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なんか、ドームに行くみたい。

 この回は飛ばしても全く本編に影響ありません。むしろ飛ばして下さい。

 仕事場に小包が届いた。

 宛先は書いていない。

 中身を確認しようとしたら電話がかかってきた。


「あ、リョナ子か。私、私。なんかな、レッドドットがプリなんたらのライブに行きたいみたいなんだ。だから一緒に行ってきてくれ」


「はぁ~!? なんでですか、先輩。いっつもいっつも。もしかしてこの荷物も先輩ですか?」


「そうそう、レッドドットいわく、そのライブは人気があって行きたくて行けない人がいっぱいいるらしい。だから、最低限の知識は身につけて欲しい、じゃなきゃ失礼になるって」


「はぁ~? どういう事ですか、その前に僕、行くとは一言も」


「いや、別にいいんだけど、それだとレッドドットが超不機嫌になって、何人か死ぬかもしれないな・・・・・・」


てことで、僕は納得がいかないままライブに行くことに。


 

 待ち合わせは最寄りの駅。

 もう、この時点でいつもと雰囲気が異なった。

 なんか外国人とかが紙をもってずらっと連なってる。

チケットを譲ってくださいって書いてある。態々外国からか。本当に凄い人気みたい。


「あ、お姉ちゃん」

「お、白頭巾ちゃん。良かった、合流できたね」


 人は多かったけど、やはり白頭巾ちゃんは独特だったからすぐ見つかった。

 いつもは白いレインコートなんだけど、今日はピンクの猫耳パーカーを着ている。

 他にも同じようなピンクの服や、お揃いのTシャツを着てる人が周囲には大勢。

 ファンの人をプリズナーっていうらしい。

 女性も多いね。僕達の他にもかなりいる。

 

「はい、これお姉ちゃんの分。着替えて」

「へ?」


 白頭巾ちゃんもとい、猫頭巾ちゃんは僕に、お揃いのTシャツと長めのタオルを手渡した。


「事前にお姉ちゃんの分も購入しといたの。これで参戦するよ。あ、ちゃんとBDは見た? 曲も覚えた?」 


 荷物の中身は、これから行くライブの元となるアニメやCDだった。

 前に白頭巾ちゃんと一緒に見に行った映画のアニメだね。

 ラヴァープリズン。通称ラヴァプリ。取り壊し寸前の刑務所を、九人の受刑者が集まってアイドルとなり、それを阻止するって、やつ。

 一期、二期、劇場版、CDもベストが三枚、そしてそれに収録されてないシングルが数枚。訳も分からないまま、全部見たし、聞いたよ。


「うん、一応、全部見たけど・・・・・・」


「じゃあ、どのシーンが良かった? 私は、やっぱり2期9話のライブ前に刑務所が火事になって、そこで他の受刑者が集まってメンバーのために必死に消火活動をやってなんとかライブに間に合ったやつっ!」


「あぁ、あそこ良かったね。僕は、一期の最終回で、釈放されそうになった雛ちゃんを、主人公の火影ちゃんが引き留める所かな」


 なんだかんだで面白かったから一気に見ちゃった。そんな話をしながら会場に向かう。


「しかし、凄いね、ここでやるんだ」


 そこは普段プロ野球が行われてる、ドーム球場。とんでもない広さ。


「うん、このライブ、ファイナルなんだ。だから、どうしても見たかったの・・・・・・」


 あら、シュンとなっちゃった。よっぽど好きだったんだね。


「じゃあ、しっかり楽しんで見届けなきゃだね」


「うん」


 チケットを出し荷物チェックを終え中に入る。僕は野球には興味がないから初めて入ったよ。

 場内に足を踏み込める。

 おお、思わず声が出ちゃった。あっちの奥まで一面が客席だ。広いなぁ。人が豆粒。

 ここが、観客で埋まるのか。


「お姉ちゃん、こっち。係員が案内してくれるって」

「あ、うん」


 2階席かな、それとも一階? 

 そう考えながら係員について行くと、一番下まで階段を降り、そしてゲートが開かれた。

 

