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なんか面白半分だったみたい。(後編)

  二日後、葵ちゃんから連絡が来た。車両に張り込んでいた葵ちゃんが目撃したらしい。


 一部始終はこうだった。


 男性の証言内容は葵ちゃんには伝えてある。すでに女子高生三人組の目星は付けていた。


 その女子達を葵ちゃんが見張っていたら、ただ普通に乗車していただけの中年男性の手を掴んで痴漢ですと叫んだという。勿論、その男性が何もしていない事を葵ちゃんは確認している。


 その後、周囲は皆女子生徒達の味方についた、男性は無理矢理電車から降ろされ駅員に連れて行かれる所だった、しかしそこで葵ちゃんが割って入ったのだ。葵ちゃんは男の無実を証言したが、証人として葵ちゃんごと連れていかれそうになる。


そこで葵ちゃんは男性に身分証の提示を勧めた。身分を明らかにし、逃走のおそれが無い事を示せば現行犯逮捕を回避できる。その状態で拘束しようとしたら逆にあっちが逮捕監禁罪にとわれるからね。でも、そうこうしている内に警察も来たらしい。


そしていきなり男性に尋問しようとしたので、葵ちゃんはそれを指摘。

本来、被疑者への尋問の前には(自己の意思に反して供述をする必要がない旨を告げなければならない)ってのがあるからこの場合あっちが憲法違反になる。


葵ちゃんはさらに弁護士を呼ぶよう促し、それまで黙秘する事を指示する。今回は葵ちゃんという証人がいるから堂々としていればいいのだ。

 

目撃者がいて騒ぎも大きくなったからだろう、女子高生三人組はその場からすでに消えていた。でも葵ちゃんから逃げられるはずはない。葵ちゃんはすぐに駅構内に逃げた三人を追い詰め拘束する事に成功する。


 その後、この三人組が関わった痴漢事件がここ最近に集中していた事、その被疑者全員が無罪を主張していた事、女子生徒達の証言がころころと変遷し矛盾が生じた事などを理由に裁判はやり直す事になった。


僕が担当した男性の執行も無期限延期が決定した。


 一先ずは一安心だ。でもこの事件はこれで終わりではない。

 終わらすつもりもない。


 そして数週間後、件の女子高生三人組は僕の仕事場を訪れる事になる。

数人から示談金を要求し恐喝まがいの事をやっていたのが発覚、痴漢されたってのいうのも狂言だった事を自白した。虚偽告訴罪、その他もろもろの複合刑ではれて僕の元へと。

 

 すでに僕はリョナ子棒を手に、お面もつけて準備万端。すると廊下からやたら汚い言葉が聞こえてきた。その声はどんどん音量を上げついには扉の前まで。


「離せよっ! くそがぁっ!」

「っざけんなっ!」


 部屋へと通されるのは、今日の執行対象者の女子高生達。ずいぶん派手な印象だ。


 僕がリョナ子棒で椅子を指すと、職員達が彼女達を椅子に拘束していく。手は後ろで組まされ、足も固定される。三人は激しく抵抗したため職員達も一苦労だった。ほんとお疲れ様だよ。

 

これで執行の用意は全て整った。


「おい、こらぁぁっ! これ外せよっ! いてぇんだよっ!」

「やるなら、さっさとやれやっ!」

「つーか、なにそのお面? 馬鹿にしてんの?」


 いやぁ、しかしやかましいねこりゃ。女が三人で姦しいなんていうけど、大騒音だ。


「まぁまぁ、落ち着いて、ね?」


 無駄だとは思いつつも一応制止を仰いでみる。

  

「ふざけんなよっ! なんで私らがこんなとこ来なきゃなんねぇんだよっ!」

「いいから、早くやるならやれって! これから彼氏と会うんだからよ、こっちも暇じゃないんだっつーの」

「で、何すんの~? ビンタ? 教育的指導的な? ぎゃははは」


 なるほど、平手打ちか。彼女達の執行レベルは2。たしかにそれくらいが妥当かもしれない。リョナ子棒を持ってはいるがこれを使うまではいかないのだ。彼女達は未成年で初犯だからそのレベルで留まった。罪の重さに比べれば全くもって割にあってない。


