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おや、間に合いましたか。(対殺人鬼連合 蓮華サイド3)

 こんにちは、蓮華です。

 

 今私は、二人の殺人鬼に挟まれている状態なんですね、これはあれでしょうか、今まで経験した事がないのですが、所謂まずい状況ってやつなんでしょうね。


 頼りのドールコレクターと切り裂き円はどっか行っちゃいましたし、私一人では嬲り殺されるだけかもしれません。

 となると、やる事は一つ。


「えっと、吸血殺人鬼・・・・・・灯さんでしたね。我が天使の言いつけというのはどういう事でしょう?」


 私は、前方で電動ドリルをこちらに向けてギュルギュルしている灯さんに問いかけます。


「そのままだ、私は一週間に一度新鮮な血を飲まないと体が崩壊する、我が天使はそうならないために導いてくれているのだ、うふふふふ、今、天使はお前の血を飲めを言っている」


「なるほどぉ」


 ふむふむ、別にこれ中二病とかじゃないんですねぇ。

 妄想指令型の精神障害です。

 信じられないでしょうけど、実際一定数の患者がいるんですよ。

 

 灯さんにはちゃんと天使が見えていて、私の血を飲めとおっしゃってる事でしょう。

 人に監視されてる、悪口を言われているなどの被害妄想、幻聴などが聞こえるタイプに近い。

 

「そちらは、首切り・・・・・・狂璃さんでしたね。あなたはなぜ刀を好みます?」


 私は振り返り、今度は狂璃さんに質問しました。


「え? だって切れ味がいいし、そして格好いいからだよ。本当かどうかしらないけど、外国じゃ刀を持ったお婆ちゃんがひったくりの男達を刀で撃退したって話があるよ。そもそもなんで持ってるんだって気もするけど。それだけ凄いんだよ」


 狂璃さんは、刀を鞘に戻すと小刻みに抜き差ししてカチャカチャ鍔を鳴らしました。


「ふむふむ、刀はいいですよね、独特の文化による魅力があります。機能を追求した先にある無駄を省いた形状、研ぎ澄まされた肌、浮かぶ刃文、美しいです」


 私は同調すると、無表情だった狂璃さんの顔は少しだけほぐれました。


「お、わかってるじゃん。狂璃は昔から刀が好きだったんだ。だけどなぜか一時すごいブームになった、それは嬉しい反面、寂しくもあったよ」


「そうだったんですね。狂璃さんのそれはなにか業物とかだったりするのでしょうか? 私は刀には少し疎いもので・・・・・・」


「お~、興味があるか、ならば教えてあげよう、この刀は・・・・・・」


 狂璃さんが口を開くと、後ろから怒声が上がりました。


「首切りぃぃききっ、なに、いちいちいちちちい、なに呑気に話してんだぁあ、さっさと殺せぇぇぇやぁ」


 髪がうねうねと、灯さんが私達を激しく睨め付けました。

 

