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なんか、確定みたい。(先輩編)

 赤玉模様の白頭巾。本名は非公開。年齢は11歳。


 通っていた学校の担任を含む全クラスメートを殺害。給食に薬物を混入し、身動きできなくなった生徒を昼休み中に一人ずつ惨殺していった。


 少女は日頃から無視されるなどの陰湿な虐めを受けていた。それの腹いせだったと推測される。25人殺害の罪でレベルは16認定。

 それでも年齢を考慮して減刑された結果だった。


 執行するべきか否か、散々議論され問題はあちこちに飛び火、その末の決断で少女への執行は取り下げられた。加害者の体があまりにも幼く、レベル5の執行を一度受ければ死にいたると判断されたのも要因の一つだった。


 精神鑑定は、何度やっても正常判定を受ける。家族が身元引き受けを拒否したため施設に送致。その後施設を抜け出し行方を眩ます。

 

 葵ちゃんが白頭巾ちゃんだと目星をつけた理由はなんだろう。素直に聞いてみることにする。


「これがレッドドットの犯行だって思う根拠は?」


 葵ちゃんは殺人鬼の心理をよく理解する事ができる。その考察力は高い。


「うんとね、まず思ったのは、三人の足が手錠で繋がってるでしょ? これ、殺し合いさせられたんじゃないかなーって」


「・・・・・・そう思った根拠を聞きたいな。三人共、足以外は拘束されてない。動きは制限されるけど、それなりに自由が効いたんじゃないの? ナイフを持たされたのなら反撃しそうなもんだけどね。白頭巾だと仮定すれば相手は小さな女の子だし」


 葵ちゃんは僕の反論にちっちっと指を振った。


「見てもらえばわかるけど、三人が並んで片足に手錠を繋いだら、真ん中の人は両足に手錠がかかる事になるよね。中央の死体は頭部こそないけど体は無傷、つまり最初に殺されたんだと思うよ」


「・・・・・・なるほどね」


 ここでやっと僕も葵ちゃんの考えを理解した。

 つまり三人で殺し合ったのではなく、真ん中の死体を重りにされ二人で殺し合いをさせられたんだ。


 首無し死体は見た目大柄なので70キロ以上はありそう。

 切り口の出血から見て断首は死んだ後。それでは逃げるのも反撃するのも簡単には無理だろう。


「白頭巾ちゃんはそれを見て楽しんでたんじゃないかな。勝った方は助けるよ、なんて甘い言葉でその気にさせて。相方が拷問してる間の暇つぶしだね」


「もしそうなら最初の仲間がやられた時点で、なんですぐ抵抗しなかったんだろう」


 銃かなにかで脅されていたのだろうか。


「それはわからないけど、私なら最初に一人殺すよね、そしたら思考が追いつく前に二人へ死なない程度の傷を負わせる。抵抗力は即座に奪っておくの。使ったナイフは中々取れない背中にでも刺しっぱなしにしておく。二人が訳も分からず悶えてる内に手錠を足にかけ離れたらゲーム開始の合図を送る。って感じかなー」


 葵ちゃんの予想が正しければこの殺人鬼はそうとう質が悪い。それと同時に命を玩具にして無邪気に遊んでいる幼稚さも感じる。たしかに白頭巾ちゃんの仕業って思うのも納得がいく。


 二人の死体にはいくつもの刺し傷や防御創があった。


 本来、何回も刺すのは素人だ。反撃や相手が中々死なないがための恐怖心から無我夢中で刺し続ける。

白頭巾ちゃんが直接手を下したのは重りにされた男だけだろう。首か頭部を一突きで仕留めたのかも、だから体は無傷。


「確定ではないけど葵ちゃんの推測は正しそうだね」

「でしょっ! 犯人も絞れそうだし、これからどうする?」


 葵ちゃんはウキウキと肩を揺らせている。何か期待してるみたい。


「いや、なにもしないよ」


 僕はこれから帰ってまた仕事をしなきゃならない。葵ちゃんは僕の言動に眉を垂らして膨れ顔を作った。相当不満げだ。


「え~、これから二人で協力して犯人を追い詰めるんじゃないの~!?」

「なんでだよ。僕は探偵でも捜査官でもない。犯人を捕らえるのはプロに任せるよ。僕の仕事は他にある」


 僕がはっきりそう言うと、葵ちゃんは膝から崩れた。


「・・・・・・そんなぁ。せっかくリョナ子ちゃんを一緒に居られると思ったのに・・・・・・」


 葵ちゃんならともかく、拷問しか能がない僕にどうしろというのだ。


 それにあの人が大っぴらに行動し始めたのだ、計画が無いわけがない。

 そんな警察の真似事しても追い詰められるはずもない。僕の出番があるとすれば、二人が仕事場に連れてこられた、その時だ。


「ま、そんな訳だから葵ちゃんは一人で頑張ってね。なにかあったら連絡頂戴」


 僕はひらひらを手を振って葵ちゃんに別れを告げる。急いで帰らないと。罪人が僕の帰りを待ってるからね。



 数日後、なにかあったらしく葵ちゃんから連絡がきた。


「ちょっと~、今、忙しいのだけれど、重要な話なんだろうね?」


 両手が塞がってたので受話器を頬と肩で押さえる。


「うん、すごいよっ! 私ね、あの後、二人を調べていったんだけどね、そしたらね・・・・・・」

「・・・・・・うん、それで?」


 話ながら僕は仕事を続ける。片手には金槌、片方の指には釘を持ち罪人の柔らかい肉へ打ち付ける。今は腕の最中。


「むぅうぅぅう、むぃぅぅぅいぅぅっ!」


 ボール型の口枷から呻き声が漏れる。刺さる度にそれは大きくなる。


「あっちから会わないかってコンタクトをとってきたのっ。リョナ子ちゃんの事ご指名だったよっ!」

「嘘っ!? それ本当なのっ!」


 ちょっと予想外だったので手元が狂った。狙いがズレて腋下近くに深く突き刺してしまった。


「あっ! やっちゃった。これもう腕動かないわ。・・・・・・ま、レベル4だしいいか」


 ちょっと早いけどこれで終わりにしよう。本当は後数回やろうと思ったけど、大きいのやっちゃったからね。


「リョナ子ちゃん? 聞いてる?」


「あぁ、ごめん、ごめん。聞いてるよ。会うのはいいけど、この所多忙だからねぇ、今度の休みでいいか聞いてもらえる?」


「あ、うん。わかったよ。次の休みっていつなの?」


「やだなぁ。そんなの葵ちゃんなら知ってるでしょ。じゃあ、よろしくね。ちょっと血が止まらないからすぐ治療班呼ばなくちゃなんだ、じゃあね」


 電話を急いで切ると、続けて執行を終えた罪人の治療を要請した。


 しかし、あっちから姿を見せるなんてよっぽどだね。


 もう、この時点で犯人の正体が確定的になった。


 久しぶりに会えるね。

 楽しみだよ・・・・・・先輩。

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