「おらっ! そんならやれよっ! ほらっ! モタモタしてるとぶっ殺すぞ、カスがっ!」

「てめー、軽くやれよっ! リナの彼氏、族のリーダーだからあんま調子こくと、マジで拉致って輪すぞっ!」

「ここ、なんかやだ~、暗いし狭いし、早く帰りたいんだけど~」


 う~ん、反省の色が微塵もないね。困った子達だ。


「まぁ、静かにしなさいな。大人しくしてればすぐ終わるからさ」


 僕がそう言うと、女の一人が唾を吐き出した。それは僕の白衣、もとい黒衣についた。


「おめぇ~がさっさとしねぇからだろがっ! クズがっ!」


 やれやれ。僕はちょっとだけ考えると、お面を片手でずらした。半分だけ素顔が露出する。


「・・・・・・拷問士への、脅迫、暴言、危害、罪の軽減の要求。それらを踏まえ、現時点をもって彼女達の執行レベルを2から3へ移行。すみやかに執行を開始する」


 僕はそう彼女達に告げる。


「はぁあ? 何言ってんだ、おま・・・・・・っ、がぁっぁ!」


 僕は中央の少女の頭に向かってリョナ子棒を思いっきり振り落とした。鈍い音が室内に響く。


「聞こえなかった? 本件はレベル3に移行したって言ったんだよ」


 左右の女達は何が起こったか理解できず目を見開いて停止している。


「僕は何回か警告したよ。でも聞き入れてもらえなかったね」


 真ん中の女子は頭を垂れ下げたまま動かない。今度はその伏せている顔目掛けて棒を振り上げた。その反動で上半身が強制的に起こされ、顔は天井を向かされる。それでも骨が折られた鼻からはドクドクと血が流れ出ていた。先ほどまでうるさかった女は白目をむいて静かになった。


「え、え、え、なに、ちょっと、冗談でしょ・・・・・・」


 残る対象者は二人、どちらも顔面蒼白で狼狽えていた。


「刑が決定したら、僕はそれが男だろうが女だろうが、子供だろうが老人だろうが手加減は一切しないよ」


 次はどちらに罰を与えるかと首を左右に振って顔をみた。よし、右の子にしますかね。


「君はこれから彼氏に会うんだっけ? じゃあおめかししようか」


 僕は彼女の髪を掴み顔を上げされる、逆手でとったリョナ子棒を右目に向かって力強く突いてやる。


「ふぎゃあああやぁぁ」


 絶叫を上げる彼女、でもまだ終わってないよ。


「今度は左目だね」


 同じように、ちゃんと左右対称してあげる。

 女は双眼を固く閉じ涙を流しながら狂ったように首を振り回し始めた。勿論その間、叫喚を上げ続ける。


「さて、最後は君だね」


 僕が向き直ると、女は眉の付け根を上げ、口角を下げながら絶望の表情を見せる。


「や、やめ・・・・・・ゆるし・・・・・・」


 来た時とはまるで別人だね。怯えちゃってまぁ。


「・・・・・・あ、一応聞きたいんだけど、なんで痴漢されたって嘘ついてたの?」


 どんな理由があったとしても刑の執行は止まらない、でもこういう事をする者の心理に少し興味がある。


「そ、それは杏璃が、金も手に入るし、面白そうだからって、オヤジ達の慌てる姿が馬鹿みたいで・・・・・・私はただ付き合っただけで、悪いのは杏璃で・・・・・・」


 僕は呆れすぎて深い溜息をついた。想像通りの答えすぎる。実は過去に酷い事をされてその復讐のためって、わけないか。


「遊び半分で他人の人生狂させちゃいけないよ。一度狂った歯車は例え無罪を証明されても中々修復されないんだよ」


 僕はリョナ子棒を構え直した。


「で、嘘をついた悪い口はこれかな?」


 そう質問しながら無理矢理女の口に棒を突っこんだ。喉の奥まで差し込む。


「むぐぅ、むぐあっ・・・・・・!」


 これ以上進まない場所まで来ると、手首をひねり回した。女は呼吸もままならず、激しく咳き込むが、僕の手は休まない。


「咥えるのは得意そうに見えるけど、やっぱり苦しいかな?」


 逃げられないように頭を掴み、激しく出し入れを繰り返す。途中女は何度も嘔吐を繰り返す。


「む・・・・・・これ僕が掃除するんだからね、あまり汚さないで欲しいなぁ」


 一通り執行を終わると僕は仕上げに入った。


「これがレベル3。今度なにかしたら初犯でない君達は未成年でも執行レベルは上がるよ。これ以上の痛みを知りたくなければ真面目に生活するんだね・・・・・・って聞いてないか」


 三人組は皆気を失っていた。これで少しでも反省してくれるといいのだけど。


 後日、彼女達が関わった事件の被疑者は全員無罪になったという情報を耳にした。


 以前担当した男から僕宛に手紙が来ていたけど、それは読まずに机にそのまましまった。


 お礼の手紙だったのかもしれない、でも今回僕が担当したからなんとか男性の無実は証明されたけど、別の拷問士だったならそのまま執行していた、と思う。


 冤罪は、国の罪、司法の罪、そして拷問士の罪。


 僕は拷問士だから、彼にお礼を言われる・・・・・・資格はない。  


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