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うん、なかなかうまくいかないね。

 こんにちは、シストです。今、僕達殺人鬼連合の面々は、新たなメンバーをスカウトすべく町を出ております。

 

 最初の町は大外れ。ここからさらに南下して別の候補者を求めようかと。


「おにねー様ぁ。今度はなにか当てでもあるのかな?」


 隣でそういい僕の腕に絡まるのは妹のタシイ。通称、九相図の殺人鬼。

 当てか。一応、あるのはあるんだよね。でも、またハズレの可能性もある。


「ここにはある教団の本部があるんだ。そこは信者をつかって色々あくどい事をやってるみたい。僕の聞いた話では殺し専門もいるとか、いないとか・・・・・・」


「ふ~ん。てことはあれだね、もしその請負人が存在してるならそいつが候補って事か」


 逆隣の目黒さんがそう呟く。通称、殺人鬼眼球アルバム。

 合流した沙凶ちゃんは前回の拷問で道具が駄目になったらしく、今別の場所で調達中。だから今いるのはいつもの三人。


「ま、いけばわかるよ。いるのかいないのか、使えるのか使えないのか、はね」



 そこは本部というだけあって建物自体も大きく、敷地もかなり広かった。

 真っ白な柱で構成された教会に似た外観。

 ここ数年で一気に規模を広大してった新宗教団体だ。

 月の力でどうとかこうとか、教祖が体をさすれば病気が治るだか、なんともうさんくさい団体みたい。


「こんにちは~、ちょっと興味があって見学したいのですが~」


 僕達は柵の中にいた信者らしき人に声をかける。

 その方は僕がそういうと顔をぱっと輝かせて中に入れてくれた。


「今、幹部をお呼びしますので少々お待ちになってください」


 中の応接間に通された僕達。随分奥の方だね、信者達は普段立ち入らない区画のようだ。

 僕はふかふかの黒いソファの真ん中に腰掛ける。タシイと目黒さんは同じ場所には座らず僕の両隣に立っていた。


「やぁやぁ、お待たせしました」


 数分後に現れたのはスーツ姿のおじさん。

 テーブルを挟んで対面に腰を降ろした。


「お、これはまたお若い方々ですな。ん、そちらの二人は座らないのかな?」


「あ、お構いなく~」

「こっちの方が楽なんでー」


 二人はそっぽを向いてそう適当に答えていた。


「・・・・・・そうですか、まぁいいでしょう。ではさっそくですが、私共の教団に興味があるようで」


 幹部の人は、僕達を値踏みするようにジロジロ見ていた。特にタシイに視線が集中しているような。


「ええ、そうなんですよ。できれば教祖様に直接お話を伺いたいのですが」


 いきなり幹部の人が出てきただけでも好待遇なんだろうけどね、用があるのはトップの人なんだよ。

 不躾だったか、幹部の人は眉をひそめ明らかに不機嫌そうな表情を見せた。だがそれも一瞬すぐに微笑みを戻す。


「残念ですが教祖様は今儀式を執り行ってる最中でしてね、お話は私がさせていただきますよ」


「それは残念です。その儀式とやらもぜひ見たかったのですがね。とりあえず興味としてはですね。ここに荒事などを請け負う信者がいるかいないかです」


 茶番も面倒だし直球でいこうと思う。

 僕がそういうと、幹部はあからさまに動揺した様子で驚愕した。


「は、は? なにいってるんだ、どこでそんな話を、ばかばかしいっ!」


 必死に誤魔化そうとしているけど、その態度がもう怪しいよ。


「いや、もう色々調べはついてるんですよ。ここは元々別の宗教法人でしたよね。そこをうまく乗っ取った感じですか。税制とかかなり優遇されますしね。活動を目的としたなら収益も非課税ですし、建物や土地なんかの固定資産税もない。様々な経済活動も一般的な企業と比べ法人税率も低い。なにか裏でやるのしてもいい隠れ蓑だ。色々やってると邪魔者もでてくるでしょう。政治家、ジャーナリスト、別の宗教団体など・・・・・・」