 う~ん、こっちは話し合いが通じそうにないんですよねぇ。天使の指示が最優先でしょうし、私が何をいっても無駄そうです。


「あぁ、ごめん、ごめん。つい、のっちゃった。やっぱ自分の好きな物を語られると話たくもなる。じゃあ、さっさと殺しちゃおうか」


 そういうと、狂璃さんは柄を握りました。


「狂璃、抜刀!」


 そういうと一度収めた刀剣を抜き、胸の前で翳したのです、おぉ、なんか格好いいです。

 刀を抜いた瞬間、狂璃さんの目が変わりました。血走った眼で私を見据えました。

 これは、開戦と同時に私は殺されちゃいますねぇ。


「あぁ、じゃあ死ぬ前にもう一つだけいいでしょうか。さっきうちの連れがですね、追いかけていった人達はお仲間さんですか?」


 これも狂璃さんに聞きます。後ろの方はもういつ飛び出してきてもいいほど、臨界ぎりぎりですので。


「あれはただの囮だよ、バイト、バイト。そこらへんにいたガラの悪い連中に10万くらい握らせて雇ったの」


「あ~、そうなんですね、てことは私達にぶつけてこられたのは貴方達だけですか?」


「ん、そうだよ」


 私は、今回この殺人鬼達を纏めている人物がいると思っています。


「あ~、そうなんですねぇ・・・・・・それはそれは・・・・・・」


 その人物に面と向かって言ってやりたいものですねぇ。


「・・・・・・舐めすぎです」


 私は目を見開いて二人にそう言い放ちます。


「私達相手に、たった二人ですかぁ・・・・・・どう思います~?」


 私は少し大きな声で聞いてみます。その相手はこの二人ではありません。


「それは馬鹿にしてるねぇ」

「うくく、いくらなんでも、それはない、ない、ナイトメア」


 奥から、見知った顔が現れます。

 勿論、私の頼もしいお仲間さんです。

 彼女達は、血だらけの男達を引き摺っておりました。

 ただのバイトでしたら、彼女達はすぐ追いつき仕留められるのも道理。

 囮にも時間稼ぎにもなりませんでしたねぇ。


「一応、殺さなかったよ。すぐ捕まえられたからおかしいと思ったんだぁ」

「なんだ、ただの一般人だったのか、うくく、生かして損した」


そう言うと、二人はゴミを捨てるかのように男達を投げました。


「ドールコレクター、ちゃんとやってくれましたか?」


「あ、うん。ここら一帯閉鎖の手配はしたよ。これで誰も逃げられないね」


 これで形成逆転です。一応、保険をかけておいたのですが、無駄に終わりそうですね。

 

 そう思ったんですけど。


「あらら、これは参ったね。でもいいよ、私達の目的は深緑深層だけだし。例え、腕が飛ぼうが目が飛びだそうが、君だけは確実に殺す」

「そうだ、天使はお前の血を飲めを言ってる。他のはいらない」


 覚悟ができた目をしています。これはお互いただでは済みそうにありませんね。


 一瞬の静寂。

 誰かが動けば、殺し合いの始まりです。

 

 だったのですが。


「・・・・・・・・・・・・」


 これからという、この時点でです。すでに二刀のナイフを握り臨戦態勢に入っていたドールコレクターの様子がおかしくなりました。


「ん、どうしました?」


 ドールコレクターは瞳を閉じて静かに顔を空に向けました。一体、どうしたというのでしょう。


「・・・・・・呼んでる」


 そう呟くと、ドールコレクターはいきなり踵を返し、元来た道へと駆け出しました。


「あ、姉御、どうした? なんだ、どったの?」


 それを切り裂き円も追いかけていきました。


「ちょ、ちょっと、どこ行くんですかぁーー」


 また、この場には私と、敵だけになりました。

 え、これから対決なんですよ、なんでまた私を置いてくのでしょうか。


「えっと、よく分からないけど、殺すね?」

「あぁっぁぁあ、どうでもいいから、早く飲ませろぉぉ、体が溶けるぅぅ」


 再び、二対一です。

 なんなんですか、これじゃまた振り出しじゃないですか。

 一応、敵さん達も罠ではないかと少し様子を見ています。

 そりゃ、そうですよね。同じ殺人鬼でも彼女達の行動が理解できないのでしょう。


「仕方ない、少しお高いですが、保険を使いますか」


 そういい、私は銃ではなくスマホを取り出しました。

 殺人鬼達は、警戒してまだ動きません。


「あ、私です。やっぱりお願いします。えぇ、はい、あ、近くにいる? 流石ですね、じゃあのちほどぉ」


 手短に用件だけ伝えると、通話を終えました。


 もう会話で時間稼ぎは通じなそうなので、やるしかありませんね。


 携帯をしまい、代わりに銃に持ち替えます。

 この距離、しかも相手は二人、どれだけ持ちますかね。圧倒的に不利です。 


 初手は同時でした。


 灯さんが金属の蛇口を力いっぱい私に向かって投げつけます。

 それを即座に銃撃、ぶつかる弾丸と蛇口が甲高い音が響きます。

 これがゴング。

 

