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おや、全員来ましたか。(対殺人鬼連合 蓮華サイド5)

 こんにちは、蓮華です。


 今、私は赤い血が染みこんだ白いワンピースの肩紐をずらし上半身を露わに。

 両腕で胸を隠しながら、背中の治療をお願いしていました。


 場所は変わりません、少しだけ移動してすぐ横の工事現場に身を隠しました。本当なら病院に駆け込みたい所ですが、そうもいかない理由があるのですね。


 だから、ドールコレクターのシスターズ、その一人である女医さんを呼んで頂きました。


 正式な医師免許があるのかどうかはあえて聞きませんが、腕は良さそうです、手慣れた様子で傷口を縫ってくれています。


 ドールコレクター達はというと。


「うえーい!」

「ううーえ、ええーい!」


 最初にドールコレクター達の囮になって速効捕まった男達をクレーンに吊して遊んでおりました。

 レバーを操作して、クレーンの先で縛られている男をブラブラと揺さぶっています。

 もう一人は鉄柱に縛られ固定されていました。

 

「いけぇっ! あぁ、惜しいっ!」

「あ、姉御、次、私、やる、やるのだ」


 鉄柱の方を的に、男達をぶつけ合うゲームみたいですが、なかなかうまくいきません。


 ワイヤーを大きく揺らし、反動をつけて振り子のように当てようとしてます。

 ちなみに、この男達は殺人鬼でもなんでもありません、ただのバイトです。

 本当なら私は止めなくてはならない立場なのですが、しょうが無いのです、だって彼女たちが言う事聞くわけないのですから。すでにそう結論がでている以上、何も言えません。


 運命ってあるのかもしれません。

 生まれた時に死ぬまでのルートはもうすでに確定している。

 極端にいえば、もうこの宇宙が誕生した時からなにもかも先が決まっていたかも。


 量子力学的にいえば、それは否定されるかもしれません、

不確定性原理ってのがありますからね。

 でも、観測は悪魔がいないかぎり完璧じゃありませんし、確率うんぬんをいいだせば、宙に浮くことも壁をすり抜けることもできちゃいます。

 観測しない状態を観測することができない以上、結局自分の信じた方が正しいのじゃないでしょうかね。


 だから、この男達がこうやって今玩具にされてる事も、ドールコレクター達が殺人鬼になったのも、そして私が幼い頃に腹を割かれた事も全てはもう決まってたんですよ。


 そう思わないと、この理不尽な世の中で生きていけません、サイコロを振ることはないのです。


「いったぁぁっ!」

「あぁ、姉御の勝ちだ、しまった、してやられた!」


 ついに衝突することに成功したようです。

 鈍い音がしました。今ので何本の骨が折れたでしょう。

 それは、どちらでどこなのか、全く興味はありませんが。


 さて、話は戻して、なぜ私がまだここに留まっているか、です。


 答えは簡単。相手の殺人鬼を待っているのですね。


 先ほど灯さんや狂璃さんが、私達の前に現れました。

 それは、私達の行動を見ていたからです。

 

 私が、お千代さんのお店に来ることを予想していた、いや誘導したというべきでしょうか。

 本来、私達に五人の殺人鬼をぶつけるつもりだったのでしょう。

 でも、イレギュラーな事態が起こった。

 私達の前に、拷問士の面々が先に姿を見せたのです。

 まさか、そのすぐ後に私達が来るとは思わず、手を出しちゃったのですね。

 それが命取りでした。結果的に戦力は分散し、やつらは敗北しました。


 ま、五人来たとこでやられませんでしたけどね。

 

 では、誰が見張っていたか。

 それは、勿論、拷問士の顔を知ってる人物です。

 

 お千代さんのお店を一望できる場所は限られます。

 ドールコレクターはすぐにここらを閉鎖しました。

 もう、逃げられませんよ。

 貴方はすでに籠の中なのです。


 