 僕が流暢にそう説明しはじめると、幹部の男は急に腰を上げ両手をテーブルに叩き付けた。


「なんだっ! お前らはっ! いい加減にしないとっ」


 男は憤り、テーブルの上のガラスの灰皿を手を伸ばす。


 それを。


 目黒さんの千枚通しが上から振り下ろされ、男の手を貫通。テーブルに打ち付けられる。


「あがやぁっ!」


 タシイがすかさずバールを背中から引き抜く。


「おい、なにおにねーさまに手を上げようとしてんだ、あっ?」


 大きく振りかぶる。

次の瞬間、それは男の顔に全力で振り抜かれた。


「があはぁぁあはっ」


 歯が何本か抜き落ち、口から吐き出された血が床に飛び散る。


 右手はテーブルに固定されたまま、男はソファに倒れ込んだ。


「あ~あ。まぁ先に手を出そうとしたのはそっちなのでしょうがありませんね。で、僕達ちょっと教祖様に会いにいきたいと思います、どこにいますか?」


 顔を上げそう問いかける。

 男は左手で顔を押さえそれどころではなく話を聞いていない。


「誰か呼ばれると厄介だ。早めに口を割らせよう」


「ほ~い」「は~い」


 二人は返事をすると同時に行動。タシイはテーブルと繋がっていた腕にバールを落とした。

 目黒さんはいつものように眼球目掛けて、もう一つの千枚通しを突き刺した。


「ひあいあいあいぁあああああああ」


 ここが奥で良かった。声を上げても誰も駆けつける様子がない。多分、そっちにとっても都合が良かったのかもね、なにをしてるかは知らないけど。


「さ、どこにいます?」


 腕を折られ、目から血を流す男は、怯えた表情で僕を見る。あぁ、僕がよく家で見るやつだ。


「ち、地下室っ・・・・・・。もう、もうやめて、くれ」


 ふ~ん、地下があるのか。なるほどね。そこで儀式を行ってると。

もう少し詳しく場所を聞こうか。



「うん、わかりました。ありがとうございます」


 道順をしっかり聞き出すと立ち上がる。さっそく見てこよう。


「あ、目黒さん、タシイ、もうこの人はいらないや」


「ほ~い」「は~い」

 

 二人は武器を構える。男はそれを見て全身を震えだした。


「おおいいいいい、しゃべっただろ、何する気・・・・・・・ああぁぁぁぁぁ」


 うん、喋ったからこそだよ。もう用がない。 

  


