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うん、やっぱり僕が一番まともそうです。

 リョナ子さんの猫がいなくなったらしい。


 学校の帰り、電車を降り改札をくぐった所で目黒さんから連絡がきた。

 隣には僕に寄り添う妹のタシイもいる。


 どうやら猫探しを一緒にして欲しいとのこと。

 僕は了承し、目黒さんと待ち合わせる事になった。


「お、シスト君、おかえりー。突然でごめんねぇ」


 駅構内の人混みでも一目でわかる。目黒さんの異質な存在感。

 まるでそこだけ黒く塗りつぶされているかのよう。

 

 眼球アルバムと呼ばれる彼女は、その名の通り眼球をこよなく愛し集めていた。

 彼女が目を取り除く様を見た事があるけど、それは見事だった。千枚通しでこうくるっと。

 とにかく凶悪な異常性愛の殺人鬼。


 そして、隣の妹も。


「リョナ子さんって、あれでしょ、特級拷問士だっけ? この前、おにねー様と一緒に閉じ込められた」


「うん、元々アタシの知り合い。飼い猫が逃げたんだって。だから、探してあげようかと」


 彼女の言葉に、僕の腕に絡まるタシイは明らかに不満げだった。


「私はその人に会ったことないけど、そこまでする必要あるの? おにねー様が自ら動く事かなぁ」


 ツインテールを上下に揺らして頬を膨らませている。


 この妹も、目黒さんに負けず劣らずかなり頭がおかしい。我が妹ながらたまに身震いがする。

 九相図の殺人鬼。無差別に捕まえてきた獲物を自宅に監禁、そして拷問しながら日々観察している。死んだ後もそれは続く、死体の腐っていく状態を撮影したり、絵に描いたり。実際には僕を除く家族ぐるみでやってるんだけどね。


 だから、ここで正常なのは僕だけだ。

 僕は人に危害を加えたり、ましてや殺すなんて考えられない。それは虫でさえも同じ。

 でも、なぜかこうやって周りには殺人鬼達が集まってくるのだ。

 自分ではわからないけど、なにか惹きつけるものでも出しているのだろうか。

 そして、それは僕だけではないようだ。

 リョナ子さんと僕はよく似ている。同じように殺人鬼に好かれる体質。


「タシイも会えば、多分気に入ると思うよ。とても魅力がある人だ。きっと助けて良かったと思うだろう」


「・・・・・・ふ~ん。まぁ、おにねー様と目黒ちゃんが気にかけるような人だもんね。ただ者ではないと思うよ。私も興味はあるからやぶさかではない」


 タシイもしぶしぶ協力してくれる気になったようだ。

 そうなれば、早速行動を起こそうか。


「タシイ、まずは知り合い関係を当たるよ、全グループを対象に問いかけよう。僕のいう通りに送信するんだ」

「は~い」


 僕とタシイは携帯を取り出す。

 リョナ子さんの事だ、深緑深層にはすでに相談しているだろう。

 正攻法はあっちに任せて、僕らは僕らのやり方でいく。

 

〈○○付近。白い猫を探しています。心当たりがある方は返信を。選別のため情報以外の返信はご遠慮ください〉


 僕とタシイはいくつもの名前でコミュニティを持っている。

 まともな友人から、少し変わった奴らまで。

 

 深緑深層とはまた違った力を駆使する。学生は学生ならではの方法もあるんだ。


 ピロン、ピロンと僕達の元へ、すぐにいくつかの返信があった。

 その中にあった、一つの情報に目をつけた。


 最近、頻繁している動物虐待の件に巻き込まれた可能性があります。犯人は学生の線が濃厚。そちらも考慮してください。


 ん~。これは誰だったろう、昆虫採集部、こんなコミニュティ入ってたかな。まぁ、それはこの際いいか。


「タシイ、送信内容を変える。これはもしかしてのんびりもしてられないかもしれない」


 ただの猫探しではすまないかも。迷い猫を見つけるだけなら深緑深層だけで事足りる。しかし、あの彼女が動いていてまだ見つかってないとなると。


 今度は、動物虐待をしてると疑われる人物を洗い出そう。


 的を絞って送信、しばらくすると、曖昧な情報に混じり有力なものが飛び込んでくる。


〈私の学校にいる生徒が、殺した猫の画像を自慢げにクラスメイトに見せてるという噂を耳にしました。あくまで噂です〉


〈うちの学校の奴らなんだけど、なんかそいつらが野良猫とか鳥とか捕まえてる所を見たって友達がいってたよ。なんか袋にいれてどっか持ってくみたい。どうするかは知らんけど、もしかすると〉


