おや、診断するみたいです。
よくよく見たら本来蓮華ターンだったのに連合編終わらせたので、今回は蓮華視点のおまけです。有名なのも多いですがサイコパス診断、もし初見でしたら一緒に考えてみてください。
こんにちは、蓮華です。
殺人鬼連合との衝突から二週間が立ちました。
残念ながら主要メンバー達はみすみす逃しましたが、とりあえず今は目立った動きはなさそうです。
相手の顔ははっきりしてます。
しかし、厄介なのはシスト姉妹? 兄弟? のお父上がかなりの大物だってことですね。
この国は執行制度のため、どうしても検察側が弱くなりがちですし、強制的に捜査してなにもでなかったらここ自体解体されかねません。
今は、注意深く監視してるしかないですね。
それはそうと、最近暑さも大分やわらいできました。
私の傷も完治まではいかなくとも、同じように随分マシになってきたのですよ。
それを見計らってか、リョナ子さんから連絡が来ました。
どうやら私達にお礼をかねて食事に誘ってくれるみたいです。
極力外出はしたくない性分なのですが、リョナ子さんの誘いとなれば別です。
こうしてドールコレクターと二人、意気揚々と指定された場所へ向かう事になりました。
高級ホテルのラウンジ。
私達がつくと、すでにリョナ子さんが先に来ていました。
こちらに気がつき手を振っています。
私も振り返すと、隣のドールコレクターが駆け出しました。残像が残るほど早かったです。
「わー、リョナ子ちゃんっ!」
飛び込むように抱きつこうとするドールコレクターをリョナ子さんは慣れた様子で遮りながら、私に声をかけました。
「蓮華ちゃん、今日はわざわざ来てくれてありがとう。・・・・・・葵ちゃんも」
「いえいえ、私もリョナ子さんにお会いできてとても嬉しいのですよ。この前はなんだかんだでお互い姿はみてませんしね」
「そうだね。でもとてもお世話になった。蓮華ちゃん達がいなかったら正直僕達だけじゃなにもできなかったよ。本当にありがとう」
「私はリョナ子さんの味方ですからね。これからもいくらでも頼ってくださいませ」
「うん、僕は足りないものだらけだ。だから遠慮なく助けてもらうし、甘えさせて貰うね」
そういい、リョナ子さんは悪戯っぽく微笑んでいました。
ふむ、なんでしょう。こういっては失礼ですがリョナ子さんは別段美人でもない。
それなのに、なぜか全力で力になってあげたいと思わせる魅力がある。
それは、勿論私だけではなく隣でニコニコしているドールコレクターも同様なのでしょうが。
とにかく改めて不思議な方です。
「ん、そういえば切り裂き円は?」
ここで一緒にお呼ばれされていた円さんが居ない事に気づいたようです。
「あぁ、彼女はなにかゲームのイベント中らしく、何周してもドロップしない、しないのだっ! 何周させる気だっ! 資材がなくなるぞっ! こなくそーっ! ってとても忙しそうでしたので置いてきました。まぁ、なにかテイクアウトしていけばいいでしょう」
「あぁ、そうなんだ。まぁ忙しいならしょうがないね。じゃあとりあえず注文しようか、なんでも、いくらでも頼んでくれてかまわないよ。いっぱいおろしてきたからねっ!」
店内は美味しそうな匂いで溢れています。
ここは遠慮するとかえって気を遣わせてしまう事になるので、好きな物を好きなだけ頂くことにしましょう。
賞金稼ぎと殺人鬼と拷問士のいるテーブルにほどなく料理が運ばれてきました。
最初は雑談しながら口に含んでいたのですが、あまりの美味しさに途中から皆無言になってしまいました。
久しぶりにこんなにお腹いっぱい食べたような気がします。
部屋を出るのもたまにはいいですね。
いつもインスタントかお菓子で済ませてますので、こうやって満足する食事なら出る価値はありそうです。
食後のコーヒーを飲みながら再び雑談に入りました。
しかし、共通の話題って案外ないですね。
今日ばかりはさすがに仕事の話はしたくないでしょうし。
あぁ、そうだ。丁度、ここに殺人鬼と拷問士というレアな職業の方達がおられるので、良い機会です。少し質問してみましょう。殺人鬼が職業かどうかは置いておきます。
「あの、少しお二人に質問してもよろしいでしょうか? 心理テストというか診断みたいなものです」
この二人はなんて答えるのでしょうか。
とても興味深い。
「ん? なにかな?」
「診断? どんなの?」
幸い二人も食いついてきてくれました。
なんの診断かは知らせないままとりあえずやってみようと思います。
「えっと。まず1問目です。あなたがある家に泥棒に入った所、その家の主人が眠りから覚めあなたの顔を見ました。するとあなたが見る前で鍵の掛からないタンスに入って隠れたんですねぇ。さて、あなたはこの後どうやって殺すでしょう?」
先にリョナ子さんが答えました。
「う~ん。無理矢理開けるとか? それとも外から攻撃すればいいかなぁ。火をつけるってのもありかも」
次にドールコレクターが答えました。
「出るまで待ってれば良いよ。出てきたら殺せばいいし」
ふむ。リョナ子さんの方は概ね一般的な答えですね。
対してドールコレクターは実に殺人鬼らしい答えです。
「では2問目です。ある男の子にプレゼントをしました。サッカーボールと自転車です。でも男の子は喜びませんでした。なんででしょう?」
これもリョナ子さんが先に口を開きました。
「もうすでに持ってたからかな」
そしてドールコレクターも続きます。
「男の子には足がなかったからだよぉ」
これはある意味ドールコレクターの方が模範解答ですね。この診断に関してはですが。
