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あのね、潜入なの。

 どもどもー、葵だよ。


 本日はねぇ、また無茶ぶり任務のため海外に来てるんだよ。


「ドールコレクターっ! 円さんっ! ある人身売買組織のリストに我が国民が2名ほど入れられてるのが判明しましたっ! なので貴方達、ちょっと助けにいってきてくださいっ!」


「うひゃくく、うひゃくく、あぁ、もうレンレンっ! 姉御、まぢレンレンっ!」


 とまぁ、毎回のように私が蓮華ちゃんの物まねで説明したとこで任務スタートだよ。


 

 ここは様々な人種がはびこる大国。

 

 この地に立つまでには過程があるの。

 まず、蓮華ちゃんが自国にて人身売買組織の情報を入手。

 その際に、情報元である男を利用する事にした。大っぴらには言えない理由で懐柔。大事な者と引き替えっていえばいいかな。あちらの大使館や警察は言っても動いてくれない。

 で、私達はその男の護衛役を装い、売買会場へと向かうことに。

 

 その前に、蓮華ちゃんからもう一つ。


「ふむ、貴方達の格好はあれですね。護衛というには見合いませんね。あぁ、そうだ。いっそ男装してください。あっちの人達にはこちらの顔は区別つきませんから大丈夫でしょう」


 とまぁ、そんな結構適当な提案の元、私達は慣れないスーツに身を包む事に。


「いいねぇ、円ちゃん、意外と似合ってるよぉ」

「あ、姉御もあれだ、すっごい男前なのだっ!」


 私は元々ウィックだから、耳が隠れる程度の黒髪にチェンジ。

 円ちゃんは、サイドテールを後ろのちょい上に束ねただけ。

 私達は目付きがもう堅気じゃないからこういう場所では押し通せるはずだよぉ・・・・・・多分だけど。

 

 大都市の一角。夜も更け、昼間の日光はネオンの光に様変わり。

 そこは表向きはバーだった。

 中に入り奥へ進むと、扉があり体格のいい男がその前に立っている。


 今回利用している男、ジョナサン飯島が男に招待状を見せる。

途端に険しい表情だった男がにこやかに微笑んだ。


「オー、ドウゾユックリシテッテクダサーイ、ア、ブキハコチラデオアズカリシマース」


 カードキーを翳して扉が開く。

 体裁のために持っていた銃を手渡す。どうせ使えないから問題ない。あ、ナイフだけはちゃんと隠してあります。

 そして私達はさらに中へと。


 広い倉庫のような場所に繋がり。

 まず目に飛び込んできたのは、まるでファッションショーのようなステージ、その上に設置された巨大なモニター。

 そこには商品であろう、女達の顔、そして詳細が映し出されていた。

人種、年齢、そして値段。時よりソールド、売り切れの文字が。


「うふふ、これは凄いねぇ」

「わわ、これ、あれか、人の取引か」


 ステージ上には数人の女達が裸で立たされていた。

 それを見定めるように、ぐるりと並べられたテーブルと椅子には買い手が座っていて酒を飲みながら周りと談笑している。

 身なりのいい男女、人相の悪い奴ら、ぱっと見普通の一般人もどきなど様々。


「痩せすぎてるのは趣味じゃねぇ」

「健康そうなら見た目はどうでもいい、欲しいのは中身だ」

「子供がいいな、色々使い道も多い」


 客達は好き勝手そんな事を話していた。


「姉御、姉御、あいつら買われてどうなる、どのようになるのだ?」


「そうだねぇ、たいがいあれだよ、強制労働、性的搾取、臓器移植ってとこかな。なんにせよ、売られた先は地獄にしか繋がって無いね」


 さて、今回の任務は案外容易い。


 目的は自国民の救出。手段は問わない。

 なので、単純にジョナサンを通して買えば良い。

 それで終わり。


 私達はお目付役に過ぎず、このまま見張っていればいいのだけど。


「折角だし、少し遊ぼうかぁ」

「お、まぢ? やっちゃう? 姉御、なにする?」


 見取り図はすでに入手していたので監視カメラの位置は把握している。

 ここには銃を持った用心棒も数人。AKー47だっけ、さっきからチラチラ周囲を伺い警戒している。


「円ちゃん、蓮華ちゃんはとても頼りになるけど完全に信用しては駄目だよ。最後まで信じられるのは自分だけ。円ちゃんは円ちゃんの力を持たなくてはならない」


「ん? どういうことだ?」


 今回、私は独断で葵シスターズ全員を連れて来ていた。

 

「まずは私の力を見せてあげる」


 私はそういうと、その場でしゃがみアタッシュケースを開けた。

 うまく死角になるよう中からM50とかいうガスマスクを取り出す。


「はい、これつけようか。まず下顎から・・・・・・」

「ん、なんだ、え、んん・・・・・・」


 私は円ちゃんの顔にそれをしっかり装着させる。

そして素早く自分の顔に被せた。


「よし、はじめようか」


その言葉を合図に。

 元々薄暗い会場のライトが一斉に消える。

 一瞬でこの場が真っ暗闇に。


 妹達が動く。カメラをジャック。会場を外から閉鎖。


 そして中になにかが投げ込まれる。

 

