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おや、なにか始まりそうですね。


 お久しぶりです、蓮華です。

 最近は随分暑さも和らいできました。

 とはいっても、私は大体この仕事場兼居住区から滅多に出ませんので関係ありませんけどね。 


 さて、今日はここに私のチームメイトを呼んでおります。

 彼女達のお陰で最近は随分仕事が捗ってるんですよ。

 今までは私がここから指示を送っても中々他の方では期待に応えてもらいないかったものです。ですが彼女達はそれ以上の成果を返してくださいます。

 検挙が難しかった殺人犯もこの所スムーズに捕まえられました。


「レンレン、ういー」

「来たよー、蓮華ちゃん」


 お、エレベーターの扉が開き、彼女達が来たようです。


「態々すいません、どうしても直接話を聞きたかったんですね。私から色々仕事を押しつけて忙しいのは分かってるのですが・・・・・・」


 私がそう言うと、いつも笑顔のドールコレクターと、眠そうな眼の円さんが一緒に不満を漏らしました。


「ほんとだよぉ、私達もそんなに暇じゃないよ」


「そ、そうだ。私達は忙しい、のだ。特に姉御は神コレのイベントが始まってて、今最深部で激戦、なんだ。こっからは一日張り付かなきゃだって、言ってたぞっ」


「ちょっと、円ちゃん、口閉じようか」

  

「なるほど、つまりそこまで忙しくもなさそうですね、よく分かりました」


 ゲームをしてる時間があるなら、問題ありませんね。


「くぅ、ま、いいか。後一日あればクリアできるし、でも掘りは諦めなきゃだねぇ。で、蓮華ちゃん、用事はなに? 私達じゃないと駄目なの?」


「ええ、ちょっと殺人鬼の貴方達の意見が聞きたかったのですよ」


 そう、私が彼女達を呼んだのは、今抱えてる二件の殺人事件の見解を聞きたかったからです。

 他にも思惑はあるのですが、それは後で出しましょう。

 警察も、私達が余りに手柄を横取りするので情報を出し渋ってきてるんですねぇ。

 面子よりも大切なものがあるとは思いますが、一定の理解はしています。


 私は軽く経緯を説明した後、二人に事件について話し始めました。


「まず、最初の殺人事件です。行方不明の少女が遺体で発見されました。衣服は身につけており、手足は拘束され、体十に無数の傷跡がありました。とにかく情報が少なく、犯人像も朧気です。警察の協力は期待できません。しかし、だからこそ先を越したい。こちらにそんな小細工は通用しないっていうことを示したいのです」


 こちらが足を使わないなら、代わりは必要です。これからも現場の情報を流してもらうために力を見せておきたい。


「ふ~ん。遺体の発見場所は?」


「人通りの少ないロータリーです。夜中に遺棄したと思われます。不審車両の目撃情報もありますので」


「拘束されてたって分かってるなら、死体にそのまま拘束具がついてたってこと?」


「そうですね、手足と顔にテープが巻かれてました」

  

「なるほどね、なら大体分かったよ」


 ドールコレクターは、私から少し話を聞くと、頷きました。


「殺人犯には、大きく分けて、秩序型と無秩序型があるのは蓮華ちゃんも知ってるよね。まず、この犯人は、証拠を残しすぎてる。秩序型はテープ、そして衣服は残さない。さらにそんなすぐ発見されるような場所に死体を遺棄するなんて考えられないよ。つまり、この犯人は無秩序型に分類されるね」


 ふむ、概ね私と同じ考えですね。

 ドールコレクターはさらに言葉を続けます。


「顔を覆うってのも無秩序型だね。やつらは被害者に人格を与えない。すぐに意識を失わせたり顔を隠して傷をつける」


「うくく、私も死体は、そのまま。だけど、糸は残さない。この犯人、頭が悪い、うくく」


 そうですね、基本的に秩序型は平均以上の知性があるのに対して、無秩序型は平均以下の場合が多い。しかし、無秩序型の厄介なところは、何かの拍子で見境なく人を殺し始める。そしてそれは捕まるまで止まらない。論理がないから、犯人が自供しないかぎり、動機などがよくわからない。


「秩序型は社交的で魅力はある人物、長続きはしないけど一定のパートナーは持ってる。逆に、無秩序型は自分自身が魅力が無いことを知ってる、でもそれが許せない。異性と一緒にいることはなく、ほぼ一人で暮らしている、もしくは親とだけ同居してるか」


 これも大体私の思ったままですね。必要以上に遺体を傷つけていたのでよほどの異常者かもと思いましたが、結局は考え無しの犯行です。


「つまり、この犯人は、車を使っていたから少なくとも18歳以上で、臆病な性格で前科はなし、一人暮らしをしていて、仕事はしてても自分の能力に見合った単純な作業、しかしそれも長続きはしない。無秩序型は大体犯行場所と遺体発見現場はイコール。でも明らかに別の場所から遺棄してるなら、犯行は車の中かな。もしそうなら傷がどこかに集中してると思う。車内は狭いからね」