〈あ、私知ってるかも。私の友達がいる学校なんだけど、なんか最近の虐殺事件はどうもそこの生徒がやってるって話だよ。なんかやばそうな奴らだからみんな関わらないようにしてるみたい〉



 いくつかの関連情報を統合していくと信憑性が増してきた。よし、手がかりは得られた。ここまで来れば特定は容易い。返信者に詳細を聞こう。


 学校名を知り、そこからさらに同じ学校に通う学生に聞き込む。

 今の時代、個人情報はかなり透明化している。

 アイコンに自分の顔を表示させてる人も多いしね。

 自ら情報を曝してくれる、本当に助かるよ。


「・・・・・・目星はついた。○○高の生徒が怪しい。よく溜まり場にしてる場所があるみたいだ。そこに行ってみよう」


 何人かのグループらしい。素行が悪く、万引きや暴行事件などもよく起こしてる。

 そいつらの一人のSNSを見つけた。

 これで顔も仲間もある程度掴んだ。


〈今日もこれからストレス解消しま~す〉


 数十分前の書き込みだ。どうしても連想してしまう。これは本当に急がないと。


「タシイ、目黒さん、ちょっと急ごうか。胸騒ぎがするよ」


 こうして僕達は、やつらの溜まり場に足を向けた。



 そこは町から少し離れた廃工場。

 人気は皆無に近い。いるとしたら。


 近づくと数人からなる声が建物の中から外へと漏れていた。割れた窓からそっと中の様子を伺う。

 そこには。


「きゃはは、これどっかの学校の校門に飾っておこうよー」

「いいねぇ、大騒ぎになんじゃね? でかいニュースになるっ」

「俺らやべくね、まじでやべぇ奴じゃねっ」


 奴らの足下に血だまり、その中に首がない猫の死体が数体。

 小さな頭だけが、男達の前に曝されていた。


 ・・・・・・遅かったか。

 

 その光景を見た僕はどう思ったのか。

 自分でもよくわからない。なんだろう。この気持ちは。

 僕の家族がいくら人間をいたぶろうが何も感じなかったけど。

 今は少しだけ別の感情が湧き出る。

 単純には言い現らせない、複雑なもの。

 彼女がこれを見たらどう思うか、それは想像に容易い。

 

 とにかく、一つだけ確かに分かる不快感。


「・・・・・・二人とも、行くよ」


 僕達は、そのまま中へと入った。

 学生達は突然現れた僕達にすぐに気づく、と同時に驚いたようだったがすぐに威嚇の表情に変える。

 相手は3人。男二人に女が一人。


「あぁ? なんだ、てめぇら」

「ん、あの制服、あれじゃね、金持ち学校の」

「おいおい、お坊ちゃん、お嬢さんが、なんか俺らに用かよ?」


 奴らは手に血がついた鉈を持っていた。

 それで、その子達を傷つけたのか。


「タシイ、目黒ちゃん。あいつらの声、ひどく耳障りだ。どうにかして欲しいな」


「は~い、おにねー様の仰せのままにー」

「いいよー。でもその目はいらないなぁ、取り除いたら踏みつぶしてあげるぅ」


 目黒さんが千枚通しを取り出す。

 タシイが背中からバールを引き抜く。


「あ、なんだ、なんだ、意味わかんねぇぞ」

「やんのか、あぁ?」


 だから耳障りだって言っている。

 でも少しだけ我慢しよう。

 すぐにこいつらは喋らなくなるはずだから。


「ねえねえ、女の子いるじゃん。あれ、私がやっていいかな」

「いやいや、あの目はアタシが味見するよ」


 どうやら、二人の興味は紅一点に注がれた。

 少し化粧が濃いけど、整った顔をしている。


「じゃあさ、とりあえず男をやっちゃおう。話はそれからに」

「そうだね、楽しみはとっておこうか」


 二人の黒い視線が、男達に移った。

そして・・・・・・。


「ほらっ、ほらっ、ほらぁぁ」


「うっ、ううっ、うっ」


〈タシイ活躍中〉


 

〈目黒ちゃん活躍中〉


 

「普通はここで終わるんだけどね、シストくんが耳障りっていうんだ。だからその舌も引っこ抜こう。生憎今は刺すものしかない。だけどミシン目のように何度も連ねて穴を開けていけば取れるよね」


