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あのね、それは葉桜になるの。後編

桜の木に吊された死体。

 死体はその一体だけではなかった。


 別の場所に三体。

 女と思われる遺体が二体、そして男性とみられる遺体が一体。

 

 女学生二人の遺体は自身達が通うクラスの黒板前。

 壁の左右に凭れさせるように。


 男性の遺体は校庭の中心でまるで夜空の星を見上げているかのように。


 いづれも同学内。

 死体となった生徒達が昨日まで通っていた学校。


どんな状況だったのか、一体被害者達に何が起こったのか。

 警備の者は行方不明で、今は何一つ分からず。

 ただはっきりしてるのはその全てが常軌を逸していたという事だけ。



 時は歯車が逆廻り。


 うふふ、葵なんだよ。


 ここは、学校の用具倉庫。校庭のすぐ近く。


 さっそく件の五人を捕まえてきたよ。


 さすがにニュースで騒がれてやばいと思ったのか今日はみんな一緒にいなかったね。

 シスターズを使ったとはいえ、一人ずつ捕まえるのはちょっと面倒だったよぉ。

 

 でも、殺るなら一緒。時間的、警戒される恐れ、その他もろもろ。


 手足を縛って、地面に転がる五人。


「おらぁああっ! なんのつもりだっぁあ!」

「ちょっと、はぁ? なになに、あんた達なにしてんの?」

「ふざけんなや、さっさとこれ外せ、こら、殺すぞっ!」

「・・・・・・・・・」

「・・・・・・・・・」 


 五人中、三人が喚く。他の女二人は無言だね。

 突然拉致されてきて、さらに拘束されているのにこの態度、逆に感心しちゃうよ。


でも、それは正解じゃないんだなぁ。


「円ちゃん、こいつら五月蝿いね」

「うんうん、そうだ、姉御のいう通りだ」


 私の一言に、円ちゃんが動いた。


 おもむろにナイフを取り出し、声を出していた女に近づく。


 切っ先を胸元に近づけると。


「え、は、ちょっ、え・・・・・・なに、すすすさあああああああああああああああああああがぁあああああああああああああああああああああああああああ」


 〈葵ちゃん、お遊戯中〉


 〈葵ちゃん、お遊戯中〉

 女はとにかく叫んでいた。


「うんうん、こっちは余計五月蝿くなっちゃったけど・・・・・・」


 他の四人を見る。

 皆、信じられない光景を目にし、声を失い目を見開いていた。 


 私はおまけとばかりに、〈葵ちゃん、お遊戯中〉。


「うふふ、ニュルニュル、上は動いて、温かく、赤く、黒い」


 〈葵ちゃん、お遊戯中〉


「・・・・・・うそ、で、しょ」

「あ・・・・・・あ」

「・・・・・・・・・・・・え、え」

「・・・・・・・・・・・・うぅ、うう」


 掴みはこんなもんかな。


「それじゃあ、みんな裸になって~」


 これから色々するからね、制服は邪魔なの。


「あぁ、でも、手足を縛られてるから無理かな」


 しょうがない、自分から脱いでく様も見たかったけど、私達がやってあげるか。


 こうして、衣服を切り裂き、四人を生まれたままの姿に戻す。

 もう、恥じらいより恐怖が勝っているから全く抵抗しなかったね。


「それじゃあ、まず、なんで君達がここに連れてこられたか、分かるかな?」


 私と円ちゃんが、態々ラブクラの制服を着てるんだから、よほど頭が悪くないかぎり理解できるはずだよね。

 

 でも私の問いかけ、誰も答えない。

 そうか、そうか、そうなのかぁ。


「円ちゃん、あれ持って来て」

「ういうい」


 今回ある道具を用意してたの。


手動式油圧なんたらーっ!」


 説明するよ。これは車の事故などで車内に閉じ込められた人を助けたりする時の道具で、ハサミのようなカッター部分を開閉することで、金属を切断したりするの。

 その力は、なんと太古の巨大鮫、メガロドンの噛む力に匹敵するんだよぉ。数値にして18.5トン。

 だから・・・・・・。


「こんな風に」


 手始めに私の一番近くにいた男の顔に近づける。


「いやいやいやいああああああ、ちょっ、え、まじ、待って、待ってくださいよぉお」


〈葵ちゃんお遊戯中〉


「いがやあああああああああああああああああああああああああ」


 男の絶叫が途切れるまえに、〈あれがあーなったの〉。


「すごーい、ナイフより簡単に切れたね」

「あ、姉御、姉御、私も、私もやる、のだっ!」


 円ちゃんも興味津々だね。

 じゃあ、交互にやってこうか。


〈葵&円、お遊戯中〉


 その度、夏の蝉よりもやかましい叫声。


「すごいのだ、(あれがあーな)のだっ!」

「(うふふ)ごといけそうだね、こっちの死にかけの女の子でやってみよう」


 (うふふ)、(うくく)を開いたままの女に、目を戻す。

 手首も足首も細いから丁度いいね。


「もう、すっかり大人しくなっちゃったけど・・・・・・」


 もう一回くらい鳴くかな。


 

 女の(あれを、あーなのだ!)して、男を適当に(あーやってあーだよぉ)してたら、二人はもう死んでたの。

 でも、まだ三人いるから大丈夫。


「こっちはどうしよう」


 私が三人を見下げて、口に出して考えていると。


「すっすいませんっ! ゆ、許して下さい、なんでもしますっ! もう本当、申し訳ありません、許して下さい、許してくださいっ!」

「わ、私も、助けて、もう謝ります、謝ります、謝ります」

「ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい」


急に謝りだしたの。気でもふれたかな?

