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なんか、事ある毎に衝突するの。

 翌日、今度はドク枝さんが僕の部屋を訪れた。部屋は寒いので暖かいコーヒーを煎れて差し出したんだけど。


「私、紅茶がいいのだけれど・・・・・・コーヒーって苦いし」


 などと朝からイラッとさせてくれた。


「ドク枝さんは紅茶派でしたか・・・・・・コーヒーが苦手とは可哀想に」


 僕がぼそっとそう言うと、ドク枝さんの触覚が反応した。


「可哀想ってどう言うことよ。コーヒーなんてただの泥水でしょ。違いも豆だけでしょ、紅茶のような明確な種類の違いも・・・・・・」


「はぁ? 何言ってるんですか。エスプレッソでも、カフェラテ、カフェモカ、マキアート、カプチーノ、アメリカーノ。ドリップは、ブレンド、アメリカン、フレーバーなど、豆に至ってはモカ、ブルーマウンテン、マンデリン、コロンビア、キリマンジャロ、ブラジル、ガティマラなど様々、さらに焙煎も浅煎りのライトローストから深煎りのイタリアンローストまで事細かな・・・・・・」


「え~い、うるさい、結局全部黒いのよっ! 紅茶はね、ダージリン、ウバ、キーマン、アッサム、キニア、ニルギリ、ディンブラ、さらにフレーバーティーになればアールグレイ、 イングリッシュ、ブレックファスト 、 アイリッシュ、ブレックファスト 、 プリンス・オブ・ウェールズ 、ロシアンキャラヴァン。そして等級はオレンジペコ、フラワリー・オレンジペコ、ブロークン・オレンジペコ、ペコ、フラワリー・ペコ、ブロークン・オレンジペコ・ファニングス、ここから品質が高い、ゴールデン・フラワリー・オレンジ・ペコ、ティッピー・ゴールデン・フラワリー・オレンジ・ペコ・・・・・・」


「あ~、ペコペコうるさいっ!」


 本当に、もうペコペコペコペコ。


「なによっ! なら、もっと言うわよっ! シルバー・ファイン・ティッピー・ゴールデン・フラワリー・オレンジ・ペコォォっ!」


「ならこっちは、ベンティアドショットヘーゼルナッツバニラアーモンドキャラメルエキストラホイップキャラメルソースモカソースランバチップチョコレートクリームフラペチーノぉぉぉぉっ!」


 ちょっと違うけど対抗するにはこれしかない。


「なかなかやるわね。正直飲んでみたいわ、それ」

「ドク枝さんこそ、ここまでペコがあるとは思いませんでしたよ」


 こうしてお互い歩みよった所で、朝の不毛な争いは幕を閉じた。もう帰っていいかな。



 さて、今日は僕がドク枝さんの前で執行する番。


「どれどれ、リョナ子の腕前、見せてもらいましょう」


 あんまり突拍子もない事をすると、ドク枝さんの事だから激しくつっこんで来ると思ったの。だから今回オーソドックスな拷問を行う事にした。


「今日の罪人は、昨日と同じレベル3ですね。元交際相手の裸の画像をネットに流出、被害女性の名誉を著しく傷つけたと。振られた腹いせですかね」


「最低な男ね。でも、写真を見るかぎり、女性の方も同意で撮ってるから浅はかと言われてもしょうがないわね。リャナ子は簡単にこういうの撮らせちゃ駄目よ」

「撮る相手がいませんから、大丈夫です。それにそんな後先考えない行動は取りませんよ」


 ドク枝さんと語らいつつ、準備を進める。

 床に稜線、角が上に来る三角柱を並べていく。五本ほど繋げた所で罪人が部屋に通された。


「手は拘束したままで、服は下着だけ残してそこに正座させて」


 係員が男を、僕の指示通りに囚人服を脱がせると、設置した座り板に座らせてくれた。そして僕は男の太ももの上に座布団を一枚引く。


「これは、また貴方にしては単純ね」

「こういう昔からあるやつの方が、効果が実証されてる分、執行も確実なんですよ」


 まだ何もしてない状態でも、自分の体重が重みになり男の顔は苦痛で歪んでいる。まだ始まってもいないのにね。


「さぁ、行きますか」


 僕はそういうと、男の左太ももに勢いよく腰を下ろした。


「ふぐごぉっ」


 目と口を封じられた男が溜まらず声を漏らす。

 昔は、ここに石の板を一枚ずつ乗せていった、大体一枚50キロだったらしい。

 そんなの僕には持って積み上げるなんてできないから、有名な割にはほとんどやってなかったの。


「ドク枝さん、片方の足、残ってますよ」

「あら、いいのかしら」


 ドク枝さんは開いていた太ももにお尻をつけた。僕らは背中合わせになる。


「ふごごぉぉぉ」


 罪人から僕の時よりさらに大きい呻き声を上がった。


「おや、ドク枝さんの方が効果があるみたいですね」


 僕が皮肉ると、ドク枝さんの触覚が揺れた。


「リョナ子、それどういう意味よ」


「いや、僕の方が軽いんでしょうね、ドク枝さんがいてくれて助かりました」


「私、五十ちょいしかないわよっ!」

「僕は五十もないですけどねぇ」


 ドク枝さんがむぎぎと背中で僕を押してきた。


「痛っ! ちょっとドク枝さん、なにするんですかっ!」


 僕もお返しと背中でアタック。


「あっ! この、先輩に向かってっ」

「先に手を出したのはドク枝さんでしょうっ」


 ドク枝さんがまた攻撃してきたので、僕も反撃する。激しく体を揺さぶっていく。

 罪人はその度、脛が角に食い込み、さらなる苦しみが襲う。


 執行を終えると、男は安堵と痛みで涙を流しながら大声で泣いていた。


「あらあら、大の男がみっともない」

「これを撮って名前付きでネットに流してやりますか」


 勿論、そんな事はしないけど、少しでも被害者の気持ちがわかればと思う。


「ま、執行の方は普通よね。口を出すまでもないわ。こんなの二級でもできるもの」


「そうですね、やはり特級の腕前は高レベルの執行じゃないとわかりませんよね」


 普段でも五以上の高レベルは滅多にこないし、ましてやディスカッション中にタイミング良く来るとも思えない。


「もっと、リョナ子に見せつけてやりたかったわ」

「僕も同じですよ」


 明日でこの共同執行も終わりだけど、何も起こらないまま終わりそうだね。


 なんて事を思ってた僕だけど、次の日、高レベルの執行を行う事になるとはこの時点では知るよしもなかったの。


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