 縫合を終え、私はなんとか立ち上がりました。

 用意してもらった、鉄製の松葉杖を使いちょっとふらつきながらです。


 そしたらですよ。丁度お見えになったようです。

 隅に現れた人影。


「あぁ、えっちゃん、ありがとう、もう帰っていいよぉ」


 クレーンから飛び降り、ドールコレクターが妹に声をかけました。

 女医さんは、小さく会釈すると、その場からそそくさと去って行きます。

 さすが、妹って自称するだけありますね、姉の目が普段と違う事にいち早く気づいたようです。


「うくく、あれか、私達に喧嘩を売った、お馬鹿、馬鹿、ぱっかは」


 私達の前に来たのは三人。

 てっきり一人かと思ったのですが、まさか纏めて来て頂けるとは。


「はじめまして、えっと、眼球アルバムさんはお久しぶりです・・・・・・そしてそちらの二人はリーダーって事でよろしいでしょうか?」


 目の周りが真っ黒のおかっぱ頭。千枚通しを手にして不気味に笑ってるのが眼球アルバム。目黒さんですね、こっちははじめましてではないです、もう何回も顔を合わせてたんですよ。まさか、私の追ってた犯罪者がこんな近くにいるとは思ってもいませんでした。 


 残り二人は兄妹でしょうか。

 顔がそっくりです。

 少年少女ですね。

 二人は茶色のブレザーを着ていました。色的に同じ制服です、ただズボンかスカートかの違いだけ。


「はじめまして。僕はシストって言います。こっちは妹のタシイ」


 ふむ、ツインテールの妹の方は、死臭がしますね。こっちは殺人鬼でしょうか。

 でも、兄の方は全く危険な香りがしない。

 普通の学生って感じです。なんとなく誰かに似てる気が・・・・・・。


「蓮華ちゃん、その子達、男じゃないよ。女でもない。どっちかに偏ってるだけだね」


 ドールコレクターがそういうと、妹の方がいきなり大声で笑い出しました。


「わー、すごいです、一目で見抜くなんて貴方なんですか、何者ですか! あははは」 


 ほう、てことはどっちもアレもあってアレもあるってことでしょうか。

 

「まぁ、そんな事はどうでもいいです。ここに来たってことは降参するって事でよろしいでしょうか?」


 もう逃げられませんからね。例え、ここで私達を殺したとして袋のネズミです。


「うん、今回は降参するよ」


 シストさんはあっさりそう宣言しました。


「ちょっと、君達の力量を測り損ねた。今度はもっとうまくやるつもり」


 う~ん、一体この子はなにをいってるのでしょう。


「今回? 今度? どういうことです、次があるとでも?」


 逃げるつもりでしょうか、それならここに姿を見せる必要はありませんよね。


「あはは、おにねーさまは、誰一人殺してない、ただの学生だもん。捕まえられる道理がないのよん。そして私達だって無実だよ」


「はい? いやいや、少なくともそこの眼球アルバムはそうとう殺してるでしょう、それで無実は通りませんよ」


「なぜ、アタシが眼球アルバムなの? 貴方が勝手にそう決めつけてるだけでしょう」


目黒さんは薄ら笑いをしながらそう口にしました。

 ほう、言い逃れるつもりですか。

 私には目黒さんが眼球アルバムだという確信があるんですよ。

 確信・・・・・・そういえば確証がありませんね。


「仮に、アタシがその眼球アルバムってなら証拠なんて残さないよ。捕まえてもいいけど立証できるのかな? 無理ならすぐに釈放だよ」


 よっぽどの自信ですね。

 これは実際なにも出てこないのでしょう。私が長年追っていても尻尾を出さなかったのですし。

 そうなると参りましたね。

 今回の殺人鬼達はリョナ子さんに生きたまま引き渡すって事になってます。

 でも、そうなると法が彼らを解放してしまう。

 裁くはずの法が、裁かれなくてはならない者を助けちゃうますね。


「うくく、そんなの私達に通ると思うのか、思ってか!」

「そうだねぇ、私の目から見てもそこの二人は危険だもん」


 後ろの二人が動きました。

 私はどうすればいいでしょう。


 判断をするとすれば拷問士側がどうするかです。


「あぁぁぁ? なんだ、アタシ達とやんのか!? これは正当防衛だ、お前達も元々死刑囚だろう、なら殺してもいいんじゃないかなぁぁぁ??」


「そうだー、殺人鬼に襲われたならやるしかないじゃないかぁー! おねにいさまは私が守るぞぉー」


 二人は千枚通しとバールのようなものを取り出し応戦しようと構えます。


 はぁ、どうしましょう。

 考えます。

 拷問士側は独自の制裁を考えてると思うのですよ。

 裁判などを通さず、楠葉さんの仇と思って全員で執行するつもりだと。

 それなら、このままドールコレクター達を止めずに殺し合ってもらったほうがいいでしょう。 瀕死でも引き渡せばいいのです。

 でも、それが拷問士達の総意とは思えません。


 リョナ子さんならどうするでしょう。

 

