うん、近いうちまた会いたいね(対殺人鬼連合、おまけのシストサイド)
久しぶりの我が家に帰ってきた。
隣には妹のタシイ。僕の腕に寄り添っている。
きつく握るから傷に響く。
背中と足がズキズキと悲鳴を上げる。
あの後治療は受けたけど、痛みが消えた訳じゃない。
一般的な二階建ての家。
玄関を開けて中へ入ると、すぐに母親が飛んできた。
「まぁ、貴方達、一体、いままでどこほっつき歩いてたのよっ!? もう二週間よっ! さすがに心配するでしょうっ!」
母親がぷんすかと怒っている。
でも、妹が気にせずに軽くあしらってくれた。
「ごめーっん、ママ、でもちゃんと帰ってきたからいいよねっ!」
「ったく、貴方は。まぁ、いいわ。でも、あれよ、上の世話はしませんでしたからねっ!」
「え~、なんで、ママ、面倒みてくれなかったの~っ!? じゃあ死んじゃったじゃない」
「そうよ、もう腐りそうだったから、料理の材料にしちゃったわ。丁度、今、作ってたところだったわ」
「そんなぁ、あれ気に入ってたのにーー、餌くらいあげてくれれば良かったのにっ!」
「貴方がちゃんと世話をするっていったんじゃない、それなのにいっつも死なせちゃうんだからっ!」
母親と妹がそんな会話をしていると、奥から今度は父親が出てきた。
「ははは、タシイもそう文句をいうな。また新しいの連れてくればいいじゃないか。そうだ、週末にドライブがてら探してくるってのはどうだ?」
「本当? うん、また新しいの飼いたいっ! 今度はもっと小さいのがいいな。その方が世話しやすいしねっ!」
「もうあなた、いつもタシイを甘やかせすぎです。この子、すぐ飽きちゃうんだから」
「今度はちゃんとするよー、いつもより長く、ちゃんと観察もするから、ね、お願い」
「しょうがないわね。でも、お母さんも、小さい方がいいわね、それか雌よ。じゃなきゃ固くて料理に適さないのよ」
「母さんの料理は絶品だからなぁ、今日も楽しみだ」
「うん、ママの料理大好き、今日はなに?」
「今日は、モツ鍋よ。きっと美味しいわ」
三人がワイワイ盛り上がってる。
僕はとても疲れたので、会話には混ざらず部屋に向かった。
途中、父親の書斎から呻き声が聞こえた。
二階にあがり、妹の部屋を通り過ぎると、異臭が鼻につく。
この二週間は、殺人鬼に囲まれて気が滅入りそうになった。
あの中で僕だけが正常だったから。
人を殺すなんてどんな感性なんだろう、僕は虫ですらむやみに殺そうとは思わない。
今度はどんな子がこの家に連れてこられるのだろう。
男性か、女性か、大人か、子供か。
まぁ、僕には関係ない事。
世話するのも、躾けるのも、処理するのも、僕を除く家族達なんだから。
妹はよく新しいペットを僕に見せつけてくる。
猿ぐつわをされ、全身をテープでグルグル巻きにされた人間。
僕はそれが嫌だった、全身を震えさせて、僕を見る瞳が。
なにか訴えてかけているのがわかる。
それが溜まらなく不快。
僕はなにもしないよ。
危害を加えることも、逆に助ける事も。
家の地下には部屋がある。
妹の部屋には檻がある。
書斎には壁に繋がれた首輪がある。
台所には業務用の大きな冷蔵庫がある。
庭には焼却炉がある。
音楽が好きな父親はこの家を建てるとき、防音設備にした。
だから、クラシックを大音量で聞いても近所に迷惑はかからない。
元々辺境に建てたから周囲は閑散としているけどね。
妹は、観察日記をつけていた。
こうすればこうなるといった反応を試してそれも書き込んでいた。
例えば、棒で殴る行為も人にとって様々だ。
