表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
148/167

ういうい、普通の一日なのだ。

 祝日なので連続更新、激レア円視点。

 ういうい、円なのだ。


 なんか、あれだ、今日は姉御とちゃんリョナさんで映画いくみたいだ。


 それは数時間前。

 

 この前の立てこもり事件、本来すっごい事件なのに結構迅速に解決した。

 ちゃんリョナさんは、さすがだ。レンレンや姉御が関わったと察したみたい。

 

「ドールコレクター、円さん。リョナ子さんからなにか日頃のお礼がしたいと提案がありました。ですが、私は上から呼び出しをくらっているので、残念ですが貴方達だけ行ってきて下さい」


 レンレンはそういう。ちゃんリョナさんが、私達三人になにかしてくれるというのだ。

 でも、私も気が利くのだ。ここは姉御だけで行って貰おう。


「う~ん、それはすごく素晴らしい提案なんだけど、円ちゃん一人で大丈夫かな?」

「ういうい、私はやるときはやるのだ、だから大丈夫だ」


 正直、姉御がいないと不安。

 でも、いい機会なのだ、今日は存分に二人きりで楽しんできてもらおう。


「・・・・・・そういえば、そろそろドールコレクターの誕生日ですね。貴方とリョナ子さんを二人きりにするのは不本意ですが・・・・・・そうですね。今回は譲りましょうか・・・・・・」


 文句をいうかと思ったレンレンだったが、意外にもお許しを出したのだ。

 それより、もうすぐ姉御の誕生日だったのか。知らなかった。

 なにか、プレゼントをやりたい所存。

 なにがいいだろうか。私は世間に疎いからよくわからないのだ。



「じゃあ、行ってくるよぉ。円ちゃん、なにかあったらすぐ連絡するんだよぉ」

「ういうい、大丈夫、存分に楽しんでくるのだ」


 姉御も少し不安そうだったが、やはりちゃんリョナさんとのデートはとても楽しみのようで、ウキウキで出て行った。


 さて、久しぶりに一人。

 ゲームも飽きたしなにをしようか。


「そうだ、プレゼント買うのだ。探しにいこう」


 二人でいたら選べない。丁度良かった。

 こうして私は街に来る出すことに。



 あ~めが降ったら皆殺しー。

 か~ぜが吹いても皆殺しー。

 や~りが降っても皆殺しー。


 歌いながら街を歩く。

 

 それにしても週末だからか人が多いのだ。

 こんなに人って必要なのか。これだけいるならいらない人間もいっぱいいそうなのだ。


 人混みをかき分けアーケードを進んでいたら。

 背筋になにか走った。

 とても冷たい冷たい、なにか。


 はっと振り返る。

 

 ある種の同族だけが感じられる直感。

 やばいのが、いるのだ。


 これだけの人の中でもすぐに分かった。


あっちもこちらを向いていて。

 自然と目があった。


 あいつは。


 前にレンレンが自分の網にかかってる犯罪者のリストを見せてくれた。

たしかその中に・・・・・・いた。


「この中でも、要注意人物がこいつです。行動範囲は多岐にわたり、この街には今まで三回来ています。私が動こうとすると霧のように消えてしまうのです。なかなか勘の鋭い人物で、数種類の格闘技をかじっていて以前慢心した暗部組織が返り討ちにあってます」


 肉を絞っているのか、身につけているスエットはダボダボ。

 少年を好み。公園や街で獲物を物色。目星をつけると言葉巧みに誘い込み、力づくで行為におよび、その最中に喉を食い千切るのが常套手段。

 たしか通称。


 ソードフィッシュ。


 男は私をみて少しだけ口元をにやつかせ。

 そして、近くの裏路地に入った。


 あ、逃げたのだ。

 いや、これは誘ってるのか。


 どうする。

 レンレンはもし捕まえるなら昆虫採集部全員であたるっていってたのだ。

 

 そのレンレンは呼び出しを受けている。

なら、姉御に連絡・・・・・・。

 それは駄目だ。今頃ちゃんリョナさんと映画を楽しんでる頃なのだ。

 邪魔するわけにはいかん。


 ここで追わなければ次にまた見つけられる可能性があるのかわからない。


 私はまだ結論が出る前に、裏路地へと入っていたのだ。


 

