・・・」


 心の声が口にでていた。罪人は目隠しはされていたけど口は自由。罪人は僕の独り言に反応する。


「か、可愛かったので・・・・・・つい」


 はぁ。だからって連れ去るかね。


「雨に濡れてる捨て犬感覚かっ!」


 ドク枝さんも反応して声を上げた。そういうの思っても言わなくていいんだよなぁ。


「理性があれば例えそう思ったとしても行動しないだろう」


 さっきのSNS三銃士、いや四銃士と一緒だね、先を考えられない。その場その場の短絡的な思考。


「ぼ、僕も反省してるんです。あの時は、暴走してしまって・・・・・・」


 理性のストッパーが外れた者がこうして犯罪者になるんだね。


「暴走って、お前は、すっごいモーターを搭載したミニ四駆かっ!」


 ドク枝さんがまた声を上げた。うざぁぁ。自分の執行じゃないからってこの人は。


「もう、帰れっ!」

「な、なんですってっ! 先輩に向かってその口の聞き方はなによっ!」


僕も我慢の限界。無理矢理ドク枝さんを部屋から押し出した。

 押し出すとすぐに鍵をかける。あとはもう一切無視した。


 幸いにもすぐに発見されて女の子に被害は少なかったとはいえ、凶悪犯罪には違いない。


「さてと・・・・・・」


やっと二人きりになれた。

 切り替える。調子は狂ったけど。


「・・・・・・あぁあ・・・・・・」


 雰囲気が変わったのを罪人自身も感じたみたいだね。


「ごめんね。五月蝿くしちゃって」


 今度は罪人から口を開くことはなかった。


「じゃあ執行を開始するよ」


 さっきは始まってなかったからね。ドク枝さんも執行に入れば人が変わったように無言で見ていただろう。それはそれでやりづらい。


 僕はリョナ子棒を手にとった。


ここからは僕も口を噤むよ。


 これから聞こえるのは君の悲鳴だけ。

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