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なんか、遭遇したみたい。(対殺人鬼連合 リョナ子サイド3)


 まず、僕がこの1時間後に出会うであろう殺人鬼について説明しておこうと思う。


 僕達が遭遇したのは三人の殺人鬼。


 二組と一人といった方がいいかな。

 

 通称殺人カップル。

 恋人同士である二人は、どちらも男性。一人は細身の美青年。とにかくキラキラしている。

 もう一人は、筋肉質の長身の男。髭面だけど、言動が女性のそれだった。

 二人は激しく愛し合っていて、犯行もいつも二人で協力する。


 手口はこうだ、結婚詐欺に近いやり方で獲物を釣る。そして監禁。詳細は想像に任せるけど、被害者に入れてる相方にさらに入れて、真ん中はつきながら先頭にいる被害者の体を滅多刺ししながら興奮して、そうなると後ろの締め付けも・・・・・・、まぁ僕じゃうまく説明できないよ。


 そして、もう一人。

 通称、ナイトウォーカー。

 こいつはやばいね。通常サイコパスの連続殺人は一貫性がある。


 でも、こいつにはそれがない。被害者は人種、年齢、性別、全てがバラバラ。

 被害者を殺す時もあれば殺さない時もある、性的暴行を加える時もあれば加えない時もある。 あっさり殺す時もあれば、猟奇的に殺す時も。


 趣向や性癖が特にないために、蓮華ちゃんといえども中々プロファイリングができずにいた。

 ナイトウォーカーはもう末期状態。殺人狂の暴走は誰かが止めなきゃ走り続ける。

 

 こんな三人と顔を合わせるっていうんだから、僕も大変だよね。



 午前10時過ぎ。僕らは金糸雀の武器を手に入れるべくお千代さんのお店へ。


 執行局からほど近いので、ものの数分でついた。


 自分でも認めるほどの、変な三人組だ。周りの視線が痛いよ。

 殺菜ちゃん達は気にもしてない様子だけど、僕はそそくさと店内に逃げ込むように入った。


「う~ん、今日は目黒ちゃんいないなぁ、他の店員も一般人だね」


 雑貨屋になってる一階をぐるりと一周したけど目黒ちゃんが見当たらない。

 えー、てことはあれやらないと駄目なのか・・・・・・。


 僕らは奥の暖簾をくぐり、地下へと続く階段を降りる。

 分厚そうな扉で行き当たり、僕は息を吸い込んだ。


「こんこん、お千代さんいますか? リョナ子ですけどー」


 聞こえるように強くノックをする。

 すると、返事が聞こえた。


「・・・・・・合い言葉を言いな・・・・・・行くよ」


 うわ、やっぱりか。

 ちらりと、殺菜ちゃんを見る。

 すると、真剣な眼差しで軽く頷いた。

 なんで頷いたか知らないけど、僕がやれって事ですよね。

 そうこうしている内にお千代さんから声が上がった。僕もすぐに続ける。


「チッヨチッヨチー!」

「うぅ、ッョチッョチィ・・・・・・」


 恥ずかしいので呟くようにそういうと。


「帰んなっ!」


怒声が上がった。これはまずい、すごい怒ってる。


「すいません、もう一度お願いします」


「・・・・・・最後だよっ! 小さい声で言ったらもう知らないよっ!」

「はい、すいませんでした」


 気を取り直して、僕はもう一度息を大きく吸い込んだ。


「チッヨチッヨチー!」

「チ、チッヨチッヨチー!!」


「ダレカ、ボスケテーっ!」 

「チョットマリアンテェーー!」 


「「宇宙連邦軍」の試作機で、『機動戦士ガンラムEE』の主役機「EEガンラム」と同時期に開発された可変MS(TMS)。EEガンラムと同じく機体を3機の航空機として分離・運用することが可能で、各種オプションパーツを追加・換装した複数の形態を持つ。制御系に特殊な人工知能を搭載しており、無人機としての運用も可能とされている。劇中では「σ任務部隊」に配属された「リョウ・ルーチ」がメインパイロットを務め、連邦軍を離反した者たちで結成された敵勢力「ナウーディサイズ」と戦う機体は?」


「え、はいっ? え、えぇぇぇ・・・・・・」

「Sガンラムっすよ」


「うん、スペリオルやねっ! ・・・・・・合格だ、入んな」


 うぅ、最後のなんだよ。合い言葉じゃないじゃない。殺菜ちゃんが口添えしてくれなかったら駄目だったよ。


 扉が開け放たれた。

 お千代さんが出迎えてくれた。


「らっしゃい、今日はなんの用だい、冷やかしなら今すぐ帰りな」

「いやいや、あれだけやって帰れないよ。今日はちゃんとお客としてきたんだ」


 僕達が中に足を伸ばすと、お千代さんが気づいたみたい。


「ん? そっちの子はみない顔だね。拷問士なのかい?」


 金糸雀にとってここは初めてだからね。そもそも外に出られないから来られるはずもなく。


「あぁ、この子も一応特級拷問士だよ、だから問題ないよね」

「よろしくデース!」


 名前は伏せて僕が紹介すると、お千代さんは、目を細めじっくりと金糸雀を見た。


「ふん、拷問士ねぇ。ここはリョナ子を信じけどね、私には別のなにかに見えるわさ。ま、客なら関係ないか」


「関係ないデースっ! しかし、ここ凄いデスネー」


 金糸雀は目を輝かしながら店内をうろついた。


「その子に合う感じのオススメなんかないかな?」


「・・・・・・う~ん、丁度新作があるさね」


 そういい、お千代さんは奥からその新作とやらを取り出した。



 買い物を終えた僕達は、外へ出た。

 でも、この後、どうするかは全く決まっていなかった。


「これはいいものデース」


 金糸雀の武器は僕が持っている。金糸雀はうっとりそれに視線を送っていた。

 