 

「・・・・・・う~ん、じゃあ、君、頭を丸めて謝るかな?」


 男に声をかける。なんかツンツンしててなんだか格好いい髪型なの。


「え、は、はいっ! 坊主にしますっ! そんなことならいくらでもっ! 丸めます、丸めます、そして何度でも謝りますのでっ!」


「そうかぁ。誠意をみせてくれるなら私も考えようかなぁ」


 じゃあ、さっそく丸めてもらおう。


「円ちゃん、あれ持って来て~」

「ういうい」


 私の言葉で円ちゃんが持って来たのは。


「エンジン(なんたら)機ーっ!」


 長いパイプの先に丸い刃がついてて、ハンドルを両手で握って右に左にとやるおなじみの奴だね。

 エンジンをかけるとものすごい音が響きだした。


「よし、じゃあ丸めますかっ」

「ういうい、私がやる、やりたいのだ」


 最初からスロットル全開。勢いよく回転する刃。

 

「ちょっ! いやいやああいやいや、そうじゃないっ、丸めるってそういううううがああああああああああああああああああああああああああああああ」


〈円活躍中〉


「いがあっさ、がああああああ、やあべええ、ああがああいいだぁあぁいあいあいあ」


 エンジン音にも負けないくらいに叫んでる。

 慣れない動きで、円ちゃんがフラフラしてて可愛いの。


「あ、むづい、やば、(あれだ、あれなのだ)にいったのだ、これ、中々」


 あぁあ、(うふふ)の先が飛んじゃった。


「まぁ、どうせ、もう謝る気もないよね」


 こっちの男も(あーだこーだして、あーするんだよぉ)をパズルのように組み合わせて一つにしよう。バラバラ、されど、位置は正しく。

 大の字に校庭のど真ん中にでも飾っておこうと思う。


「で、こっちの女の子は・・・・・・」


 二人は泣きながら、身を寄せ合っていた。

 随分、仲がいいみたい。それに・・・・・・。


「ならさ、こうしようか」


思いついて、自然に笑っていたみたい。

 女達は、とにかく怯えていた。



 数時間後。


 私と円ちゃんは、お互い少女の遺体を背負って階段を上る。


「ふう、ふう、中々重いのだ」

「中身は取ったんだけどねぇ」


 この少女達の教室に辿り着いた。


 黒板の左右に配置する。人形を飾るように壁に凭れかけされる。


「これでよしっと」

「うんうん、さすが姉御、なかなかいい出来なのだ」


 見たところ、二人の背格好は近かったの。

 だからね。

 〈どうなのかはご想像にお任せするよぉ〉


 右半身と、左半身は別だけど、(あれはあーなんだよぉ)。


 前も仲が良さそうな子達がいたね。

 あの子達は、血も骨も皮も肉も、何もかも混ぜ合わせて一緒にしてあげたけど。

 身長差がなかったら今回のやり方でも良かったのに残念だったね。

  

「こんなもんかな。見せしめにはなったんじゃないかなぁ」


 後は、こっちで噂を流せばすぐに広まるよね。

 聖フィリップスラブクラフト女学院の生徒に手を出した者の末路。

 こういうのは噂程度が丁度いい。 


「でも、姉御、大丈夫か、レンレンにバレるんじゃないか?」


 そんなの当たり前だよぉ。蓮華ちゃんの庭でやってるんだからバレないはずがない。

でも。


「うふふ、大丈夫。私は知ってるの。蓮華ちゃん、こういうのには寛容なんだよ。過去に何かあったか知らないけど、学生の、未成年による、理不尽な、暴力には、彼女は、必ず目を瞑る」


 あの子は拷問士のファンだけど、あっち側の人間じゃない。

 むしろ、私達にとっても近い。

 だから、私達もやりづらい。


 にしても。


 少女の体を半分にしていた時の。

 もう一人の顔。

 次は自分の番だって。

 わかってるのに、でもどこか助かるんじゃないかって。

 そんなわけないのに。自分も半分に。

 脳から、顔から、胸から、肺から、心臓までも、何もかも半分になって。

 離れて、分け与えて、すぐに、なのに泣いて、泣いて、泣き続けて。

 

 うふふ、お菓子だよ、お菓子が美味しかった。

 円ちゃんがそういってくれて良かったね。

 じゃなきゃ、私はいつものように見えなかった。


 あぁ、とにかく、今は、喉が渇いて、しょうがないの。

 いまいち物足りない。

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