子供は泣き叫び。
大人は最初こそ少しの抵抗を見せる。
押し黙るもの、悲鳴を上げるもの、懇願するもの、皆違う。
ありとあらゆる苦痛を与え、対象が死んでも観察は続く。
今度は写真をとったり絵を描いたりする。
一日、一日、死体は別の姿を見せる。
その過程が妹にすればとても興奮するらしい。
一段階、脹相。死体が腐敗によるガスの発生で内部から膨張しだす。
二段階、壊相。死体の腐乱が進み皮膚が破れ壊れはじめる。
三段階、血塗相。死体の腐敗による損壊がさらに進み、溶解した脂肪・血液・体液が体外に滲みだす。
四段階、膿爛相。 死体自体が腐敗により溶解する。
五段階、.青瘀相。死体が青黒く変色する。
六段階、噉相。 死体に虫がわき、外に放置していた場合、鳥獣に食い荒らされる。
七段階、散相。外的要因で死体の部位が散乱する。
八段階、骨相。 血肉や皮脂がなくなり骨だけになる。
九段階、焼相。 最後に骨を焼き、灰だけになる。
そういえば、他の殺人鬼達は、妹の事をこう呼んでいたな。
九相図の殺人鬼って。
妹ほど執着するものがない僕にも二つ気になる事ができた。
僕に群がる殺人鬼達。皆常軌を逸していた。その人達でさえ問題視する深緑深層という人物。
どんな人だろうと初めて好奇心を得た。
そして初めて出会って、一目その姿を見て、僕はとても不思議な感覚に落ちた。
なんだろう、経験の無い感情、だからそれの名前は知らない。
妹がもし、彼女を捕らえたらどうなるだろう。
まずは■■で縛りあげるはず。
そして自分も■を■ぎ捨て、相手を舐め回すように、■を■りながら色々計るんだ。
大きさ、長さ、滑らかさ、じっくりと。
一通り終わると、今度は唐突に綺麗なエメラルドの髪を引き■■るだろう。
でも彼女は決して屈しない。
悲鳴もあがないだろう。
だから、妹の行為はどんどんエスカレートーしていくはず。
指先を一本一本■■■で■■いく。
でも彼女は決して屈しない。
涙も見せない。
だから、妹の行為はさらに激しくなる。
彼女は相手が泣くまでいたぶるのをやめない子だ。
そういえば彼女は傷を負っていたはず、ならばその傷口を再び引き開いて。
さすがに痛みを与えれば顔は苦痛に歪むだろう。それは精神の強さとは関係ない。
それでも彼女が屈することはない。どこまでもいっても精神的に優位に立とうとするんだ。
妹は結構すぐ頭に血が上るから、その上から見下ろされている感覚に耐えられないはず。
そうなると、暴力は荒く、強引になるかも。
単純に■に■を打ち付けるか。■を折るとか、■を裂くとか。
それとも、精神的に追い詰めるために■■を与えるか。
上や下に色々、■し■むか。
真っ赤になるまで■■をぶち続けながら。
ふと、我に返ると、僕の体の変化に気づく。
それは同時に起こっていた。固く、滑るように。
こんなことは初めてだ。
自分の妹ながらすごい事をする。
改めて妹の異常性を確認できた。
もう一度会いたくなったよ。
でも、ちゃんと話すには周りが邪魔だね。
それを排除できるようなものを今度はちゃんと揃えよう。
少しだけ、少しだけだけど妹の気持ちがわかった気がするよ。
そしてもう一つ。
目黒さんが言ってた、君はある人によく似ているって。
たしか、拷問士だったかな。
そっちもぜひ会ってみたいな。
目黒さんもその人だけには手を出すなって他の殺人鬼に言ってたくらいだし。とても興味が湧くよ。
なんとなくだけど。
近いうちに僕らはどこかで出会えるような気がするよ。
それがどこかはわからないけどね。