 そのまま、私は踏み込みます、灯さんに向かって距離を詰めるのです。

 その時、後ろは見ないまま、狂璃さんにも一発撃ち込みます。

 あちらの出鼻を挫き、こちらに来られるのを少しでも遅らせます。

 まずは確実に一人ずつ。精神不安定で冷静さを欠いている灯さんを先に仕留めようと思ったのです。


 走りながら右手で銃撃を数発撃ちながら近づいて行きます。

 そのまま腰からナイフを取り出し左手で握りました。


 弾は、灯さんの長い髪を掠めますが、逸らした本体には当たりません。

 そうこうしている内、灯さんは目の前。

 ナイフをその首元に向かって振り抜く。

 普通ならこれで終わりなんですけど、今回は違いました。

 急回転するドリルがそれを防ぎます、血の代わりに飛び散るは激しい火花。

 止められた、そう脳が理解する前に、私の銃は灯さんの横腹に一発撃ち込んでいました。

 肉を食い千切りながら、銃弾は灯さんの体を貫通していきます。

 しかし、まるで怯まない。

 まるで何も食らってないかのように、灯さんはドリルを私に向け、そして左肩へと突き刺しました。

 深々と刺さるドリル、それからです、灯さんが人差し指でスイッチを押し込むと、肉に包まれていたドリルが急旋回して今度こそ血が飛び散りました。


 私は痛みで顔が歪みます。

 今ので仕留められなかったのは致命的。

 振り向くまでもなく、狂璃さんはすぐ私の後ろまで来ています。

 勘だけを頼りに体を捻りました、そして焼けるような痛み。

 狂璃さんの刀身が私の背中を切り裂きました。

 うぅ、これは、すごく、痛いです。

 これまた確認するまでもなくパックリいってそうですね。

 白いワンピースが赤で染まります。

 辛うじて決定的なダメージは避けましたが、さすが刀、すごい切れ味です。

 

 やはり、二対一は分が悪すぎる。


 すぐに追撃が来ました。ぐらつく私の太股に、灯のドリルがまた穴を開けます。

 溜まらず膝を着いた私に、さらに狂璃さんの刀剣が腕を突きました。

 

 私は、さすがにその場に倒れます。

 このまま嬲り殺されるのでしょうか。

 色々抉られ、斬られ、まるでまな板の食材のように。


「終わりだね、せっかくだからもう少し遊んであげる」

「予想通り、いい血だ、綺麗な赤だ」


 狂璃さんは、見下ろしながら刀の先端を私の顔に向けます。

 灯さんは、血が湧き出る私の太股に口をつけました、べろべろ舐めながら血を吸っているみたいです。


「・・・・・・切り札ってあれですよね・・・・・・大抵先に出すと負けるんですよ。でも、私はそうでもないと思ってます」


 喋るのも辛いほど、体中痛いです。


「ん? なに言ってるの? 死の間際でおかしくなっちゃった? 大丈夫だよ、まだ殺さない。もっと細かく切断してあげるからね」

「じゅる、じゅる、うまうま、いい血、美味しい」


 あぁ、保険をかけておいて本当に良かったです。


「切り札を最初にだして、すぐに終わらせればいいのですよ。例え相手がなにか奥の手を持ってようが、出す前に倒せばいいだけです」


 地面に着いた耳が、振動を捕らえます。

 第三者が来たようです。

 とても、静かで、こうして耳を澄まさないと分からないほど小さな気配。


「ん? 誰だ」


 狂璃さんは気づいたようですね。灯さんは夢中で血を舐めてますけど。


「お仕事の時間でーす。あらら、依頼主さん大丈夫? 死んでないよね?」


 霞む目に映ったのは、兎の仮面をかけた細身の女性。


 多分、私の知る限り最強の人物。


「わざわざ、私自ら来てあげたんだから報酬ははずんでねぇー」


 殺し屋集団ハイレンズのボス、蛇苺。


 うぅ、戦闘シーン苦手。

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