 唯一、無傷の女が一人。その様子を戦慄の表情で震えていた。

 恐怖で尻餅をついて、動けない。


「あ、あ、あ、なに、なんなの、あんたら、ちょっ、ちょっと、洒落になってないんですけど」


 あはは、この女子生徒は面白いことをいう。

 僕にすれば君達のほうがよっぽど洒落になってないよ。


「もう少し、黙ってそこで待っていてくれ。それにしてもなにかを壊したいなら積み木でも詰んで崩せばいい。とても幼稚な君達、とても同じ年代とは思えないよ」


 しかし、この結果はリョナ子さんには伝えないほうがいいかな。

 ここで、僕達がうまく処理しよう。


 そんな事を思っていたら、いつの間にか全身に鳥肌が立ち始めた。

 はっと、建物の外を見る。

 なにかが、近づいてくる。


 目黒ちゃんとタシイも動きを止めて、僕と同じ方を見た。


 その姿を見て、妙に納得できたよ。

 僕の知ってるかぎり、こんな感覚にさせられるのは君達くらいだろう。


「・・・・・・猫は?」


 金の髪が逆立ってる気さえする。

 眼帯とは逆の目が激しくこちらに向けられる。


「・・・・・・僕達がここに来たときには、もう・・・・・・」


演技ではない、本心から僕は肩を落として見せた。


 二人は中に入ると、恐怖で戦く女の元へと一直線に向かう。


 へたり込む女の髪を掴むと、彼女は女と目をしっかり合わせた。


「ねぇ、こいつは私達がもらってくよぉ。いいよね?」


 僕には断る理由もない。


「ええ、どうぞ。ご自由に」


 これは、この子に同情を禁じ得ないよ。ここで目黒ちゃんやタシイに殺られた方が随分ましだったろう。


「うくく、今の私達はすっごく、気が立ってる、ただじゃ死ねない、ぞ。お前のせいで途中で、遊びが終わった。その分、お前で晴らしてやる、やるのだ」


「薄く、薄く、少しずつ肉を削いであげる。何回も、何十回も、何百回も・・・・・・」


 二人は、女の髪にしっかり指を絡ませて、そしてどこかに引き摺っていこうとしてんだけど。


「おいおいおいおい、なんだ、お前ら、いきなり来てさ」

「そいつは、アタシ達のデザートだ。なに、勝手に持ち去ろうとしてんの~」


 僕側の二人がそれを見過ごさなかった。


「・・・・・・さっき言ったよね、私達は今気が立ってるって。ちょっと黙っててくれるかなぁ」

「うくく、今の姉御に逆らわない方がいいぞ、別に私はお前らでもいい、いいけどど」


 うう、息が詰まる。とんでもない威圧感。

 でも、目黒ちゃんとタシイは動じてない。


「はぁ? じゃあその女に選ばせようよ、私に顔をグチャグチャに潰されるのとー」

「アタシに目玉をくり抜かれるのー」


「そして、あんたらに切り刻まれるのー、どれが、いいかさぁぁぁあ!?」


 四人の殺人鬼の顔が、涙と鼻水で化粧が落ちた女子生徒に向けられる。


「だってさ、正直に言った方がいいよ。何百回と体をスライスされるほうがいいって」

「そうだぞ、姉御に殺してもらえるなんて名誉だ、誇りだ、羨ましいことだ」


「い、いあ・・・・・・帰して・・・・・・お願い、お願いだから、許して・・・・・・もう絶対、こんな、こと・・・・・・しないか、ら。ねぇ、助けて・・・・・・」


 女子生徒はこの期に及んで命乞いを始めた。どう考えても君はもう詰んでるよ。


「あははー、帰れる、許される、助けてもらえる。その選択肢は君にはない。君が選べるのは、どの殺され方がいいか、だけだよ。早く決めてよねー」

「こっちの方がいいぞ、ただ目が無くなって、顔を潰されるだけだし」


 目黒ちゃん達も喋りながらも少しずつ距離を詰めている。


 僕ならこの四人に睨まれてたら発狂するね。自業自得とはいえちょっとだけ女生徒には同情してあげるよ。


 狂気が渦巻く中、それをさらに包み込み上書きする事態が起きる。


 また、誰かがここに近づいてくる。


 ここにいる中で僕だけが漠然とそう感じた。

誰だ、この四人の中にズカズカと入っていける人物なんて早々いないはず。


「おーい、猫はここだろ。どこにいる」

「・・・・・・・・・・・・早く、お姉ちゃんのとこに連れていかなきゃ」


