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おや、標的でしょうか。(対殺人愛好会 蓮華の前編)

 ここからでも読めるような読めないような番外編です。国家公認賞金稼ぎ蓮華ちゃん視点で、殺人鬼達二人と一緒に活躍する、ような話、になる予定です。

 こんにちは、蓮華です。

 国家公認犯罪専門の賞金稼ぎをやってます。


 私あまり動くのが好きじゃないので、大抵は本部の地下に籠もって情報を集めてるんですね。 とはいっても、実際捕まえる段階になれば嫌でも腰を上げなきゃならないのです。

 それが本当におっくうで、毎回溜息が出てたのですが・・・・・・。

最近、とんでもない仲間? というには信用はありませんね。友達、でもないですし、なんでしょう、手足というには従順でもなく、とにかくすっごい人材を手に入れたのです。それも二人も。


 彼女達の働きは凄まじく、頼んだ事は勿論の事、私のして欲しい事を先読みしてこなしてくれます、だからもうここの所検挙率が半端ありません。たまに、逃げられちゃった、てへなんて言うときもありますけど、彼女達が取り逃がすわけがありませんから、多分うっかり殺しちゃったのでしょう。そこは目を瞑ろうと思います。


 そんなわけで、彼女達が手伝ってくれた最近のお仕事についてお話しましょう。



 残虐キツネ:今日はボーガンで鳥三匹落としたわ。


 暴君ウサギ:私も友達のペットさらってきて解体したよ。


 惨劇ネズミ:友達なの、それ(笑) でも正直、もう動物じゃ飽きちゃったよね。


 殺戮キリン:そうだね、そろそろ次のステップに行く頃じゃない?


 憤慨ヒツジ:それ思った。もう犬や猫じゃなぁ。



 残虐キツネ:人まじで殺したいね。


 暴君ウサギ:どんな反応するんだろ。


 惨劇ネズミ:きっと必死に命乞いするんじゃない。


 殺戮キリン:想像すると興奮するわぁ。


 憤慨ヒツジ:でもさすがに人やったら捕まるよな。



 残虐キツネ:でもでも捕まってもどうせ死刑にはならないよ。


 暴君ウサギ:だね、私達はここで足踏みしてる存在ではないと思う。


 惨劇ネズミ:だったらさ、やるからには、徹底的にやらないと。


 殺戮キリン:たしかに、結局捕まるなら一人、二人じゃ勿体ないよね。


 憤慨ヒツジ:二桁はいかなきゃね。どうする? まじでやる?

 

 一同:やろう。やっちゃおう。そうと決まったら計画を立てよう。歴史に残るような、後世へ語り継がれるような大惨事を、私達が起こしてやる。



 最近暖かくなってきました。

 早い所では桜も咲き始めたみたいです。

 心地よい風がそっと肌を掠めます。

 そんな晴天にも恵まれた日。


 私達女子三人は、あるツアーに参加する事になっていました。


「で、そしたら、内蔵が出ちゃって、うくく、それを必死に戻そうと、うくくく」

「うふふ、あるある。でも戻らなくて、その必死な様が滑稽だよね」


 私の後ろを談笑しながら歩いてる二人が、今回一緒に連れてきた、えっとまぁ殺人鬼です。

 でもただの殺人鬼ではありません。どちらもレベルブレイカー、簡単にいえば規格外な方々なのです。


 殺人鬼には大きく分けて二種類います。

 俗に言う知能型と、暴力型ってわけです。

 基本的にこの二つは相反するものなのですけど、この二人は両立してるレアケースなんですね。無秩序に殺しまくったわりには、一つ一つがちゃんと計算されてて足を見せない。真っ直ぐかと思うと、ねじ曲げてくる。


