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おや、随分山奥まで来たようです。後編

 

 私はまず、村長の家を目指しました。

 背を低くし、ささっと駆け抜けていきます。


 裏口に回り、銃を手にします。

 村長の家には、カップルの片割れ、男性が泊まっています。

 さきほどの録音を聞く限り・・・・・・。

 急ぎましょう。


 慎重に、尚且つ迅速に。中に踏み込んだ私は、特殊部隊さながら、心でクリアと呟きながら部屋を見て回ります。明かりのついた部屋は全てではありません、ほとんどは真っ暗。こんなことなら暗視ゴーグルでも持ってくれば良かったですね。

 それでも、満月の光と、慣れてきた目でなんとか状況は把握できます。


 ある部屋に入った時です。

 明らかに場の雰囲気が変わったのは。


「・・・・・・遅かったですか」


 部屋の真ん中には布団が一つひかれ、そこにはカップルの男性が寝ておりました。

 ただし、それは永遠の眠り。


 掛け布団は剥がされ、着ている服と敷き布団が濡れています。

 胸からの出血ですね。暗いので色は分かりかねますが、まぁ真っ赤なのでしょう。

 近づいて観察。やはり胸から血が今でもあふれ出ています。まだ殺されて間もないのでしょう。寝ている間に滅多刺しって所ですね。


 村民はもう行動を起こしている。

 あの女性を避難させておいて正解でした。


 ひとまず移動します。

 そうなると、今この屋敷には人はいないかもですね。

 村民の目的は私達とカップルの女性ですから。


 それでも警戒しながらこの家を探索していきます。

 話では地下があるようですからね。

 それを探しましょう。


 予想では、地下ですから明かりが欲しいはず。

 近くにそれらしき物があると思うのですが。


 土間の奥の壁に懐中電灯が掛かっておりました。それも一つではなく五つほど。これは不自然ですね。

 辺りを注意深く観察すると、引きづった後を見つけました。


「ここですか」


 上の石作の竈を押してみます。すると見た目に反してすんなり動きました。

 扉を発見。取っ手をひっぱり中を覗くと階段がありました、さっそく中に入ってみましょう。


 降りるにつれ生臭いような匂いが鼻につきます。

 最後の段を降りると、かなり広い空間にでました。


 そこで私が見た光景は。


 蝋燭がいくつか心細く部屋を灯し。


 壁に打ちつけられた鎖が垂れ下がってます。

 一つ、二つ、そして三つ目には。


 全裸の女性がそれに繋がれておりました。


「貴方、大丈夫ですかっ」


 急いで駆け寄り声をかけます。

 女性は繋がれた両手を上に頭は地面を向けてぐったりしていました。


「あ・・・・・・あ・・・・・・あああ」


 女性は譫言を口走るだけで問いかけに答えてくれません。


「も、もう・・・・・・い、や・・・・・・やめ・・・・・・あ、あ」


 体は傷と痣だらけ、かなり乱暴に扱われてたみたいですね。


「大丈夫です。もう安心してください」


 私は彼女の頭を抱きかかえ優しくそう囁きました。


 でも、もうすでに彼女の声は弱弱しく。

 せめて後一日早くついていればと、悔やまれます。


「・・・・・・・帰れ・・・・・・る・・・・・・やっ・・・・・・と・・・・・・」


 彼女はそう最後にいい、私の胸の中で息絶えました。

 僅かに残っていた力がすっと抜けていくのが私に伝わってきました。


「・・・・・・ええ。私がちゃんと帰してあげます。だからもう少し待っていてください」


 帰りたい一心で命を繋いでいたのかもしれません。

 私の一言で糸が切れたのでしょう。私のせい、ですね。


 だから、責任をもって、この事態を収拾すると誓います。



 外に出た私はまず、あの二人と合流することにしました。

 すでに寝ている所を村民に襲われているはずです。


 ですが、これっぽっちも心配しておりません。ただの人に遅れをとる二人ではないですから。


「あ、蓮華ちゃ~ん」

「お、レンレン。いた、やはり無事だ」


 二人はすでに血のついたナイフを握っていました。

 いや見間違いでしょう。ちょっと暗くて見えませんね。


「ドールコレクター、円さん。私はさっき一緒にいた女性と一旦町に戻ります。そうですね、もう一度戻ってくるのは四時間後ってとこでしょうか」


「ん~? じゃあ私達は?」

「うくく、置き去りか」


 その間、私の監視が無くなっちゃいますね。

 でも、この二人なら大人しくしてくれるでしょう。

 うふふ。きっとそのはずです。


「自由行動とします。私が調べたところ、この村には大人は54人、子供は4人です。大人のほうは忘れるかもしれませんけど、子供の数はちゃんと覚えてますからね・・・・・・」


 ドールコレクターならこの言葉の意味、分かりますよね。


「うふふ、蓮華ちゃん、すっごく怒ってるね、顔はいつも通りだけど分かるよ」

「レンレンは、一番怒らせちゃ駄目なのに、うくく、私達より、ずっと怖い」


 私は隠れるようにいっておいた女性を向かいに行くべく足を向けます。


「じゃあ、くれぐれも無茶しないようにお願いしますよ。では、また後ほどー」 


 二人を残し、この場を離れます。


「いたぞっ! こっちだべ」

「逃がさねぇぞ、おらぁ」


 背中から複数の男の声が聞こえて来ました。

 そしてそれは。


「あぎゃぁぁぁああああああ」

「ひぎゃあああかぁあ」


 すぐに悲鳴に変わります。

 いや、聞こえたような気がしましたが、それもきっと空耳でしょう。


 

