おや、なにか手がかりでしょうか。(対殺人鬼連合 蓮華サイド)
こんにちは、蓮華です。
この度、私達・・・・・・特にチーム名などはありませんが、賞金稼ぎ一人、殺人鬼二人の計三人は、とある殺人鬼集団に喧嘩を売られてしまいました。
今まで身を潜め闇の中でしか活動しなかった奴らが表に出てきたのです。
漸く引きずりだす事が出来ました。
私一人では無理だったでしょう。
隣でスマホを弄りながらワイワイやってる殺人鬼達の功績が大きい。
「うひゃー、11連で星4一個もないよぉ」
「あ、姉御、課金、課金するのだっ!」
なにやらゲームでもしてるのでしょうか。
宣戦布告を受けたというのに、この緊張感の無さです。
「こほん、そろそろいいでしょうか。今回は今までの相手とは別格ですよ。ちょっと真面目にやってください」
「あ、うん、そうだね」
「うくく、何言ってる、私達の、前に立ったら、また、シュッでドンだ。いつもと、同じだ」
完全に余裕ぶってますね。
相当の修羅場を潜ってきたゆえの慢心なのでしょうが、それは時に命取りになります。
これは、少し動揺してもらいますか。
「あぁ、そういえば拷問士の方々が動きましたよ。この件、彼女達も無関係ではないですので・・・・・・」
私がさらっと呟くと、ドールコレクターの顔つきが変わりました。
スマホを弄る指先も止まり、冷たい表情がこちらに向けられます。
「・・・・・・どういうこと?」
詳しく説明してませんでした。
今ならちゃんと耳に入るでしょう。
「被害者の写真を見せましたよね。あれ、実は拷問士だったんですよ。それも特級、さらに筆頭。かなり慕われていた方でしてね。仇討ちといった所でしょうか」
「・・・・・・独自で動いてるって事?」
「そうですね、細かい考えは違いますが、とりあえず確保したいと思ってる事でしょう。13人、いや今は12人ですが、特級もそれだけいると全員考えも違います。特殊な感性を持った方も多いですからね、最終的にどうするかは知りませんが、とりあえず誰よりも早く犯人達を捕まえるつもりです」
相手が相手なので、上から私達の方にもすでに要請は来ています。
基本私達に直接要請が来る場合、それは暗黙でデッドアライブなのです。
被害者は国家機密の拷問士、事件は公になってない。
さらに、容疑者は世間を震撼させている殺人鬼、複数。
私が言われたのは、この事件、無かったことにしろ、です。
そう、被害者も加害者もいないのです。
私達が綺麗さっぱり押し入れに詰め込まなくてはなりません。
バッシングを恐れる組織としては、いつまでも野放しにできません、マスコミにいつかぎつけられるか。
「拷問士側は、生きたまま捕まえたいのです。そこであちらもチームを組みました。特級からなる三人組。その中に・・・・・・リョナ子さんがいますよ」
私が言い終えた時には、すでにドールコレクターは背中を見せてかけだしていました。
「大変っ! リョナ子ちゃんが危ないっ!」
「お待ちなさいっ!」
そんな彼女を急いで引き留めます。
「なに? 悪いけどそういう事なら私は勝手に動くよ。リョナ子ちゃんを守らなきゃ。誰にも指一本触れさせない」
いつもへらへらしてるのに、リョナ子さんの名を出すとこれです。
たしかにドールコレクターのいうとおり、危険ではありますが・・・・・・。
「いつものリョナ子さんなら、私達に力を借りようとします。目的がある場合、彼女はなにもかも捨てて最良の策をとるからです。でも、今回は私にも貴方にも連絡がない」
リョナ子さんもこっちのやり方はよく知ってるでしょう。
「・・・・・・リョナ子ちゃん自身、あちら側で頑張る、つもりか」
「そうです、彼女もまた、できる限り無傷で捕らえたいと思ってるのです。それに、あっちには特級拷問士の殺菜さん、金糸雀さんがおられます。金糸雀さんは、よくご存じでしょう。元殺人鬼ですね。そして殺菜さんはやばいです。彼女は犯罪者を塵屑以下と思ってます。なので、貴方達とはち合わせたら核融合が起きちゃいますよ」
殺菜さんは一般人と犯罪者とでは人格が変わるほど接し方が違うみたいですからね。
こんな大量殺人鬼達を目にしたら襲いかかってくるかもしれません。
「うくく、襲いかかってきたら、シュッでドンだ。誰だろうが、同じだ」
