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おや、余所者が来たみたいですね。

 蓮華視点とは名ばかりの結局シスト視点。

こんにちは、蓮華です。


いやはや、何故か私、殺人鬼連合とマーダーブリゲードの抗争に巻き込まれてしまいました。


 ここは、私達昆虫採集部の拠点が一つ。

 コンクリートで囲まれた、その地下です。


「どうだい?」


 私は銃を構えていました。

 隣には兎の仮面をつけた女性。


 狙いは壁に拘束された男。マーダーブリゲードの一員。


 すでに数発撃ちました。

 ですが、一発も当ててません。

 銃弾は全て壁に。

 

 わざと外したのは、例え、撃った場所が四肢だとしても、脚部の大腿動脈が損傷すると止血はほぼ不可能。腕や肩も同じで、鎖骨が砕けると、鎖骨下動脈が損傷してこれまた止血が困難。

 映画などとは違って、現実では出血が止まらず出血性ショックで失血死しちゃいます。

あくまで生かしておく場合ですけど。


「いいですねぇ。P320。キックが抑えられて連射しやすいです。リコイルも感じませんし、さすがSIGの新時代といった感じでしょうか」


 私は新しい銃を試していて、とてもテンションが上がっております。


 これ、デューティピストルというコンセプトと聞いていたため、撃ちにくいかなと思っていましたが、全然そんな事ありませんでした。ストライカーシステムはこれが初めてですが、元々P250がベースみたいですし、うちのシグちゃんファミリーに迎えたいですねぇ。


「それは良かった、気に入ったならあげるよ。お得意様に日頃のご愛顧さ」


「わぁ、ありがとうございますっ」


 私はさらに気持ちを高揚させて。


 それはそうと。


 さっそく、その銃を男の顎に突きつけます。


「それじゃあ、そろそろお仲間の居場所、聞いていきますか」


 現時点ではまだ敵が何人いるか把握しておりません。

 ドールコレクターと円さんは別行動。

  

 この男、自分から私達の前に現れたのですね。

 勿論、返り討ちでしたが、それにしても不思議です。

 私達の存在はすでに周知の事だったのか。

 私が動いた瞬間、奴らは姿を現した。


 とりあえず、定時連絡を先に済ませましょうか。


「もしもし、ドールコレクターですか。そっちはどんな感じです?」


「あぁ、蓮華ちゃん。こっちはねぇ、探すまでもなく、私達の前にマーダーブリゲードの仲間が現れたの。それで今捕まえたところだよぉ。これから円ちゃんと一緒に色々するの」


 ふむ、あちらも同様ですか。 

 てことは、多分、シストさんの方にも。


「分かりました。なにか得たら連絡ください。ほどほどにー」


 私達の行動が読まれているのか。

 余所者がどうやって。


「まぁ、それはこれから聞くとしましょう」


 とはいえ、この男は捨て駒でしょう。こっちの戦力を量ってる段階。

 だから、なにか知ってるとは思えませんが、一応です。  



二時間後、結局なにも喋りませんでしたね。

 最初からなにも知らなかったのかも。


「蛇苺さん、もう少し様子を見ましょう。あちらから来てくれるなら好都合です」


「オーケー、んで、こいつはどうしよ?」


「あぁ、少し眠ってもらうことにしましょうか」


「う、うぅ・・・・・・もういい、だろ、俺は・・・・・・なにも・・・・・・」


 懇願するような眼差しを向ける男。


「ラジャー」


 当然無視してそういうと、蛇苺さんの軸足が地面に強く接触します。

 そのまま、ハイキック。

 男の顔面に強烈な蹴りが放たれます。

 どでかい音と共、壁に少し罅が入りました。

 これは永遠の眠りになったかもしれませんね。



 こんにちは、シストです。

 今、僕達は、敵の潜伏先の一つに来ていました。


 僕が贔屓にしてる情報元から入手したのですが、どうやら待ち構えられたみたいです。

 まぁ、瑞雀ちゃんもいたのでなんの問題もありませんでしたが。


「ほら、ほら、刺すぞ、刺しちゃうぞぉ」

「他の仲間、他の拠点、全部いいなよ、じゃなきゃ」


 数体の死体の中、まだ息がある男に、タシイと目黒ちゃんが問いかけます。


「本当に、知らないっ、俺らはアリアさんの指示に従っただけだっ」


 潜んでいたのは、8人。僕らだけじゃ危なかったね。敵もこちらの戦力を量りかねてる段階か。


「タシイ、目黒ちゃん、もういいや。また情報が入った。次に行こう」


 うまい具合に新しい情報が舞い込んだ。

 順調だね。

 いや、若干順調すぎる気もする。


「じゃあ、こいつはもういらない?」

「殺しちゃっていいのかな?」


 僕は背を向けて、短く頷いた。

 途端に、背後から絶叫が響き出す。


それはそれで聞き流しつつ。

 