「なるほど、なら犯人はすぐ捕まりそうですね。杜撰すぎます。移動もわかりやすいかもしれません。大通りの防犯カメラを調査してみましょう。車種の情報さえ聞き出せば割り出せるかもしれません」


 こっちはなんとかなりそうですね。

 さすが一流の殺人鬼という所でしょうか。

 ま、この二人は、金剛型、じゃない混合型というレアパターンなので両方の心理がわかるのでしょう。


「さて、最初の事件は実は私もそれなりに同じ見解をしてたのですよ。で、本当の問題はこっちです」


 私は、そう言うとテーブルの上に引き延ばした数枚の写真を広げました。


「これは?」


 二人の目が、写真に釘付けになりました。

 遺体の写真です。それもかなり特殊な。


「先日、女性の遺体が発見されました。かなり凄惨です。でも、なぜか大きなニュースになってません。それは、彼女がある職業だからです」


 その情報は国家機密。

 余計な詮索をされないように、事件は関係者しか知りません。


「すごいねぇ。目は抉られ、左腕がない。お腹は何カ所も刺されてる。所々穴も開いてる、なんだろ、これ」


「左腕の傷口、見たこと、あるぞ。これ、相当の切れ味だ、一発だ」


 二人は交互に写真を見比べていきます。

 口元がつり上がってる事に自分自身気づいてはいないでしょう。


「目の抉られかたがすごく綺麗。形を崩さないように慎重にやってる。こんなのリョナ子ちゃんレベルじゃないと出来ないよ」


「凶器は複数です。・・・・・・実は私、一つ一つには心当たりがあるんですよ」


 それは私が、長年追ってる殺人鬼達。

 奴らの手口は散々見てきました。

 この写真には類似点が多いのです。


「ある者は、眼球をこよなく愛し、ある者は血を飲む事に快感を覚え、ある者は人を切る事に喜びを感じる」


 でも、腑に落ちません。奴らは単独犯。決して交わることはないのです。個性が強すぎる。 なのに、これは一体。


「うふふ、蓮華ちゃんは、あいつらの仕業だって感づいてるんだね。でも、それが同時に起こるとはどうしても思えない」


「うくく、これ、わざとレンレンに教えてる、のだ」


 二人が、写真を投げ捨てました。

 結論は出たみたいです。


「簡単だよぉ。強烈な個を、つなぎ合わせる人物がいるって事だよ。単独では私達にいづれ追い詰められる。だから、協力しはじめた。まだ遊び足りないんだね」


「レンレン、言え、言うのだ。心当たりを、全部。それが、私達の、敵だ」


 二人の目が心なしか輝いてます。

 一瞬、口にするのを躊躇いましたが、もう遅いですね、私は彼女達の闘争心に火をつけてしまったのかもしれません。


「遺体から推測するに、犯人は複数。その手口から・・・・・・私の追ってる殺人鬼達と見ていいでしょう。まず、眼球アルバム、そして首切り、吸血殺人鬼。陵辱しながら腹を滅多刺し、これは殺人カップル。そして、これらを統括する謎の人物。少なくとも五人以上がかかわってます」


 口に出したくなかったですよ。

 だって一人一人でも厄介なのに、まさか協力するなんて。頭痛がしてきました。

 少し目立ちすぎましたかね。

 相手に危機感を与えるほどに。


「蓮華ちゃん。これ、あえてわかるようにやってるよね。それってさ・・・・・・」


「うくく、そうだ、レンレン、わかってるぞ、態々私達を、ここに、呼びつけてまでこれを見せた、つまり、そういう事、だ」


 二人は私の顔を覗き込みます。

 なにかを待ってる。

 ま、元々そのつもりで呼んだんですけどね。


「はい、これは私達への宣戦布告です。全員レベルブレイカー級といっていいでしょう。敵は強大、でも逆にこれはチャンスと見てます。一気に巨悪を一掃できると」


 また、外に出ることになりそうですね。

 私一人ではさすがにどうしようもなかったでしょう。

 でも、今の私には心強い、・・・・・・仲間がいます。


 54件の殺人、死体で人形を作っていた異常殺人鬼。その名は、犯罪者の中に轟き、もはや知らぬ者はいないでしょう。超一流のシリアルキラー、ドールコレクター。


 同レベルブレイカー、その能力は私やドールコレクターも認める所。捜査の目をかいくぐりながら血の海を作り上げ、私に初めて確保時に傷を負わせた唯一の人物。切り裂き円。


「貴方達の力が必要です。私に協力してください」


 私はリスクが高い事もあり、改めて二人に頭を下げました。過去、一度もした事がありません。尊敬できない者は、たとえ年上だろうが、上司だろうがしたくなかったから。


「うふふ、ここは元々私の狩り場だったんだよぅ。それなのに捕まったからって好き勝手荒らしてるんだね。これはお仕置きしなきゃだよ」


「いいな、思うがままに殺せて、いい、くそ、私もやりたいのに。これは、うらやま、死刑だ!」


 どうやらやる気になってくれてるようです。

 とても心強い。とはいえ、相手も一筋縄ではいきません。


 レベルブレイカー対現役殺人鬼。

 

 さて、この先は私でも予想できそうにありません。


 どれだけの血が流れるのでしょう。

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