「3問目。あなたは自宅のマンションのベランダに出ました。すると男が女をナイフで刺し殺していたのを目撃してしまいました。慌てて通報しようとしましたが、その時男と目が合います。男はあなたの方を指さしながら何か言っています。なんて言ってるでしょうか?」
「なんだろう。お前を殺すとか、次はお前だ、とかかな」
「数えてると思うよ。何階にいるか階数をね」
私はなにも言わずにどんどん質問をしていきます。
「4問目。あなたの恋人は暴力的でした。付き合いが長くなり親密さが増すと態度が豹変して、金銭を貢がせたり些細なことで暴力を振るうようになったのです。結局あなたは耐えきれず彼と別れました。しかししばらくして元彼はあなたの親友と付き合いだしたのです。二人はまだ付き合いだして日が浅く深い仲にはなってませんでした。そこであなたは親友を呼び出すと、その場で殺してしまったのですね。それはなぜですか?」
「ふむぅ、あれかな。なんだかんだでまだ未練があったのかも」
「私だったら、その暴力的な男から親友を守るために殺すね。その親友をリョナ子ちゃんに置き換えた場合それしかないよっ!」
リョナ子さんはあいかわらず普通の答えですね。それにしてもドールコレクターは。
「第5問。あなたは自宅で友人を殺しました。その現場をたまたまやってきた宅配屋に見られてしまったんですねぇ。あなたはその場で宅配屋を殺しました。どうしてですか?」
「え、普通に見られたからじゃないの? 口封じ的な」
「宅配便てことはなにかに乗ってきたんだよね。じゃあ、それを奪って逃走するためじゃないかなぁ」
さも当然かのように言いますね。シリアルキラー恐るべしです。
「第6問です。あなたは親戚の葬式に妹と出席しました。そこにきていた男性にあなたはとても魅力を感じました。その男はあなたやあなたの妹の理想の男だったんですね。その夜にあなたは妹を殺してしまいました。その動機はなんでしょう?」
「そうだね、妹と取り合いになるからとかなのかなぁ」
「あれだよぉ。また葬儀で会えるかもしれないと思ったからじゃないかなぁ」
普通は思いませんけどね。
「第7問いきます。その日が嵐でした。一時的な避難場所には、あなた、死にかけの老人、自分の好みの異性、そして親友が取り残されます。そこへ車が助けに来ました。でもその車は二人しか乗せられません。そうなったときあなたは誰を乗せますか?」
「・・・・・・え~。迷うけど、とりあえず死にかけの老人が最優先で。その後待つなら親友とがいいから、残りは好みの異性を乗せようかな」
「私は死にかけの老人と親友を先に乗せるよ」
「ほう、それはなんでです?」
ここまで口を出しませんでしたが、ドールコレクターはリョナ子さんと違い、まったく迷わなかったのでつい聞き返してしまいました。
「勿論、二人きりになるんだもん。その後好き勝手できるからだよぉ」
「・・・・・・そうですか」
「では8問目。あなたの家に強盗が入ってきました。あなたは武器を持っておらず、隠れる事しかできません。あなたが身を隠すとしたら家のどこにしますか?」
「そうだね~、トイレかな。鍵もあるしね」
「私はドアの裏かな。すぐに反撃できるし、できるだけ有利な場所にするよぉ」
受け身のリョナ子さんと、攻撃するというドールコレクターは真逆の考えですね。
「9問目。あなたは人を殺したくてしょうがありません。そこで殺しに向いている職業につくことにしました。それはなんでしょうか?」
「・・・・・・いいたくはないけど、拷問士かな。医者とかでもいいけど」
「私はその条件ならタクシーの運転手だね。獲物も選別できるし、乗せちゃえばどこにでも連れて行けるもん。まぁ、職業につかなくても好きに殺せばいいのにね」
ドールコレクターに免許がなくて良かったです。まぁ彼女にそんな資格は関係ないでしょうけど。
「では最後です。あなたには殺さなければならない相手がいます。その相手があなたの前で断崖にぶら下げられ、枝のような物に掴まってようやく生きている状態でした。あなたはそれをどうするでしょうか?」
これの一般的な回答は、手を足で踏みつけるとか、切りつけるとかです。
さて、この二人はなんて答えるのでしょうか。
これはドールコレクターが先でした。
「うふふ。何か握ってるなら、その指を一本ずつ放していくかな」
そしてリョナ子さん。
私はてっきり一般的な答えをいうと思い込んでいたんですが。
「引き上げるよ。そして拷問してから殺す。僕が殺さなければならない相手ってのはそういう事だよ」
ゾクリと背筋に冷たいものが走りました。
明るい空が一気に暗雲に覆われるかのように。
ここまでいたって一般的な答えでした。
でも拷問士の、それも特級の方が普通なはずなかったです。
表面上ではわからなくても、その奥底にどれだけの闇が詰め込まれているのか。
それが少しだけ顔を出したのでしょう。
「で、これなんの診断だったの?」
「あ、えっと、あれです。サイコパス診断というか凶悪犯罪者診断というか。もうドールコレクターは予想を裏切らないお答えでした。リョナ子さんはほぼ一般的な解答でしたね」
私がそういうと、ドールコレクターは誇らしげに、リョナ子さんはほっとした様子を見せました。
これを第三者がやったとしたら、どちらに寄るのでしょうかね。
最悪の殺人鬼、ドールコレクターに近いか。
それとも特級拷問士のリョナ子さんに近いのか。
ただ、リョナ子さんに関しては質問を変えたら私の予想外の答えを出してくるかもしれませんね。
もし、ドールコレクター寄りだったのなら。
どうか、殺人衝動が湧いても抑えて頂きたいものです。
じゃなきゃ私が捕まえる事になっちゃいますよ。