 なにものにも支配されない、それは快楽や衝動といった自分の感情でさえ。

 そんな彼女達だから、自分が認めた相手の言うことだけには耳を傾けます。

 自分でいうのもなんですが、一応私も彼女達に一目おかれているので、提案や意見はちゃんと聞き入れてくれるのですよ、それが唯一彼女達と私が一緒にいられる理由です。


「蓮華ちゃん、それでここどこ?」

「私、たちに、なにをさせる気だ、させようと言うのだっ」


 あぁ、そういえば言ってませんでしたっけ。


「廃校になった学校がですね、改装してペンションにしたんですよ。とはいってもほとんど原型を保ったままですがね。で、そこに一泊します」


 ここは一面緑に囲まれた、自然豊かな、言い方を変えますとド田舎です。


「・・・・・・遊びに来たって訳じゃないよねぇ? 後から分かるのかな?」

「レンレンが、態々、私達を連れて来た、それは、あれだ、多分、血が、うくく、流れる」


 察しがよくて助かります。いちいち説明するのも面倒なので、後は二人に考えてもらいましょう。


「元学校ですから、言葉通り学校並に広いです。今日は、私達の他に、観光の家族、大学のサークル、部活の合宿、様々な理由でお客さんが沢山来てますよ」


「ふ~ん、ならその中に混じってるんだねぇ」


「レンレンが、動く、それすなわち、屑虫、の類い、だ」


 心なしか二人の目が光ったように感じます。


「ま、それは行った後のお楽しみです」


 バスを降りてから一時間、私達は目的の場所へ歩きました。



 木造の校舎につきました。

 出迎えてくれたのは、この村から選出されたオーナー兼村民の夫婦。


「やぁやぁ、よくぞこんな遠い場所へお越し下さいました。貴方達で最後ですよ、今日予約のお客様は皆さん集まりました」


 人の良さそうな60代くらいの初老のオーナーは笑顔で私達を案内してくれました。


「貴方達の部屋は、四年三組です。二階になります、あ、夕食は皆さん全員で元職員室の食堂で食べますので、その時は放送で呼びかけますね」


「あ、わかりました」


 まだ下駄箱は残っていて、そこに靴を入れると、歩く度に、ぎしりと音を立てる廊下を歩いて行く。年期の入った階段を上って四年三組に。


 教室だった。机や椅子の代わりに、ベットが三つ。テレビや冷蔵庫もちゃんとある。無理矢理宿泊できるようにしたって感じですね。

 大きいカーテンを開けると、校庭が見えます。かつては子供達が走り回っていたのでしょう。 しばらく、覗いていると、数人の男女が外に出て行きました。

 今日の宿泊客でしょう、さて、あれがそうなのか、はたまた。



 夕食まで特にすることがないので、教室、いや部屋でゴロゴロしていました。

 他の二人は、探検だーとはしゃぎながら出て行きましたけど。

 一応、今はあんなですけど、彼女達にも幼少期はありましたからね、色々懐かしいのかもしれません。

 辺りが暗くなり始めた時、元々備え付けられていたスピーカーから声が響きました。


「えー、皆さん、お疲れ様です。夕食の準備が整いましたので各自、一階の食堂までお越し下さい」


 私はベットから体を起こしました。

 これで漸く宿泊客の顔が全員見られます。



 長テーブルが三列、すでにいくつかの席が埋まっていました。

 食事は給食風にしてるみたいですね、トレイや瓶牛乳が昔の記憶を呼び覚まします。


「皆さん、折角なので、軽く紹介いたしましょう。明日の予定では近くの川で魚釣りなどをしますので、ある程度顔を知っておいたほうがいいでしょう」


 オーナーがそう促すと、各グループの代表者が席を立ち、メンバーを紹介しはじめた。


「○○大学郷土研究会です。私が部長の音無です、それで右から・・・・・・」


「私達は○○高校陸上部です。明日からは練習があるので皆さんとはそれほど絡むことはないとは思いますが・・・・・・」


「定年を機に、妻と旅行中の江島です、こちらが妻の・・・・・・」


「子供に自然と触れあって貰いたくて家族と来ました、井口です、これが・・・・・・」


 順に名乗り、そして私達の番。


「えっと、昆虫採集部、仲良し三人組です。私が蓮華、こっちの眼帯してる子が葵ちゃん、そして眠そうな目で歯がギザギザなのが円ちゃんです」


「どうも、どうも~」

「よ、よ、よろんしくん」  

 

 白いワンピースの私と、黒と青のゴスロリのドールコレクター、赤黒のストライプドレスの切り裂き円、昆虫採集部はちょっと無理があったでしょうか。


 さておき、これで全員の顔を拝めました。

 宿泊客は私達を入れて20人、オーナー夫婦を加えてここには22人。

 私もですが、ドールコレクターと切り裂き円も、きっと感じたでしょう。


 どの括りが異常なのか。

 わかったはずです。

 だって私達もまた異常なのですから。


 あっちは気づいてますかね、あまりに深く広い闇ですから、見渡すのも一苦労なはずです。


 部屋に戻り、私はさっそく銃の手入れを始めました。


「ん、なんだ、そんなの出して、あ、やっぱり、血か、血が飛び散るの、か」

「なにが起こるのかなぁ~、楽しみだよぉ」


 二人は体を揺らせてウキウキモードです。

 

 二時間後の午後九時にそれは唐突に起こりました。


 しんと静まりかえった校舎、外から聞こえる虫の音、蛙の鳴き声。そして私達のいる教室のスピーカーが音を発したのです。


「あ、あ、ごほん、えー、皆さん、こんばんは。私達は、殺人愛好会です。さっそくですが、今から皆さんを殺害していきます。逃げてもいいですが、こちらもそれなりの用意はしています。なので、逃げる者を優先的に殺していきますので。後、部屋に閉じこもるのもお勧めしません。こちらも全室の鍵を手にいれています。嘘かどうかは、窓から校庭をご覧下さい」


 機械的な音声、男女の区別は付かない。そんな声に誘われ、私達はカーテンを開け、校庭に目をやった。

 そこには意図的に照明ライトが置かれ、ど真ん中に照らされた人影が見えました。


「ん~、あれってたしか、だよねぇ」

「うくく、血まみれ、二人いる、さっき見たぞ、あれ」

「そうですね。オーナー夫妻でしょう。真っ先にやられちゃいましたか」


 白かったエプロンが今は赤に変わっています。

 仲良く並べられていて、全く動かない。手足が縛られているようですけど、だからというわけではないでしょう。

 再び放送が響きました。


「これでこちらが本気なのが分かって頂けたでしょうか。さぁ、ゲームを始めるとしましょう。どうか、皆様、お楽しみくださいませ」


 最後にそう告げ、放送が終了しました。

 

 私は、ベットに腰掛け直します。


「半信半疑でしたが、実際行動しましたね。検閲ついでに見つけたんですけど、ビンゴでした」

 

 私と反対に二人は即座に動きます。


「あぁ、一応殺さないで下さいね。相手が何人か見当はついているでしょうけど、一応全員生け捕りが望ましいです」


 返事はないですね。二人はドアを開け放ちました。


「私、右にいくよぉ」

「じゃ、じゃあ、私は、左、左にいくのだ」


 こうして二人は夜の校舎に消えていきました。

 あぁ困りました。ゲームを楽しむ気満々ですね。

 でも、しょうがないです。


 始めたのはそちらなのですから。

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