 剥がれたトタンの隙間から顔を出したのは、妙齢の女性と、小さな女の子。

 この組み合わせ、もしかして。


「ん~、あれ、リョナ子ちゃんの先輩さんじゃない」

「ほうほう、じゃあ隣のはレッドドットか、初めて見た、んだよな、なんだ、あれ、ホントに子供か、お子様かっ」


 顔見知りだったドールコレクターが答えを告げた。

 やはり、そうか。あれが深緑深層が言ってた第三勢力。


 元特級拷問士で、リョナ子さんの直属の先輩であり、師匠的な存在。現法に不満を感じ、独自の執行を非合法で行っている。拷問のスペシャリスト。

 そして、隣の白いフードをかぶったのは、通称白頭巾のレッドドット。史上最年少のレベルブレイカー。

 まさか、この人達まで猫探しに加わってたとは。


「あぁあ、誰ですか、このおば様ぁ。こっちは今取り込んでるんだよねー」

「あ、でも、あの子供の目はいいね、欲しいかも。あの歳であんな目は中々ない、レアだ」


 素性を知らない、目黒ちゃんとタシイが絡んでいく。

 普段、この二人が威圧したら大抵の人は本能的に怯むんだけど。


「なんだ、糞ガキ共、質問してるのは私だぞ、さっさと答えろ」


 物怖じするどころか、軽く受け流すと反対にこちらを暴圧してきた。


「・・・・・・なんだ、この人。もしかしてドールコレクター達よりもやばい?」

「う~ん、結構色々な殺人鬼や拷問士を見てきたけど、ちょっと格が違うかも」


 目黒ちゃん達もすぐに彼女達を脅威と認定した。


「・・・・・・あぁ、遅かったのか」

「・・・・・・嘘。これじゃ、お姉ちゃん、悲しむよ」


 中々帰ってこない答えを、二人は自力で導いた。男達の死体を無視して、小さな猫の亡骸を見つめていた。


「・・・・・・その女子学生がやったのか? うちの可愛い後輩の猫を・・・・・・」

「・・・・・・許さない。絶対。私がお姉ちゃんの怒りを晴らしてあげる」


 鋭すぎる視線が、女生徒を襲う。


「そいつは私達に寄こせ。特級の拷問を与えてやる」

「私も手伝うよ、何日も苦しめるんでしょ」


 あらあらこれは、やばい。6人が獲物を取り合う状況になってしまった。

 譲り合いなんて言葉をこの人達が持ち合わせているはずもなく。


「これは、私達が貰うんだよぉ。文句があるなら力ずくでどうぞー」

「ちゃんリョナさんのために、私達がやる、お前らにはやらん、やらんのだ」


「最初に目をつけてたのは、私達なんですけどー、なんなの、まじで、顔潰すよ?」

「そうだ、後から来て、勝手に横取りか、窃盗だぞ、窃盗罪で両目とっちゃうぞ~」


「はっ、お前ら全員、元々私の執行対象だ。ここで纏めて罪を償わせてやる」

「ねぇ、拷問するなら殺しちゃ駄目だよね、なかなか難しいけど、頑張ってみる。お姉ちゃん達覚悟はいいかな」


 あぁ。もう僕は知らない。ていうか止められない。

 もうこうなったら、後はバトルロイヤルの殺し合いになるのは必死。

 

 三者三様、これでもかと殺気を送りつけてる。

 六人の内、誰かが動いたら火蓋は落ちる。


 阿鼻叫喚、それが始まる刹那の出来事。目黒ちゃんとドールコレクター、その同時に電話がかかってきた。

 警戒しながらも、二人は着信に応じた。


「・・・・・・もしもし、なに蓮華ちゃん」

「・・・・・・もしもし、あ、リョナ子ちゃん」


 二人の相手は深緑深層とリョナ子さんか。ん、このタイミング、もしかして。


「え、猫が見つかった? 家の近くで無事保護したの、それは良かったよぉ」

「そう、それは良かったね。じゃあ、アタシ達も戻るよ、うん、全然いいよ。また今度ね」


 どうやら、ここにある猫の死体にリョナ子さんの飼い猫は混ざっていなかったみたいだ。

 その事実だけを考えると、少しだけほっとした。


 沸点まで上昇していた六人の熱が、一気に冷めていくのが見て取れた。

 よし、これならいけるか。

 僕は手を叩きながら、六人の輪の中に足を運んだ。


「はいはい、皆さん、これで頭が冷えたようですね。その子はもう誰でもいいから、さっさと殺しちゃってください。元々皆さんの目的はリョナ子さんの猫を探す事です。だから僕達はこれで失礼します。近いうちにまた会いましょう。深緑深層にもそうお伝え下さい」


