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おや、結局こうなりましたか。(対殺人愛好会 蓮華の後編)

 こんばんは、蓮華です。

 今、私は月明かりを頼りに校舎の廊下を歩いています。

 夜の学校、なんだかドキドキするシチュエーションです。

 連なる窓から差し込む光がどこか幻想的で・・・・・・。

 でも、今現実に行われてるのは殺人ゲーム。

 現在、この建物内にいくつ死体が転がってるのでしょうね。



 さて、殺人愛好会、残りのメンバーを探すとしますか。

 ただ闇雲に探しても疲れるだけですね、なんせここはかなり広いのですから。

 メンバーの行動はバラバラです。積極的に狩りを行う者、待ち伏せる者。 

 あっちから来てくれれば楽なんですけど、彼らも殺して満足とはいかないでしょうし、そうなると。


 あまり期待せずに一旦、外に出ました。

 校舎を背に、校庭を見渡すと、真ん中に死体が四つ。

 オーナー、初老夫婦のものです。早々と殺されてしまいましたね。全く非道い事をする。

 左方から気配を感じ、顔を向けると、暗闇から見知った人影が見えました。


「お、蓮華ちゃん。珍しいね、自分から動くなんて」

「・・・・・・ドールコレクター」


 近づいてくる彼女をよく見ると、襟首を掴んで人を引き摺っています。


「はぁ、貴方もですか・・・・・・」


 その顔には(あーだこーだ)


「一応、生け捕りって言ったんですけどねぇ」

「うふふ、生きてたよぉ。三本くらいまでは・・・・・・ね」


 もう判別は不可能な位損傷してますけど、彼はボーガンで逃げる者を狙う役目だったはず。 

 そのボーガンを奪われて、何回もゼロ距離で(あーだこーだ)されたのでしょう、全くこちらはこちらで非道い事をする。


「やってしまった事はもうしょうがないですが、他にいましたか?」

「ううん、いなかったね。外にはこの子だけ。普通、もう一人くらい配備しそうだけど」


 私もそう思います。一斉に客が逃げたら対処できませんからね。閉じ込めた訳でもないですし、愛好会側に対して客の方が多すぎる。


「単に深く考えてないだけか、それとも・・・・・・」


 ここで私は振り返り、瞳に校舎を取り込みました。

 明かりがついている部屋は、四つ。


「まさかと、思いますけど・・・・・・」


 自分達から居場所を教えてくれてますか、これ。


「罠かもしれませんけど、ちょっと行ってきますね」


 私はそうドールコレクターに残し、再び校舎の中へ戻ります。


「ねぇ、蓮華ちゃん。もしかしてだけど・・・・・・いるかも、だよ」

「・・・・・・そうですね、一応頭には入れておきます」


 振り向かず、私は残りのメンバーの元へ。


 光が漏れていた部屋を潰していきながら、三階に上がりました。

 部屋に近づくと、私の耳に声が届きます。


「すご、うあ、すごいね、こうなってるんだ」

「これが、(ウインナー)、だよね。で、こっちが・・・・・・」


 ドアの小窓からそっと中の様子を伺うと、少女が二人、しゃがみ込んで何か興奮しているご様子。ここは合宿で来ていた陸上部の男部屋でしたね。男子生徒達は4人共、目を閉じて寝ています。その内の一人を少女達が囲っていて、■の中身を観察してるんですね。


 胸から下腹部までを(あーだこーだ)、中身を(あーだこーだ)い少年はまだ生きています。

(あーだこーだ)が小刻みに(あーだこーだ)してました。

 私は戸を開けて、中へ踏み込みます。

 少女達は突然現れた私に、驚いたようにこちらに顔を向けました。


「だ、誰!?」

「なに、あんた」


 二人は咄嗟に私へナイフを向け、臨戦体勢をとろうとしたのですが。

 

こういう場合、どれだけ相手より早く動けるか、それが勝負です。


 私は一瞬で距離をつめると、立ち上がろうとした少女の腕を掴みます、引き寄せるとそのまま腕を捻り、後はお辞儀するように手首の関節を曲げます。少女の手からナイフが落ちました。

 後は、体重を乗せたまま倒れ込み、腕をへし折ります。


「きゃがががぁぁぁ」


 への字に曲がった腕を押さえ、少女は床でうねうねと悶え苦しんでます。半分に引き千切った蚯蚓みたいですね。

 すぐに、低姿勢でもう一人の胸に飛び込みました。

 刃物を持つ腕を掴み、抱きかかえるように相手を倒します。

 あっけにとられていた女の子は、簡単にマウントをとらせてくれました。

 

 体には激痛が走る場所がいくつもあり、手や腕にも存在しています。

 肘付近、手三里と呼ばれる場所に親指を食い込ませます。

 これだけでこの子からも武器を奪えました。

 後は簡単です。馬乗りになった私は、彼女の髪を掴み、少し頭を浮かせると拳を何度も彼女の顔面に撃ち込みます。この時、地面とサンドするようにするのがコツです。ダメージが大幅に向上しますので。