 それを考えた時、私に結論はでました。


「はい、終わりです。今回はそちらのいい分を聞こうと思います」


 私は、片手でドールコレクター達を制止しました。


「止めないでよぉー蓮華ちゃん。私にはわかるよ、そいつら逃がしてもなにも良いことないよぉ」

「そうだ、姉御のいう通りだ、またレンレンを襲うぞ、その前に殺したほうが、いい、いいのだっ!」


 そんなの私にもわかってますよ。

 でも、私は拷問士のファンなのです。


「ありがとう、話が分かる人で良かった。敬意を表して今度はもっといいの集めてくるよ」


 シストさんが微笑みます。

 あぁ、誰かに雰囲気が似てると思ったら、そうですか。

 彼? はリョナ子さんに近いんですね。

 不思議な魅力がある。

 殺人鬼を惹きつけ、好かれるんです。


「いつでもどうぞー。でも、気をつけて下さいね。今回、貴方達は私以外にもいっぱい敵を作っちゃいましたよ。こと、ある人達にはそんな屁理屈通じませんからね」


 たしか、楠葉さんとは同期だったと思います。

 第四勢力とでもいいましょうか、彼女達がこのまま黙っているはずがありません。


「そして私達も。今回はリョナ子さん達を立てますけど、次は知りません。塵すら残さない事ですね。少しの綻びがあったのなら、大きく裂いて、引っ張り出して・・・・・・」


 駄目です。やっぱり想像すると、笑いがこみ上げてくる。


 私もにっこりと微笑み返して、こうしてこの件を収めます。


 三人は踵を返して何も無かったかのように帰ろうとしました。


 そのシストさんの無防備な背中に。


 私はナイフをさっと取り出して、力いっぱい切り裂いたのです。


「うあっぁ」


 ブレザーとシャツ、そして背中の肉ごと斬ります。

 続けざまに、太股にもナイフを突き刺しました。


 そして、握る手をグルリと半回転。


 シストさんは、その場に倒れました。


「てめぇぇぇぇっ! なにしてんだっ!」

「おにねーーーーさまぁぁっぁっ!」


 ドールコレクター達から殺気が薄まったので油断してたのでしょう。

 そして、私は冷静だから、いきなりこんな真似しないってそう思い込んでたんでしょうか。


「シストくんがぁ、あぁ、血が出てる、いっぱい、あぁ、許さない、その目抉ってやるぅぅぅ、そして足で潰してやるんだぁぁぁ」

「いやぁ、おにねーさま、うぅ、許さない、許さない、監禁して、躾けてやる、一日中いたぶってどうなるか、観察してやる、日記につけてやる・・・・・・」


 二人は本性を現し、激昂してます。この証言だけで証拠になればいいのですが。


「動くな、蓮華ちゃんに危害を加えたら、パーツに分けるよぉ、何千個ってね」

「むしろ、かかって、こい、うくく、さぁさぁ、手をだせ、ほら、ほら」


 四人の殺人鬼達はお互いを挑発してます。この間を一般人が通ったら発狂しそうな不穏な闇が渦巻いています。

 でも、私達はいたっていつも通りです。


「いえいえ、これ以上はしませんよ。これでおあいこにしましょう、ね?」


 見下ろしてシストさんにそう告げました。


「いたぁ、うぅ、・・・・・・そうだね。了解だよ、あぁ、痛っ」


 私も一人の人間ですからね、やられっぱなしでは気が済みません。


「やられたらやり返しますからー。それだけは覚えておいてくださいね」


 今はこれで見逃してあげます。あぁ動いたら傷口がまた開いたかも。

 後は、リョナ子さんに任せますか。


 あちらはあちらで色々問題がありそうですがね。

 とりあえず、こちらはこれで一段落といった所でしょうか。


 今度は拷問士の方を巻き込まないでもらいたいものですね。

 

 私も遠慮しちゃって全力が出せないじゃないですか。


 じゃなきゃ今頃ここは血の海になってたはずなのに、残念です。

 秘技、駆け足で収束させるの術。

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