近々行動を起こすつもりなのに、ここでうちのダブルエースを失うわけにはいかない。

 今が三つ巴の状態になってむしろ良かった。

 下手に手出しすれば、どこかが漁夫の利を得る。

今回は、僕達から引き下がりますので、見逃してもらいますね。


 ついでに後始末もそっちにお任せします。

 深緑深層も今回は色々目を瞑ってくれるはず。

 この学生達も、自分達がニュースになって大騒ぎになるなら本望だろう。


「あ、おにねー様、待って」

「シストくんがそういうんじゃしょうがない。そんじゃ、みんなまったね~」


 息苦しかった室内を出て、外の空気を肺いっぱい取り込む。


「はぁ、別の意味で疲れた。そしてお腹すいたなぁ、どっか寄ってこうか」


「おにねー様の行くとこならどこでもついてくよっ」

「今日は、アタシがおごるよ。しかし、ドールコレクター達は、相変わらずやばいわ。ちょっと並の殺人鬼のレベルじゃない。そんで後から来た奴らなんだあれ、殺人鬼とも殺し屋とも違う独特さ、アタシが目を離せなかったのはこれが初めてだ」


 目黒さんですらそういうんだから相当だよね。


「それにしても犯罪者クラブの審査を利用して、ドールコレクター達を深緑深層から遠ざけたのに全部無駄になっちゃったなぁ。ま、こんな小細工最初から効かないか」


 囮になるように、一人送りこんだんだけど連絡がない。あの分じゃすでに殺されちゃったか。 深緑深層にとって、どうでも良かったのかもしれない。

 あの二人の相手をできるのは、それこそここにいる二人くらいだし。


 そう考えると、猫探しもそもそもおかしい。

 同時にあのメンバーがあそこに集まったのは偶然ではないね。


 深緑深層が全部お膳立てしてたんだ。

 審査に向かったあの二人は目的なんてそっちのけで殺しを楽しむ。だから足止めしてるその間に僕は行動を起こそうとおもってたんだけど。事前に悟られたみたい。


 深緑深層はすぐに猫を見つけていた。でもその過程で偶然にも野良猫の拉致現場を見つけてそれを利用したんだ。

 彼女は僕達の行動を監視してるからね。


 まずリョナ子さんに誤情報を与えて目黒さんの元へ誘導する。

 リョナ子さんと仲がいい目黒ちゃんが猫探しを手伝うだろうと予想できた。


 ドールコレクター達をリョナ子さんの名前を出すことによって急いで戻す。普通に戻れを言っても、彼女達は無視してまだ遊びを楽しんでたはずだしね。


 どこかのコミュニティーに紛れ僕達にも情報を送りあの場所におびき寄せる。勿論、ドールコレクター達にも直接伝えたのだろう。


 こうして、僕達は鉢合わせる事になる。

 そうなると、後はぶつかるしかない。


 リョナ子さんの事で激昂しているドールコレクター達を僕達が仕留められたか、今は正直わからない。でも、双方ただでは済まなかっただろう。

 これを彼女は部屋を一歩も出ずにやるんだから、参りますね。


 唯一の誤算は、リョナ子さんの先輩が介入してきたことか。

 あれで、戦局は彼女でもよめなくなった。もしかしたら一方的にこちらの戦力が失われるかも。そのリスクを考慮して、すぐにドールコレクターに連絡を送って興を冷めさせた、こんな所かな。 


「ふ~む、やはり一筋縄ではいかないか。正面から堂々とぶつかった方がいいかもね。下手に小細工すれば裏をかかれる」


 なにはともあれ、リョナ子さんの飼い猫が無事に見つかって良かった。


 しかし、凄いよね。

 貴方にとっては大切な家族かもしれないけど、他の人にとってはただの猫一匹。

 それなのに、これだけの殺人鬼や国家機関が一斉に動き出す。リョナ子さんのために無償でだ。

 僕にとって、深緑深層、ドールコレクターや切り裂き円、仲間の殺人鬼に加えて元カリスマ拷問士、その全てより貴方の方がよっぽど恐ろしい。

 女子生徒は先輩が持って帰りました。超脱線しましたが、次回リョナ子に戻します。

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