 斧型のバック、いやバックに見立てた斧っていえばいいかな。

 持ち手が伸縮性で、さらに柔軟性もある。刃の部分が本体で、柄の部分を曲げて取っ手のようになってる。物は入れられないけど、ぱっと見、バックに見えない事もない。いや、嘘、見えないわ。ちなみに色はオレンジです。これ撓るから振り下ろすと、すごい威力になりそうだね。その分扱いにくいとは思うけど。


 さて、どうしよう。お昼には早いけど、まずランチにしようか。そこで今後どうするかを、なんて考えてたら、唐突に金糸雀が歩きだした。


「ん、どうしたの」

「おい、勝手に動くな、屑」


 慌てて僕らも追いかける。


「・・・・・・感じマス。最初は気のせいかと思いましたが、動いたらつけられマシタ」


 後ろを振り向かずに、金糸雀は小声でそう僕らにいった。


 思わず僕も後ろを見そうになったよ、あぶないあぶない。

 

 これが殺人鬼と拷問士の決定的な違いなんだ。

 危機管理の強さが異なる。


 僕らは、どんな凶悪犯だろうが殺人犯だろうが、執行時に危険はない。だって相手は身動きは取れないからね。拘束されて自由はない、無抵抗。


 でも、長年殺人を犯しながら捜査の目を眩ましていた犯罪者は違う。慎重に、疑い深く行動し、状況判断、危険察知が自然と高くなる。


 これが、態々金糸雀をメンバーに加えた理由の一つ。

 僕や殺菜ちゃんじゃ気づけなかったろうね、このまま後ろから襲われて殺されてたかも。


「・・・・・・誘い込みマース。そのままついてきてくだサーイ」


 金糸雀はそう呟くと、速度はゆっくり裏道へと歩いて行く。

 僕らは黙ってついて行くしかない。


 道なりに進むと、少し先に、工事中の建物が見えた。

 改装だろうか、布に覆われていたけど、作業音は聞こえない。たしか前あったビルを解体して新しい施設を作る予定だったんだけど、耐震などの、規定外の設計に不備があって一時中断してたんだっけ。


 周囲はフェイスで覆われてて本来立ち入り禁止なんだけど、金糸雀は構わず境目から中へ入った。結構狭いけど、肉付きの良くない僕はすんなり通れた。殺菜ちゃんは色々突っかかったけど、なんとかひっぱり込んだよ。


 そして、ここで僕らは後ろを振り向く。

 金糸雀のいう通りなら、僕らは誰かに尾行されてたって事だけど。


 僕らが通った隙間から人影が二つ。

 もう一つは高いフェンスを跳び越えて、僕達の前へと。


 全員男性。筋肉質の男と、細身の美形は手を繋いで寄り添っている。

 そしてそのちょっと後ろに、顔面はピアスだらけ、腕にびっしりとタトゥーが入った小柄な男。


「あれ、もしかして誘い込まれた?」

「ん~、そんなのどっちでもいいじゃない。みんな可愛いわ。君達ーお兄さん達と遊びましょっ」

「・・・・・・今回は肉体改造をテーマにしようか。眼鏡はダルマ、制服の奴は全身ブランディング。残りは外人か? あれはスカリフェケーションを施そう」


 ここまで来るともう奴らにとって、僕らはただの獲物にしか見えてない。ここに誘い込まれた事も、僕達が拷問士だって事も、なにもかもどうでも良くなってる。むしろ人目は無くて好都合とでも思ってるだろう。


「・・・・・・リョナコ、手錠外してくだサーイ」


 前の三人から目を離せなくて聞き取れなかった。

 ここまで近づくと、僕でもわかる、あれは僕が執行した犯罪者の中でもかなり異常だ。

 特に、後ろの男。スプリットタンで二つに分かれた舌をチョロチョロ出してる奴はやばい。


「え・・・・・・なに? ごめん、聞いてなかった」

 

 無意識に後ろへ足を下げながら、聞き直す。


「手錠デース。外してくだサイ。じゃなきゃ・・・・・・」


 殺菜ちゃんはすでにペンチを両手に持って構えていた。

 

「私達は、全滅しマス」




 最後に、金糸雀について話そうか。


 手口は単純、メイドの姿をして公園でバルーンアートなどで少年少女の目を引く。

 言葉巧みに誘い出し、監禁、拷問、陵辱。


 首を絞めて窒息寸前で手を止め緩める、そしてまた首を絞める。それを気が済むまで繰り返しながら何人も殺した。


 あそこを電気メスで二つに切り裂いたり、四つに割ったり。縫ったり、切除したり、こっちも詳しい事は言えないけど相当玩具にして遊び尽くしていた。


 彼女の隠れ家の床下からは、数え切れないほどの小さな白骨死体が見つかった。

 裁判の果て、彼女の執行レベルは21。


 殺人メイド、殺人バルーンアーティストなどと呼ばれた金糸雀は、これで葵ちゃんクラスのレベルブレイカーと認定された。

 

 間違いなく、異常さでは今回の殺人鬼達にも引けはとらない。

 次回、拷問士と殺人鬼が交差する時、物語は始まる!


 乱心中です。しばしおつきあい下さい。

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