 打撃と床への打ち付けで、気づいたら少女の意識はありません、いつの間にか顔が血だらけで白目を剥いて気を失ってました。

 ふぅと一息ついて、立ち上がります。


「これで五人ですけど・・・・・・」


 改めて教室を見渡すと、他の男子生徒はやはり昏睡してるだけみたいですね。

 なるほど、若い男性だけ動かなくしたのでしょうか。食事の際なにか混ぜたのですかね。

 私達はどちらにしろ警戒して食べませんでしたけど。

 このゲーム、所々、稚拙さを感じますが、たまに感心する部分もありますね。

 やはり、先導してるリーダーがいるのでしょう。

 親近感を覚えますね、私と一緒で仲間が思うように動いてくれないみたいです。


 とりあえず二人を縛り、私は放送室に向かいました。

 そしてマイクで一斉放送をかけます。


「あー、こちら昆虫採集部です。殺人愛好会の方。殺人愛好会の方ー。私の考えでは残り一人だと思います。5人ほど行動不能にしましたので。そこで最後の一人に向けて言いますね。今から私達が貴方を追い込みます。逃げるもよし、迎え撃つもよしです。ですが、私以外に見つかると厄介ですので、早々にここ、放送室に来て下さい、じゃなきゃ死にますよー」


 これで良し。素直に言う事を聞いてくれればいいのですが。

  

数分後、現れたのは、一人の男子でした。


「あ~、返り討ちにされちゃったかー。まさか、あんたらみたいな化け物が混じってるなんて思ってもなかったなぁ」


 この子は、たしか郷土研究部の部長でしたか、名は音無。


「・・・・・・ここに来たってことは、大人しく捕まるって事でいいですか?」


 私の質問に、彼はかぶりを振った。


「まさか、三人の中で、あんたが一番好みだってだけだよ。その腹の中身、どうなってるの? ねぇ、見せて、見せて、引き出して、顔を突っこんであげる」


 彼は包丁を出しました。


「いいですよぉ。見て下さい、たっぷり、じっくり」


 私は両手を広げ、彼に近づきます。

 そして・・・・・・。

 

 一閃、縦にナイフを振り抜きました。


「え・・・・・・」


 風が巻き起こり、顔から股まで赤い線が引かれます。服が裂け、それに伴い肌もぱっくり開かれました。


 〈蓮華ちゃん活躍中〉


「いっぱい見て下さい。ただし自分のですけどぉ」

「うあわ、うわああっぁ」


 彼は必死に中に戻そうとしています。

 そういえば、ドールコレクター達が言ってましたね。たしかにとても滑稽だ。


「計り違いましたね。しょせん、貴方達は偽物の小者だったんです」


 私は混乱している彼を置いて、放送室から出ます。


「ま、まって、悪かった、です。た、助けて・・・・・・」


 そう懇願する彼に、去り際にこう言い放ちます。


「調子に乗るな・・・・・・糞餓鬼が」


 他の者よりは多少資質はあったみたいですが、結局こんなものですね。

 もしかして本物かと思いましたが、期待外れでした。

 あぁ、眠いです。連絡したら一眠りしましょう。



 翌朝、私達はこの場を後にします。後は本部の人達がうまく処理してくれるでしょう。


「いっぱい、死んでしまいました。残念です」

「いや、おかしい」

「そうだねぇ」


 私の言動に二人は異を唱えます。


「なにがです?」

「レンレンなら、誰一人犠牲者を出さずに、あいつらを無傷に捕らえられた、はず、なのにやらなかった」

「そうだねぇ」


 あら、わかってましたか。この二人は騙せませんね。


「・・・・・・だって、なにもしてないで捕まえても未遂になるだけじゃないですか。そしたらまたやるでしょ。二度手間ですよ」


「ふ~ん、あえて殺させて罪を作らせたのか、蓮華ちゃんも非道いねぇ」


「それは心外ですねぇ。私はただリョナ子さん達、拷問士の負担を減らしただけですよぉ。未遂ならレベル1でしょうし、あのまま捕まっても未成年でレベル4止まりでしょう、それだと何度も執行するはめになっちゃいます」


 私がそういうと、二人は納得して頷きました。


「そう、か。ちゃんリョナさんに迷惑はかけられない、ないのだ」


「うんうん、リョナ子ちゃんのためになるなら誰が何人死のうが関係ないよぉ」


 分かってもらえましたか。良かったです。この二人にリョナ子さんの名は効果絶大です。


「それにしても、今回貴方達、何人殺したんです?」


 愛好会は全部で6人でした。私が三人、捕らえましたけど。


「私、3人、だった、いや4人か」

「私も、4人かなぁ」


 あれあれ、おかしいですねぇ。数が合いませんよ。

 私が無効化したメンバーをあの後どさくさに紛れて殺したにしたって、オーバーしてます。

 

 ふぅ、まぁいいでしょう。今回ちょっと彼女達を連れて来たわりには、簡単なお仕事でした。 

 やはり相手もレベルブレイカー級じゃないと物足りませんね。

 近々、思う存分ぶつかって貰いましょう。

 

 私、その時どんな化学反応が見られるのか、少し楽しみなんですよ。

 本当は音無くんがもっと凶悪だったのですが、この話で終わらせるために結局中途半端な小者になっちゃいました。もし次があったら強敵を出したいと思います。

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