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なんか、久しぶりな気がするみたい。

 こんにちは、リョナ子です。

 なんてね。


 なんか久しぶりに仕事をするような気がするよ。

 実際はそんな事ないのに、何となくだけどそう思うの。


 しかし、今日も眠いね。

 一日48時間あればいいのに。そしたら半分は寝ていたい。


今はいいけど、これからどんどん寒くなる。

 暑いのも嫌いだけど、寒いのも同じくらい嫌いなの。

 布団から出るのが本当に辛い。がんばって起きて部屋を出て冷たい風を浴びるとまた気分が滅入る。


 僕は花粉症ではないけど春ってなんだかんだで寒いし、やっぱり今の季節が一番過ごしやすい。


 気怠い体を首を回しながら、少しずつ仕事モードに変えていく。

 コンクリートの部屋。ここはいつも静か。

 それは罪人が運ばれてくるまでだけど。

 

「さて、今日は三件か。どれどれ・・・・・・」


 レベル1とレベル3、そしてレベル4。

 順々にやっていきましょうかね。


 まず、朝一に運ばれてきたのは、一人の若い女性。低レベルって事で、目隠しと手だけが縛られていた。

 彼女を見たのち、書類に目を通す。

 罪状は、幼い我が子にタバコを吸わせて児童虐待容疑でレベル1。


 確認するなり溜息が出た。

 どうしてこう猿以下の人間が多いのか。

 子供は玩具じゃないんだよ。小さい子は自分の意志で出来ることは少ない。だから保護者ってのがいるんだ。守って、教えて、愛を与えなきゃなんだよ。じゃなきゃその子供もまた同じように育ってしまう。負の連鎖。


「あ、この人はもうあれだ。三階の密閉室に運んで。そこでたっぷり煙を吸わせればいいよ。時間はそうだね、倒れるまでやればいいかな」


 職員にそういい追い戻す。

 

「あ、次ここに来たら、僕が直接執行してあげるよ。今回の罰は警告だ。今度は体に教え込む事になるから、できるなら人として生きることを進言するよ」


 出て行く女にそう声をかける。

 二度とここには来て欲しくないね。


「はい、次呼んできていいよ」


 程なく連れてこられたのは、中年のおばさん。

 これも同時に書類へ目を移す。


「ふむふむ、具合も悪くないのに救急車を無駄に400回も要請。ついた救急隊に呼んでないと追い返したり・・・・・・特定の救急隊員じゃないとお前じゃないと別の隊員を殴ったと」


はぁ。本日二回目の溜息。


「固定して」


 目隠しをされたおばさんを、立ったまま手足を固定。

 口は自由なので、けっこう喚いてる。


「放せっ! なんで私がこんな目にっ! ふざけんじゃないよっ!」


 恰幅のいい体を揺らせて暴れてる。


 僕は無視して道具を探す。

 ペンチ、ペンチと。


 見つけ出し、道具を握ると、その大声で叫び開いた口に突っこむ。


「あぁあがっ」


 しっかり舌を挟み込む。


「痛かったら言ってね。すぐやめるから」


 手に力を込める。いきなり全力で握りしめた。


「あああうあがうあが、いあ、いあだあ、いだっだ」


 怒声はすぐに悲鳴に変わった。

おばさん、何か言ってるけど聞き取れない。


「え? なに?」


 緩めない。僕のペンチはこれ以上いかないほどに舌に食い込んでいた。


「ああがあいで、いでであ、いでえああぁぁぁっぁぁあ、やべろぉ、やべろぉぉ」


「ん? 痛いって言ってるのかな? またまた、嘘ばっかり。もっといけるでしょ~」


 手首を曲げる。右に左にねじ回した。

 おばさん、目から涙が、鼻から鼻水が、口からは涎が、どんどんあふれ出る。


「いでぇああ、ぼう、やべえてぇぇ、あやまぶがわぁあぁ」


「いやいや、そんなの嘘でしょ。本当は全然痛くないんでしょ? 僕は欺されないよ」


 今後は引っ張りあげる。引き抜く勢いで強く激しく。


「あぐっっっっしあうぐあがうあぐいあ!!!」


 本当になに言ってるか分からないや。

 

「ねぇ、あなたの嘘で救急車が出動してる間に、他で本当に必要としてる人がいたらどうなる。あなたのくだらない行為で本来助かるはずの命が失われるかもしれないんだ。それを考えた事はないのか。ま、ないんだろうね」


 おばさんは僅かに動く頭を必死に動かしてなんとかペンチから舌を放そうとするが、それはとてもじゃないが無理だ。


 このおばさんほどでなくても、タクシー代わりに呼んだり、たいした怪我でもないのに呼んだりって多いみたい。どの状態で呼ぶかの線引きは難しいけど、一回の出動で実際何万てお金がかかってるんだよ。救急隊員も必死だ。人命救助に日々奔走してる。行ってみてこんな仕打ちじゃ気の毒極まりないよ。