「中に入るんだ?」

「うん、私達の席はアリーナだから、近いといいなぁ」


 アリーナ。野球だと選手がプレイする所だね。どんどんステージに近づいて行く。

 僕達の席は、ステージも近く、隣はすぐ中央に続く通路があった。


「あああ、やばいよ、お姉ちゃん。近い、近いよっ」

「うん、良かったね。これは良く見えるよ」


 白頭巾ちゃんが飛び跳ねてる。アリーナはライブによって席が変わるから、直前までどこだか分からなかったみたい。どうやら相当いい席を引き当てたんだね。


「さ、お姉ちゃん、準備しよう。はい、これラヴァーブレード。ボタンで色が変わるから、ちゃんとイメージカラーに合わせて使ってね。ウルスラだと瞬時に変えていくから」


 白頭巾ちゃんが、腰に何本もそのブレードがささったベルトを装着しはじめた。

 おいおい、なんだ、どこのジェ〇イの騎士だよ。


「あ、すいません~」


 ん、隣の席に女性二人が来た。僕とはまた別な意味で場違いな格好をしてる。夜のお仕事をしてるようなお色気満点な感じ。この人達も見るのか。

 そう思ったら、その女性達も、ピンクのTシャツに着替え、ブレードを両手に持ち準備を始めた。あ、ガチの人でした。


「お姉ちゃんは誰推しだっけ? 私は輪廻ちゃんと花梨ちゃんっ!」

「あ、僕は賢そうで可愛い、利恵智ちゃんかな」

「じゃあ、北ちゃんだね。私はルッピーとトナ子ちゃんが近くに来たら、多分おかしくなるからっ」


 いや、おかしくならないでよ。中の人の事か。白頭巾ちゃんが周りの人に迷惑がかからないように、僕がちゃんと見てなきゃだね。



 そして、始まったライブ。

 地響きの様な歓声。

 会場を埋め尽くすオレンジの光。

 キャストのコメントで僕も目頭が熱くなる。


 振り付けなんかは白頭巾ちゃんの見よう見まね。

 えっと、鞠ちゃんが赤で、空ちゃんが青で・・・・・・。

 それでも、5時間ぶっ続けのライブを楽しんだ。


 途中、メンバーが振り付けを教えてくれる場面があったけど、僕達のすぐ近くに雛ちゃん役のクッチーが。ルッピーとトナ子ちゃんが来たらおかしくなるって言ってた白頭巾ちゃんは、クッチーでもかなりおかしくなってた。ギャーギャー言ってたよ。ていうかメンバーが近くを通るたび、誰だろうが絶叫してた。


 そして、アンコール。

 最後の曲。

 

「うわ。すごい装置だね、これあれか・・・・・・」

「うん、劇場版の最後と同じだよっ」


 巨大舞台装置が現れ、そして歌い出す。

 メンバーが泣いている。僕もつられてほろり。白頭巾ちゃんは号泣していた。


 その時、僕だけが気づいた。

 周囲は見上げるようにメンバーを見ていたから。


 近くの観客の一人が感極まって、柵を乗り越える勢いだった。

 これ、やばいぞ。あっち側に行っちゃうかも。

 わき上がる危機感。

 でも、その時、凄まじいほどの気迫が、一直線、その男だけに突き刺さる。

 な、なんだ。会場を包み込むメンバー達が出すオーラを縫うように。

 葵ちゃんや円が出す殺気よりさらに強く鋭い。体中を振っていた男の体が肩を落としてピタリと止まった。

 

 その後、何事もなかったようにライブは終了した。さっきちょっとした騒ぎになりそうだっったのに、誰も気づかないまま。

 でも、良かった。無事にファイナルライブは幕を閉じた。


「あああああああ、ありがとーーーーーーーありがとーーー」


 白頭巾ちゃんが隣で泣きながら連呼してる。

 終わってみて改めて思う。

 これだけの数の人を惹きつけ魅了する。

 正直にわかな僕だったけど、この場にいれた事を白頭巾ちゃんには感謝しなきゃ。



「おい、リョナ子。なんだ、お前も来てたのか。まさか、リョナ子もプリズナーだったとは知らなかったわさ」


 帰り際、声をかけられた。そこで先ほどの気迫の主が誰だかわかった。


「うわ、お千代さん。あぁ、貴方だったんですね。さっきの」


 そうだよね、あんなハイレベルブレイカーや先輩以上の気合いを出せるのはこの人くらいしかいないか。

 それにしても、全身ピンクだね。夢中になるものに歳は関係ないとはいえ、流石にこれは。

  

「OTIYOっ!? OTIYOだっ!? あの伝説のプイズナーのOTIYOっ! なに、お姉ちゃん、知り合いなのっ!?」


 えぇ・・・・・・有名なの。この人。


「わ、私、スノーホワイト、で、です。OTIYOさんとは、あの、その、輪廻ちゃんや花梨ちゃんイベントでよく上位を・・・・・・」


「ほう、お前さんがスノーホワイトか。私にポイントで何回か勝ってる数少ないプリズナーだよ。こんな可愛い子供だったとはな」


 プリラヴァのゲームでの話かな。ゲーム上ではこの二人知り合いだったのか。


「こ、光栄です。今日は、メンバーにも会えて、その上OTIYOにも会えるなんて・・・・・・」

 

 敬語使ってるよ。そんなにこの全身ピンクのお千代さん凄いのか。


「おい、リョナ子、お前だけが気づいたな。さっきトラブルになりそうだった事は誰にもいうなよ。これだけ巨大なコンテンツだ、それだけ迷惑なファンも混じってくる。そういう一部が他のファンの評判にも繋がる。メンバー自体にもだ。メンバーの有終の美をそんな事で汚されてたまるかいな」 


「あ、はい。わかりました」


 う~ん、この二人、本当にこのラヴァプリを愛しているんだなぁ。

 ここまで夢中になれるものがあるなんて羨ましい。



 そして、僕達は会場を出る。


「雨降っとる・・・・・・」


 傘持って来てないよ。


「お姉ちゃん、この雨は、メンバーとそしてプリズナー達の涙だよ・・・・・・」


 隣で、凄くいい顔で白頭巾ちゃんがそう呟いた。


「う、うん。そうだね。じゃあ、帰ろうか」


 こうして、人混みの中、雨に濡れながら順番を待ち、すし詰めの電車に乗り込み、押しつぶされながら僕らは家路に帰る。


 とにかく疲れた。

 でも、白頭巾ちゃんも楽しんだみたいだし。

 僕も柄にもなく、飛び跳ねたり手を振ったりして熱狂できたよ。

 これは明日あたり体中痛くなりそうだけど、普段の溜まりに溜まってたストレスが抜けていった気がする。

 

 とりあえずありがとうございました、だよ

 作中の柵うんぬんのような事は勿論、実際はありません。

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