唐突にそれは実行された。会場内にいた者はなにが起こったか理解できない。

 その間、立っていた者は倒れ、座っていた者はテーブルに突っ伏したり床に転げ落ちたり。


 数十秒ののち、電源が戻る。

充満したのは非致死性ガス。


「一応怒られるのは嫌だから、ステージの商品は介抱して・・・・・・」


 明かりがついて会場に立っていたのは同じマスクをつけた数人の女性。

 私の指示で昏睡している商品を奥へと運び出す。


「さ、円ちゃん、ステージにいこうか」

「う、うん??」


 まだよく状況を理解していない円ちゃんを連れだってステージに飛び乗った。

 うふふ、よく見えるね。ゲスが大勢、まだ意識が辛うじてある者もいる。


 背中越しの大型スクリーンが光る。

 先ほどまで商品を映していた画面が様変わり。


 そこに出ているのは、今回の買い手の顔。つまり今この場で蹲ってる者達。

 両手を大きく広げる。

 

「貴方達は私が買ったよぉ」


 声と共に分割され表示されていた顔画像が一斉にソールドアウトの文字へ。


「さぁ、円ちゃん、好きな人を解体しよう」

「おっ! そういうこと? よし、やろう、やるのだっ!」


 円ちゃんが嬉々として舞台から飛び降りる。

 さて、私はどれにしようかな。


 ナイフを取り出して・・・・・・。


「目玉が大体二つで12万、肩が4万、心臓が952万、肝臓が1256万、脾臓、胃は4万、小腸が20万、腎臓が2096万、胆嚢、約10万、肺が1000万で骨髄が一グラム200万。他にもいっぱい。うふふ、人の体ってお高いねぇ」


 国によって相場は変わるけど、そうなると私の作ってたお人形は値段をつけたらいったいいくらになるだろう。


「まぁ、私は可愛い女の子のモノしか興味はないけれど」


 切り刻むだけなら誰でもいいよね。


「・・・・・・う・・・・・・ぅ・・・・・・たす・・・・・・」


 お、この人は意識があるね。

 床を這いつくばる女が一人。身なりがとてもいいし、セレブっぽい。

 必死に体を動かそうとしている。そんな女の頭上に私はしゃがみ込んだ。


「勝手に動いちゃ駄目だよぉ」


〈葵ちゃん活躍中〉


「貴方は私が買ったの。だから、こうして・・・・・・」


〈葵ちゃん活躍中〉


「ぎぁやっ!・・・・・・ごぉがばぁががう」


 女は一際大きな悲鳴を上げたのち、喉の奥から豪快に嘔吐した。


「あらら、きちゃないなぁ。まぁそういう訳で耳を取ろうが・・・・・・」


 今度は髪を引っ張り顔を持ち上げると、そのまま力いっぱい嘔吐物が広がる床に叩き付けた。


「うふふ、その綺麗な顔を潰そうが・・・・・・」


〈葵ちゃん活躍中〉


「こうして背中を何度も刺そうが・・・・・・」


〈葵ちゃん活躍中〉


「私の自由・・・・・・だよぉ」


 あれ、もう死んだかな。全く動かない。

 いいや、次次。


 円ちゃんの方を見てみる。

 若い男を見下ろしながら色々やってる最中。


 あっちの相手もゲボってるね。ガスのせいだろうけど口からさっき飲食してた内容物が逆流して垂れ流れている。


「この状態でゲロるとあれだ、窒息しちゃうのだ、それじゃつまらんから、他の穴をあけてやるのだっ」


 そんな事を言ってたと思うの。なんせこのガスマスクは声が籠もる。

 〈円活躍中〉


それじゃあ私も、今度は・・・・・・どれにしようかな。

 辺りを見渡す、商品はまだまだ陳列されていた。


 ある者は意識のないままこの世を去り。

ある者は朦朧とした意識の中で肉を裂かれ。


「あ、すっかり忘れてた。この人どうしよう・・・・・・」


 そういえば、一緒にいたジャナサン飯島も意識がないままテーブルに顔を埋めていた。


「ま、いいか。もう用済みだよね」


 私は同じテーブルにあったフォークを取ると、首元目掛けて・・・・・・。

 何度も・・・・・・死ぬまで。



 こうして無事、対象商品を助け出し。

 私達は任務をコンプリートしたのでした。


 人身売買の組織は、調達、移送、売却とグループに分かれてるけど、残りは蓮華ちゃんのお仕事。受け入れに中継エリアを挟んだり中々巧妙だけど一度手をつけたなら完遂すると思う。

 大元の原因は様々で、それは貧困だったり災害などの孤児だったり。手段も誘拐、詐欺、そして実の親が売ったりと。

 売春や麻薬なんかと一緒だね。買う人がいるから供給される。

 人が人であるかぎり、多分こういうのは無くなることはない。


 

 帰り際の飛行機で、隣の席で寝息を立ててる円ちゃんを見る。

 満足したのかとても気持ちよさそうに寝ている。


 その頭を優しく撫でながら呟く。


「いづれ私の力の全てを円ちゃんにあげるね。だから・・・・・・」


 それまでは私が大事に見守ろう。


 死が二人を分かつまで。

 あ、150話目でした。ここまで続けてこれたのも読んでくださる方々のおかげでございます。ありがとうございます。

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