 女性を迎えに行き、手を引きながら車に向かいます。

 入り口に駐めておいたのですが。


 車の近くに男が二人。それはそうですね、逃がしたくないでしょうし。真っ先に押さえるでしょう。

 後で移動させるつもりならタイヤをパンクさせるわけにはいかないはず。私達がここに来た形跡は消さなくてはなりません。


 さてと。そうなるとあの男達をどうにかしなければなりませんね。

 銃でパンパンやればすぐ済むのですがそうもいきません。


 それはまた別の人達の役目。


「ちょっと、バックを持っててください」


 女性に荷物を預け、前屈みに距離を詰めていきます。

 あっちはまだ私達に気づいていない。

 不意打ちは最初が肝心です。蛇苺さんなら瞬殺できるのでしょうけど。

 ちょっと、真似してみますか。

 蛇苺さんが殺人鬼二人を倒した光景は目に焼き付いています。


 たしか、こんな感じだったはず。


 地面を強く蹴り一気に踏み込みます。

 まずは左。ぬっと突然現れた私に男は声をあげる暇もありません。

 私は男の顔を両手で包む込むと、そのまま膝を打ち込みます。とりあえず歯と鼻が折れるまでは続けましょう。鈍い音がリズム良く、数度膝を顔にめり込ませて手を離します。


「ナニシテンダテメー」


 右の男がここで動きました。仲間がやられていかにも怒り狂ってる感じの言い方です。


 すごい形相で鍬を構え突進してきました。

 それを私はタイミングを合わせてその場で飛び上がると、両足を男の頭に挟みこみます。そしてそのまま後転、男の脳天を地面に叩き付けました。

 お、見よう見まねでしたが上手く出来たようです。

 ただ、ワンピースだったので下着が見えてしまいました。はしたないですね。


「さ、行きましょう」

「あ、貴方は一体・・・・・・」


 犯罪者ハンター蓮華ですっ。と昔の私ならそう鼻高々に宣言してたのでしょうが、今は大人になりました。


「ただの大学生、そして昆虫採集部の部長ですよ」


 こうして、彼女を助手席に放り込み、急いでこの村を脱出します。

 発進時、道が悪いのでしょうか、なにか固い物を踏んだようですが気にしません。


「あ、あの、サトシは、私と一緒にいた・・・・・・」


「・・・・・・心配ありません。彼が襲われることはないですよ。後でちゃんと向かえにきますので」


 嘘は言ってませんよね。ちゃんと説明すると彼女発狂するかもしれないのでここは誤魔化すのが得策でしょう。

 今は彼女の身柄が最優先です。

 一先ず、町に帰りましょう。




 四時間後、私は戻ってきました。

 

 地元の警察に彼女を預けます。同時に要請を済ませ、さらに上にも話は通しておきました。

時間差でここに来るように手配したのです。


 すでに朝日が登ろうとしていて、辺りはうっすらと明るくなってきました。


 村の入り口からもう確認できます。

 何体も倒れてますね。

 もうそこは血の海。



 すぐ近くで血まみれで倒れていたドールコレクターと円さんがいました。


「なにやってるんです?」


 それ返り血ですよね。私がそう声をかけると、二人はすぐに立ち上がりました。


「あれ、てっきり警察と来るのかと思ってたよぉ」

「私達はあれだ、狂った村民の一人にやられたんだ、そういうシナリオだって、姉御が、言ってた」


「なるほどぉ。この村では観光客の女性を今まで何人も監禁して子供を産ませてたんですね。それで現在捕らわれていた女性は昨日の夜亡くなった。実はその彼女と恋仲になっていた男がいて、それを見て頭がおかしくなってしまった。そして村民を殺害しまくったと、そういう事ですね。私達はその最中巻き込まれてしまいましたか」


 そういう事なら、その狂った村民が存在しなくてはなりません。

 でも、ドールコレクターなら。


「そうそう、その狂った村民は、山に逃げたよぉ。今頃罪の意識か、女の後を追ったかで首を吊ってるんじゃないかなぁ?」

「うんうん、あれ、手こずった。殺してからじゃバレるからってナイフで脅して、やっと・・・・・・おっと、これ言っちゃ駄目って姉御言ってた、今の無し」


 円さんぇ。この子の口にはガムテープでも貼っておきましょう。


「子供は奇跡的に無事ですね?」


「うん、最初から外にでないように隔離されてた」


「大人はどうです?」


「54、いや53人全員殺されたんじゃないかなぁ」

「そう、そうなのだ、私26人、姉御に少し負けた、あれだ、逃げる奴を執拗に追いかけて、何度も・・・・・・」


 円さんぇ。なんで貴方はそんなに純粋な子なんですか。

 

「しかし結局、村人皆殺しですか」

 

 この二人が関わると最終的にこうなるのでしょうか。


「うふふ、蓮華ちゃんがいればこんな事にはならなかったのにねぇ」

「奴らも同じだ、レンレンが目を離せば、暴れ出す、うくく、大暴れだ」


 ここに殺人鬼はいませんでしたが、結果オーライです。司法解剖って滅多にしませんから、したとしてもカップルの男性と、首を吊った村民くらいでしょう。54人全員はさすがにするはずがない。なので私達の話で問題なく通るでしょう。

 そろそろホームに戻りましょうかね。ちょっとこれ以上は目が届かなくなりそうです。



 この時、私はすでに殺人連合が新たな仲間を引き入れていたとは知りませんでした。


 それもまさかあの人が力を貸すなんて。


 シストくんとタシイさんの母親であり、史上最上レベルの元レベルブレイカー。

 

 血深泥食人鬼、ヴィセライータ-のカリバさん。


 ちょっと親馬鹿すぎじゃないですかねぇ。


 子供の喧嘩に親が出てきましたか。

 ついでに蓮華ちゃんの過去編も本日更新しました。よろしければ。

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