 僕は最後にグルリと手を一周させてペンチを放した。


「残りは、死んだ後の閻魔さまにでも引き継ごう。思いっきり引き抜かれるといいよ」


 おばさんは、やっと解放された事でひゅーひゅーと大きく息をしていた。


「あ、これで仕上げね」


 最後に僕はそのペンチで顔を殴りつけた。

 うん、隊員を殴ったの忘れるとこだったよ。

 舌はさすがに取らなかったけど、歯は何本か抜けたね。

 これで二件目も終わり。 



 そして本日三件目。

 僕の前には、つい最近成人したばかりの青年。

 

 罪状は、動物愛護法違反。

 最近、相次いでいた動物の切断死骸。

 その犯人がこいつだ。


 ウサギ、猫、鴨など、複数の動物を切り刻み、その死体を放置。

 頭部や、耳、腹を割いた。


「・・・・・・固定して」


 今度は溜息さえでない。

 書類を確認、現場の写真も見る。

 それを見て、僕は歯をきつく噛む。


「君が成人で良かった。おかげでレベル4だ」


 これがもし未成年だったならレベル3ほどに落ちていただろう。

 だけど、レベル4、それと5の違いは生死の有無だけだ。


 男を見ると、小刻みに震えている。

 それが僕の感情を逆撫でさせる。


「なに、震えてるの? 怖いの? 君が痛ぶった子達も同じだよ。怖かったろう、痛かったろう、苦しかったろう」


 ただ一方的に。逃げられず、助けも呼べず、抵抗もできず、やめてとも言えない相手を・・・・・・。


「いくつの命を奪った? それに対してお前の命は一つだ。しかし、お前は死刑ですらない」


 この世に生まれたのは、こんな目に遭うためではない。

 抑えなきゃ。できるだけ冷静に。じゃなきゃ僕はやりすぎてしまう。

 

 犯行動機がまた不愉快。

 無駄な動物はいないほうがいいと思ったらしい。

 そして行為に及んでるうちに性的興奮も芽生えてきたらしい。

 こういうのってこのままだと人間に移っていく場合も多いんだよね。


 「お前は殺菜ちゃんに執行された方が良かった。彼女ならお前の精神ごと壊してくれてたはずだ」


 殺菜ちゃんなら、自分が死ねっていうだろう。

 無駄な命はお前の方だと。


 性的興奮も自分の体で満たせばいいよ。

 自身の体ならサディズムもマゾヒズムも同時に実行できるじゃない。

 世界的に有名な殺人鬼もそうしてた。


 殺菜ちゃんほど僕は容赦なく執行できない。

 

 でも、僕は僕なりに君を壊そう。


「幸いにも時間はたっぷりある。ゆっくりじっくり時間をかけて執行してあげる」


 まず、ウサギにやったのと同じように(ふ~ふ~)。

 少しずつだ。

 交互に。

 切れ味の悪いナイフで。

 できるだけ長く。

 痛みを与え。

 

 次に目だ。

 少しずつ。

 白い部分から。

 黒い部分まで。


 今度は腹だ。

 中身が出ない程度に。

 胸から。

 へそまで。

 薄く。

 時には深く。


 君は、もう逃げられない。助けも呼べない。抵抗も出来ない。やめてって言っても僕はやめない。


「さぁ、いくよ。卑怯で愚劣で人で無しの君。たっぷり苦しんでくれ。たっぷり痛がってくれ。いくつもの命をその身でできるだけ償いな」


 君がしたように、僕は同じ事を君にしてあげる。


 

 床が血に染まり、僕の手も血で染まった。

 全てが終わった頃には夜も更けていた。


 夜空を見る。今日は月が出ていた、真ん丸の。


 執行後はつくづく人間というものが嫌になる。

 自分さえも愚かで汚らしいものに感じる。


 最後の執行がやはり脳裏に浮かぶ。


 ごめんね。君達の痛みはできるだけ返した。これで許してくれとは言わない。

 でも、人の全てがこんなのばかりじゃない。

 捨て犬や猫を保護して里親を探す人達だっている。

 自分の家族のように心の底から愛することができる人もいる。


 人の本質はどっちなのだろう。実のところ、今日執行した人達のほうが近いのかもしれない。

 それでも、僕は穏やかな世界を望む。

 幾千の罪人を裁こうが。

 幾万の罪を目にしようが。

 人はいくらでも残酷になれるけど、いくらでも優しくもなれるはずだよ、きっとね。


 帰ったら飼い猫のソフィをいつも以上にかまってあげるんだ。

 僕は君のお腹を撫でるとき、本当に癒やされるのさ。


 今日は一緒に寝ようね。

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