 これはもしかして罠か。

次は何が仕込んであるか分からない。

 一旦、落ちつく必要があるかも。


 そんな事を考えていたら、意外な人物が僕らの前に現れた。


「おい、キラキラ、なんか姉御が借りを返してこいって言ったのだ。だから、こっちを手伝ってやるのだ、ありがたく思うのだ」


 切り裂き円。ドールコレクターの姿は見当たらない。

 一人で来たのか。これはとても珍しい。


「あぁ? なんだ、お前。お姉ちゃん無しで大丈夫か、おい」

「足手まといになりそうだ。死にそうになっても今度は助けないぞ」


「はぁぁ? 姉御がそう言ったのだっ、それはあれだ、私ならできると思ってくれてるって事だっ!」


 少々不安ではあるけど、いいタイミングで仲間が増えたね。

 切り裂きを先に踏み込ませて様子を見られる。


 捨て石にするのは丁度いいけれど。



 そして、新たな情報元であるマーダーブリゲードの潜伏先へ。


 そこは地下にあるバーだった。

 まだ、夕刻前、営業はしていない。


「よし、じゃあ、まず切り裂き円が・・・・・・」


 最初は切り裂きを使って中の状況を確認しよう。

 そう思ったのだけど。


「おにねー様、ここは私と目黒ちゃんが先にいくよ」

「そうだね、切り裂きは後詰めでいいんじゃないかな」

 

 警戒してないのか、していてなおそう言ってるのか、二人はそういい先導を切った。


「・・・・・・・・・・・・」


 仲間を危険にさらしたくはないけど、ここで切り裂きになにかあったらドールコレクターが本気で怒りかねない。


「分かった。慎重にいこう。ただ、先行は瑞雀ちゃんだ」


 瑞雀ちゃんは本来僕達の仲間じゃないからね。こういう事は頼むべきじゃないんだけど。


 瑞雀ちゃんは短く頷くと。


 一気に階段を飛び越える。

 ドアを蹴破り。


 真っ暗な室内に。


 暗闇に閃光が瞬く。

 銃声と悲鳴。


「よし、私も続くのだっ!」


 後方にいた切り裂き円が駆け出した。


「いやいや、ちょっとっ」


 僕の制止も聞かずに飛び込む切り裂き。


「おいおい、待てやっ!」

「アタシ達も行こうっ」


 タシイと目黒ちゃんもそれに続いた。


 あぁ、どいつもこいつも、困った人達だな。



 仕方なく、僕もゆっくり階段を降りる。

覗き込むように中を顔を入れると。


 すでに何人か床に伏せていた。瑞雀ちゃんがやったのだろう。

 確認できるだけだと、立っている敵はすでに一人。

 

 でも、そんな事よりびっくりする事態が。


「うぅ、しくったのだ。は、離すのだっ!」


 その男に首を取れて、腕を巻かれ押さえつけられている切り裂きの姿。


 嘘でしょ。なんなのあの子。


「おらぁ、武器を捨てろぉっ! こいつを殺すぞっ!」


 瑞雀ちゃん、タシイ、目黒ちゃんは、立ち尽くしている。

 どうしていいか分からないのだ。

 

 僕が指示を送る必要がある。


 これは仕方ないだろう、完全な自業自得。

 切り裂きは協力関係だけど、仲間ではない。


「・・・・・・残念だけど」


 構わず殺せ。

 そう口にするはずだった。

 だが。


 タシイの手からバールがするりと落ちた。

 目黒ちゃんも千枚通しを投げ捨てる。


 瑞雀ちゃんだけはそのままだったけど。

 これはあまりに予想外すぎて、僕の口の動きも止まっていた。


「おい、見逃してやる、だからそいつを離して、さっさといけや」

「そうだね、そいつを殺したら今度はお前の番だよ。考えられる限りの痛みを与えて殺してあげよう」


 正直、仲間の行動にあっけに取られてしまったけど。

なんとなく理解はできるよ。

 切り裂きはどことなくほっとけない雰囲気がある。

 これはもしかして、僕やリョナ子さん同様に、切り裂き円には惹きつける何かを持っているのかもしれない。あの器だけの人形が妹としてあれだけ可愛がってる時点で疑いようがない。


 思わず笑い出す。


「はは、とても僕の知ってる二人の言動ではないね。でも、まぁ、その子は大事な預かり者だし、ここは要求を飲むとしようか」


 僕がそう告げた瞬間だった。


 切り裂き円を押さえていた男がぐらつく。


 倒れる男の首元にはナイフが深々を突き刺さっており。

 背後から現れたのは、これまた想定外の人物。


「どうも、どうも~」


 にこやかに。

 普段通りの彼女の笑顔。


「うふふ、円ちゃんから連絡を受けて先回りして潜んでたんだよぉ」


 首元からナイフを引き抜いて。


「じゃあ、次はアリアちゃんの所に行こうかぁ」


 特有の表面上だけの微笑みを見せて。

 彼女はそんな事を言った。


 次は葵視点で色々回収の予定です。

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