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なんか、どっちもアレみたい。(対殺人鬼連合 リョナ子サイド5)

 葵ちゃんがクスクス笑ってる。

  これは駄目なやつだ。

 

 彼女が来てくれてとても頼もしい。

 でも、それ以上に僕は恐怖も感じている。

 

 咄嗟に声を上げる。

 それは、葵ちゃんにではない。

 僕を殺そうとしていたナイトウォーカーの方にだ。


「おい、ナイトウォーカーっ! 今すぐ土下座して靴を舐めるんだっ! 一切抵抗しては駄目だよっ! 犬になりきれっ!」


 僕はこいつを生きたまま連れて戻らなくてはならない。

 今のナイトウォーカーの生存率は極めて低い。

 眼鏡で蝶ネクタイをしてる子供や有名な名探偵の孫と同じ旅館に泊まるレベルだ。


 本気の葵ちゃんに加え切り裂き円までいる。

 このコンビが一番手に負えない。

 片方が階段を上ると、もう片方も上るから暴走は天井知らずになる。

 

 このままじゃグチャグチャに解体されちゃうよ、これ。

 

 それでも僕の忠告など聞くはずもなく、ナイトウォーカーは一言も発さず葵ちゃんを見据えている。

 それなりに感じ取ってはいるみたい。

 血が滴るナイフを固く握っていた。

 いつでも反撃できる体勢。


 でも、それも無駄だったよ。なにもかも。


 止める間もないとはこういう事だね。


「円ちゃん、行くよ」

「あいあいさ、姉御」


 細めていた葵ちゃんの瞳が大きく開いた。

 それを受けナイトウォーカーの体がビクリと跳ねた。

葵ちゃんの背中から飛び出したのは円。

 走りながらポケットからなにかを取り出す。

 僕には小瓶に見えたけど・・・・・・。


「アシッドアターク!」


 声と共に中身をぶちまける。

 小瓶の中には液体が。

 それがナイトウォーカーの顔へかかる。

 その瞬間、悲鳴が上がった。


 顔を押さえながらナイトウォーカーが悶える。

 アシッド、酸の事だ。それもとても強力な。


「うあっがががががっがががががががぁぁぁっぁぁぁぁ」


 叫ぶ、溶ける、叫ぶ、溶ける、叫ぶ、溶ける、叫ぶ叫ぶ叫ぶ。

    

 狂ったように踊り出すナイトウォーカー。


「うくくく」


 膝目掛けて切り裂き円が足の裏を打ち付ける。

 転ぶナイトウォーカー。

 それでも顔を両手で覆いながら転がり苦しんでいる。


「イエーイッ!」


 飛んだ葵ちゃんの両足がナイトウォーカーの腹部へと着地。

 全体重を臓器が受け止め、口から短い別の呻き。


 〈葵ちゃん活躍中〉


「お、ピアス格好いいっ! とっちゃえ、とっちゃえっ!」


 爛れる肌に煌めく無数のピアス。

 耳、鼻、口にいっぱい付いている。

 それは酸の影響を受けずに輝いていた。

 