 教えてもらった場所に階段があった。ここから地下に降りるのか。

 儀式中は鍵がかかってるようだけど、さっきの男から合い鍵は手に入れた。


 階段を降りきると扉が。合い鍵を使って中に入る。

 そこで待っていたものは。


 蝋燭が何本か立てられた燭台がいくつか置いてあり中はかなり薄暗い。狭い室内には中央に祭壇らしき舞台。その上には裸の少女が数人、目隠しをされて寝せられていた。

 覆い被さるように、男が一人。髭を長く伸ばした、こちらも全裸。多分こいつが教祖。


「はぁはぁ、この悪魔はなかなか手強い。念入りに祓わないと・・・・・・」


 鍵をかけていたからか、男は儀式? に夢中で僕達に気がついてない。


「ふぅふぅ、これは祝福です、拒否してはいけない、汚れが・・・・・・」


 なにか言いながら教祖を思われる男は少女達の体を触っている。


「あ、すいませ~ん。ちょっといいですか?」


 夢中の所悪いけどいい加減気づいて欲しかったのでこちらから声をかけた。


「なっ、なんだ、はぁあ? なんだ、お前達!? なんでここにっ」


 びくりと体を飛び跳ねさせ、やっとこちらを見てくれた。


「お取り込みの所申し訳ないのですが、ちょっと教えてもらえませんかね、ここに殺しが得意の信者がいると聞いたもので、できれば呼んでもらえると助かります」


 語りながら距離を詰めていく。

 目黒さんもタシイもすでに血のついた武器を手にしてるからね、かなり警戒してる。


「な、なんだ、なんなんだ、だ、誰かぁ、誰かぁあぁぁ!」


 う~む、僕の話を全然聞いてくれないね。

 大声を上げる教祖の元に、タシイがさっと走り出した。

 二股の釘抜き部分を教祖の鼻に突っこむと、そのまま背負い投げで地面に叩き付ける。


「がはっあああっ!!」


「おいおいおいおいおいおいおい、おにねーさまが話をしてんだよ、早く呼びなよ」


 全裸で咳き込む教祖を見下ろすタシイ。バールを頬にぐいぐい押しつける。


 その時、祭壇から全裸の少女が一人飛び出した。


 近くにあった燭台を手にタシイに殴りかかる。


「おっと」


 それを目黒さんが千枚通しで受け止めた。


「きょきょきょ教祖さまに、なにを、してるうるっるるるる」


「・・・・・・躊躇がまるでないね。でもシストくん、ここ駄目だわ、使えない」


 他の少女が怯えてるの対してこの子だけ明らかな殺意をもって襲ってきた。

 目隠しはすでにはずし、その顔はよく見える。

 でも、うん、そうだね目黒さんのいう通り、この子を見てるともう無理だね。

 完全に洗脳され、もう心が埋めつくされている。僕がこの後入る余地がない。上書きは無理そう。

 他にいたとしても、この子レベルまで来ると役には立たない。ちょっと考えが甘かったかも。

 倫理や道徳をなんの疑いも無く踏み外せるまで来てるなら、どんなに優秀な者でも素直に僕の仲間になるとも思えない。

 タシイが僕以外の人の言うことを素直に聞くかといえば、それはないからね。それと同じ事。


「もういいや。この人達いらない」


 教祖がいなくなり時間をかければ引き込めるかもだけどね、僕達が欲しいのは即戦力。


「ひぐあうあうあぁぁっ!」


 タシイが僕の声を受け、バールを教祖の顔に振り下ろす。何度も何度も、それは死ぬまで続く。


「ほらほら、あんたの神に祈れよ、ほらほら、死ぬぞ、死んじゃうぞ~」


 〈目黒ちゃん活躍中〉。


「残念、やっぱり神様なんていなかったねってのは本当だ」


 白い裸体に穴がいくつも開けられていく。


 そっちの女の子達は生かしておこう。目隠しはされたままだしね。

 後のもみ消しはいつものようにあそこに頼めば良い。



 こうして僕達はまた無駄骨の骨折り損で本部を出る。


「なかなかうまくいかないね。やっぱり殺すために生まれてきたような人じゃないと駄目だ」


「しかし、おにねーさま、神なんていないのになんで人は神を信じるのかな」


「世の中僕達のように恵まれた人ばかりじゃないのさ。なにか拠り所がいる。努力の先にあるのは祈りだけ。人は説明がつかない現象になにかを置き換えて安心したいってのもあるんじゃないかな。別にそれは神じゃなくても偶像ならなんでもいい、なにを依り代にするかは個人の自由だと思うよ。タシイが僕を慕ってくれるのと同じ事さ」


「ふ~ん、よく分からないけど、もし地獄があったら私と目黒ちゃんは確実にそこに直行だよね、そうなるとおにねーさまとは離ればなれか、それは嫌だな」


「じゃあ、ないと思えば良い。アタシも地獄には行きたくないし、死んだ後の事なんて生きてるうちに考えても意味はない。誰も分からないなら好きに生きよう」


 まぁ僕は肯定も否定もしない。歴史的にみても必要な思想もある。平穏だけを与えるってのもこっちの都合のいい解釈かもだしね。


 だから、僕達は自分の思うがままに行動する。


 誰でもいい。

 

 さぁ、止めてごらん。


 まだまだ僕達は人を殺す。

 

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