「・・・・・・わかったよぅ。でも、リョナ子ちゃん達の動きは見とかなきゃだね。そして、リョナ子ちゃんには悪いけど、あっちより早く全部殺しちゃえば問題ないね」
「お、姉御、本気か、やる気満々か。なら、私も頑張る、ぞ」
やはり、リョナ子さんが絡むと、別人のように働いてくれそうですね。
「さて、気持ちも切り替えた所で、奴らの動きを捕らえますか」
最初に色々整理してみましょう。
「まず、被害者ですが、これがたまたま拷問士だったとは考えづらい。私が拷問士のファンだと知ってわざと標的にしたと思われます」
「ん、でも、あれだ、拷問士の情報は国家機密だ、私が、ちゃんリョナさんを拉致できたのは、たまたまだ、ランダムに施設から出る奴を捕まえて当たりだっただけだ」
「そうだねぇ。となると、身内がリークしたのかな」
「どうでしょう、拷問士同士でも素顔は知らないケースも多いですし、上が漏らしたらすぐに誰が流したかわかるものです。となると、別のところから流れた可能性も・・・・・・」
組織や身内以外で、拷問士の素性を知ってる者。
考えられるのは、元がつく人でしょうか。元上層部、元拷問士とか。
今は確定できそうにないので、先に進めましょう。
「とりあえず、犯人達の行動範囲から居場所を推測してみますか。一番分かりやすい眼球アルバムからです、奴のやり方は分かりやすい。眼球が綺麗に取り除かれている複数の事件を参考にします」
私はホワイトボートを引っ張り出して、この町の周辺地図を貼りました。
そして、眼球アルバムの犯行と思われる現場に印をつけていきます。
「かなり、やってるねぇ。○がいっぱいだよぉ」
「バラバラ、だ。そうとう、動いてる」
24カ所です。予測では一件一件の犯行時間はかなり短い。
まず、即時に殺して、目玉をくり抜いて逃走。
これは、眼球以外に興味がないからですね。目的を果たしてすぐにその場を去る。
「サークル仮説です。眼球アルバムが拠点モデルか通勤モデルかで話は違ってきます。その特定はできませんが、拠点モデルが相対的には多い、そして犯行数も多い、まずは拠点型、そう過程して考えてみます」
私は、地図上の○、それがもっとも離れた二つを結び線を引きました。
「この二点を軸に弧を描いた中に、犯人の拠点があるとします。さらに見て下さい。なにか気づきませんか?」
問いかけると、二人はすぐにわかったようです。
「う~ん、中心からちょっと離れて犯行現場がドーナツみたいになってるね」
「囲いの中ではほとんど、やってないぞ、これ」
「そうなんです。これは犯罪者が比較的拠点周辺では犯罪を行わない現象、コールサック効果と言います。つまり、この犯行が行われてない周辺、バッファーゾーンといいますが、ここに拠点がある可能性が高い」
逆にこのドーナツ状になってる地区が、犯行が一番行われやすいとも言えます。
でも、例外があるのです。
「判明してる眼球アルバムの犯行で、一番最初と思われるのが、ここです」
私は一番古い事件現場を指さしました。
「あ」
「そうです、ドーナツ型の内部は、ほとんど犯行が行われません。なのに一つだけある。それがまさにこの最初の犯行現場です」
連続殺人の場合、一番最初の事件があった場所。
その近くに犯人が潜んでる可能性が高い。
「はっきり実証されてるわけではありません。でも、これをみるとサークルの中心になにがあるでしょう?」
円の中心、そして最初の犯行現場、それに近くには。
「執行局・・・・・・がある」
「ん、てことは、やっぱり、身内か、身内が犯人かっ」
切り裂き円がそう思うのも当然です、ですが。
「いえ、さっき身内という考えはとりあえず省きました。でも関わりがある場所がもう一つ近くにあります」
そこは、拷問士御用達のお店。
執行局からも近く。
店主は元拷問士。
個人的に来る拷問士も多く、もちろんその時は素顔。
「店主のお千代さんは私もよく知ってますが、情報を漏らすような人ではない。そうなると、お千代さん以外でこの店にいて、内情も知ってる人物」
私は、バックを取り出します。
机を開けて、無造作に色々詰め込み。
「さて、私達も動きますか。そのお店に行ってみましょう」
エレベーターに向かいます。
「いきなり当たりだったりして」
「うくく、そしたら、シュッでドンだ」
二人も私の後に続き。
そしてドアが開きました。