 〈葵ちゃん活躍中〉


「うくく、タトゥーだ、入れ墨だ、格好いい、剥がそう、剥がして、やる」


 腕、首、胸、所狭しと掘られていた黒い墨絵。


 〈円活躍中〉


「この分じゃ、他も色々やってるね、どれどれ見せて、見せて」


「脱がせ、脱がせ、うくくくく」


 この時点で顔のほとんどが焼かれ真っ赤に変形していた。

 そこでこの二人の興味は別の部分へ移った。


「うふふ、すごっ、いっぱい埋め込んである」

「形も凄い、やばい、こんなの見た事ない」


 衣服を破り、切り裂いて露出させる。


「取っちゃえ、取っちゃえ」

「切ろう、切ろう、もっと変な形に、するのだ」


 視線を一点に、二人はナイフを片手に小刻みに動き出す。


「穴だ、穴、〈あーだこーだするのだ!〉」

「回せ、回せ、うくくく」


 あ、駄目だ。止めなくちゃ。

 あっという間の出来事で僕も唖然としていた。


「ちょっと、もういいからっ! 二人とももう止めなっ! じゃなきゃもっと嫌いになるよっ!」


 笑っていた葵ちゃんが急に無表情になった。


「それは嫌だよぉ。だから止めるね」


 ピタリと動きが治まる。葵ちゃんが止まった事で、切り裂き円も行動を停止した。


 ナイトウォーカーの体はビクビクと痙攣している。

 辛うじて生きてるみたい。


「葵ちゃん、かなりやり過ぎだけど、一先ずはありがとう」


「リョナ子ちゃんのピンチだもん、いつでも駆けつけるよっ!」


 多分、僕を監視してたんだろうけど、そのお陰でこうして死なずに済んだよ。


「あ、その子はっ!?」


 葵ちゃんが来るまで僕を助けてくれた少女は大丈夫だろうか。

 全く動かないけど。


「あ、うん、気を失ってるだけだよ。傷も案外浅いよ。だからリョナ子ちゃんが気にすることないからね」


 そうなのか。かなり刺されてたように見えたけど。


「姉御、姉御。レンレンの所に戻ろう、レンレンが死んだら私達の居場所が、無くなる」


 円が葵ちゃんの袖を掴む。


「そだね、蓮華ちゃんが簡単にやられるとは思えないけど、一応チームだしね」


 こうして二人は来た道を引き返そうとする。


「ここの後始末は私達の方で頼んでおくから、リョナ子ちゃんは戻っていいよ」


「あ、それなんだけど、ナイトウォーカーは僕に譲ってよ。ていうか、今回関わってる殺人鬼全員、僕に渡して欲しい。無論、生きたままだよ」


 甘えすぎかな。でも、ちゃんとその分の報酬は払うつもりだ。


「うん、わかったよぉ。蓮華ちゃんもリョナ子ちゃんがそう言ってたっていえば了承してくれると思う」


 良かった。葵ちゃんは僕との約束ならそれなりに守るからここは信用しよう。

 後は、蓮華ちゃんがうちの拷問士とうまくやってくれるはず。


「さぁ、さぁ、リョナ子ちゃんも戻ったほうがいいよ、あっちも大変なんでしょ?」

「うくく、私達もまだ、暴れたりないけど、あれだ、なんかそっちには危険な奴がいるってレンレンが言ってた」


 あぁ、殺菜ちゃんの事か。そうだね。このまま二人を連れて行きたいけどそれは無理だ。余計な火種を増やすだけだもんね。


「じゃあ、改めてお礼は今度ねっ! 僕は行くよっ!」


「うん、またっ! 近いうち会おうねっ!」

「ちゃんリョナさん、お疲れ、また、今度っ!」


 僕が戻った所でなにも役には立たないけど、急いで二人の元へ行かなくては。

 心配もしてるだろうし。


 

 フェンスを潜りまた元の場所へと。

 こっちは一体どうなってる。


 僕が見たのは、二人並んで寝かされていた殺人カップル。

 そしてその傍に立っていたのは金糸雀と殺菜ちゃんだ。

 殺人カップル達は足に怪我をしてるみたい、動きを抑えたんだ。

 良かった、勝ったみたい。


 でも、少し様子がおかしい。


「私は殺してもいい、でも結斗は殺さないでっ!」

「いや、俺を殺せっ! その代わり千里は許してやってくれっ!」


 恋人達はお互いかばい合っていた。

 涙を流し、時より視線を重ねる。

 二人はしっかり手を握り、互いの名を呼ぶ。


「金糸雀ぁ、斧貸せやぁ」


 殺菜ちゃんが金糸雀から斧を取り上げる。

 

 そして。


 〈殺菜、活躍中〉


「ふあああうああああっ!」

「ひぃあおあおあおあおあっ!」


 二人は同時に声を上げる。


 〈殺菜、活躍中〉


「な~に、殺人鬼が愛だの恋だの語ってんだ、あぁ? 虫酸が走るんだよっ! てめぇらに与えられてるのは苦痛だけだ、糞がっぁぁ!」


「コロナ、もう一個腕が残ってマース。これじゃまた手を繋げマース」


「あぁ? その前に目だろがっ! こいつら見つめ合ってイライラするわ。もう二度と顔が見れないように目を潰してやらぁぁ」


「それじゃ、口もきけないようにするデース。いや、聞けないように耳を、もうどっちもデース」


 あ、こっちの二人も大概だ。

 止めなきゃ。

 僕ってこんな役ばっかりだなぁ。   

   

「はいはい、終わり終わり。運ぶ前に死んじゃうでしょっ!」


 二人の傍へ駆け寄る。

 

「お、リョナっち。無事だったんすねっ! 良かったっす」

「お、てことはナイトウォーカーのやつから逃げ切ったんデスネ!」


 二人は、ここに僕を追ったナイトウォーカーが現れると思い、武器を構えた。


「いや、来ないよ。倒したから」


 僕がそういうと、二人は驚愕の表情を見せた。


「まじっすか! 失礼っすけど、リョナっちではどう考えても無理っす、なにしたんすか!?」

「凄いデース。あれはワタシとコロナの二人がかりでやるつもりだったデース。それをどうやってっ!?」


 う~ん。殺菜ちゃんの手前、殺人鬼に手を借りましたとは言えないね。

 ここは冗談交じりで誤魔化そう。


「うんと・・・・・・幽波紋スタンドでやっつけた、よ」


 僕がそういうと、二人はさらに驚いた。


「スタンドっ!? あのオラオラ的なやつデース?!」


「うん、そう。無駄無駄的なやつ」


「OH・・・・・・」


 ありがち間違ってないよね。

 

「すげぇ。まさかリョナっちが使い手だったとは。詳しく聞きたいっす」

「ワタシも聞きたいデース」


 え、殺菜ちゃんも信じてるの。

 どうしよう。


「えっと・・・・・・ね、追い詰められた僕は壁を背に絶体絶命だった。そこで発現したんだよ。相手には見えてない、でも僕はこれで勝ったと思ったね。だから言ってやったのさ」


 もう話を合わせるしかない。


「覚悟はいいか? 僕はできてるっ! ってね」


「かっけぇぇっ!」

「やばいデース!」


 こうして僕達拷問士チームは三人の殺人鬼の確保に成功した。

 

 残りは何人だろう。

 でも、すぐに終わるよ。

 蓮華ちゃんがこっちに回してくれればの話だけど。


 今日僕は蓮華組、拷問士組の力を垣間見ることが出来た。


 これは、敵の殺人鬼側も予想外だったんじゃないかな。


 多分、そっちより大分狂ってるよ。この子達。

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