 奥に進むと、やはり待ち構えていた。


「お前、誰だ。一般人じゃない。俺と同じ匂い」


 値踏みするように私をまじまじと見てる。

 近くに来てよく分かる。

 こいつは、どっちかというと殺し屋の方に近いのだ。 


「どうでもいいのだ、お前を捕まえれば姉御に褒められる」


 やれる、私ならいけるのだ。

 ナイフを取り出す。


 喉を切り裂いて、それで終わりだ。




「うげぇえっ」


 相手の膝がもろに鳩尾に食い込んだ。

 派手に胃酸を吐き出す。


 なんなんだ、こいつは。

 こっちの攻撃が全然当たらないのだ。


「おらおら、さっきの威勢はどうした。当ててみろ」


「こなくそっ!」


 力いっぱいナイフを振るが、ソードフィッシュには簡単に避けられる。

そして、その度カウンターが来る。


「あががあっ」


 今度は肘で顔面を強く殴られた。

 一瞬、脳がぐらつく。


 自然と膝をついた。


 間髪入れずに蹴りが飛んできた。

 私は吹っ飛び、地面に倒れる。


「くそくそくそ、なんだのだ、こいつ」


 威嚇も効かない。同じ異常者相手じゃ無意味。


うう、姉御ぉ。思わず心の中で呟いた。

 ここまできたらもう逃げられない。

 背を向けたら、無防備な背中が曝される。


 まぁ、元より逃げるつもりはないのだ。


 立ち上げる。


「ふうふぅ・・・・・・全然効かんのだ。もっと、もっとこいっ!」


 ぐらつく膝に無理矢理指令を与えて。

 ナイフを強く握りしめる。


 無我夢中で飛び込むが。


 また倒される。

 そこに腹目掛けて何度も蹴りが飛ぶ。

 口から血が流れた。


「がぁあっ、がぁああっ」


 それでも相手の服を掴んでまた立った。


 でも、攻撃は相変わらず当たらず。

 また倒される。


 スマホはすぐポケットに。

 姉御の番号にはすぐ発信できる。


 その時、姉御の微笑む顔が浮かんだ。

 ちゃんリョナさんと一緒でとても幸せそう。


 ほんの少しだけ、手を伸ばそうとした。

 だが思いとどまり、それを戻すと。

 私は、また立ち上がる。


「はぁ、はぁ、全然効かないっていってるのだ、ほら、こい、かかってくるのだっ!」


 何度も食い下がる私に、ずっと笑っていたソードフィッシュも不機嫌な顔に変わる。


「はぁ? なんなんだ、お前、そろそろ命乞いをする頃だろう。誰かに助けを求める頃だろう、それなのになんでかかってくる」


 今まで素手で遊んでいたソードフィッシュが、ここで刃物を取り出した。

 いい加減いたぶるのも飽きたみたいだ。


「うくく、た、例え首だけになっても喉元に食らいつくのだ。私は死ぬまで死なないのだっ!」


 構える。

 もう体は満身創痍。

 案の定、すぐにきた脚への蹴りは避けられず。

 私はまた地ベタを舐めた。


「おう、さすがにしぶとすぎ。このまま切り刻んでやる。こうなれば意地でも泣き言を言わせよう」


 さすがにもう動けないのだ。いくら脳が命令しても。

 ソードフィッシュがしゃがんだ。

 手には光る刃物が。


 姉御、ごめんなのだ。

 私は駄目な妹だったのだ。

 

 

「おうおう、なんか血の臭いがすると思ったらよぉ。なんだ、お前、なに遊んでんだぁ?」

「いやいやよくいうよ、ずっと見てたの・・・・・・ま、この際いいか」


 聞き覚えのある声が聞こえたのだ。

  

 ソードフィッシュが私から離れた。

 二つの声はそのまま私の前に。


 見下ろされて。


「はっ、無様だな、切り裂きぃぃ」

「ボロボロじゃん、今日はどうした、頼りのお姉ちゃんはいないのか~い?」


 バールを持ったツインテール。

 千枚通しを持ったおかっぱ。


 九相図と眼球アルバムなのだ。

 なんで、こいつらがここにいる。


「な、なんだ、私は、別にお前らなんか・・・・・・呼んでないのだ、まだやれるの、だ」


 私がそういうと、二人は笑った。


「はぁぁ? だから来たんだろがっ! お前がピーピー泣いてたり、お姉ちゃんお姉ちゃんて叫んでたら素通りしてたわっ! お前は無様でも助けを呼ばず、惨めに命乞いもしなかった、だからほんの少しだけ気が向いたんだわ」


「切り裂きはアタシ達より歳下だったよね。なら今日だけアタシ達がお姉ちゃんしてやるよ、ありがたく甘えな」


 二人がソードフィッシュと対峙する。


「あぁ? なんだ、お前ら、仲間?」


 一般人ではないのはソードフィッシュも一目で分かったはず。

 

「気にするなや、魚野郎。私達は通りすがりの・・・・・・」

「ただの殺人鬼だよ」


 そう宣言して。

 九相図がバールを地面に強く叩き付ける。


「おらぁ、立てや切り裂きぃ。こっから逆転すんだろがっ」

「ま、三人がかりならなんとかなるっしょ」


不思議なのだ、さっきまで全く動かなかった体が言う事を聞いた。


「・・・・・・う、くく。そうだったのだ、やられた分は100倍返しなのだ・・・・・・」


 立ち上がる。

 倒れるのも立ち上がるのもこれが最後。

 次に倒れるのはそっちなのだ。



 そして。


「いや~、夢のような一日だったよぉ」

「そ、それは良かったのだ」


 幸い傷は目立たず、姉御に気づかれる事はなかったのだ。

 あの後、事の顛末はレンレンだけに話した。

 姉御に心配かけたくなかったし。


「すいませんね、今回うちの者が大変お世話になりました」

「いえいえ、タシイ言ってましたよ。あいつは近い将来絶対化けるって。だから今のうちに借りはいっぱい作っておくそうです。なので、お気になさらず」 


「そうですか、それは本人には内緒にしておきましょう、彼女調子に乗るので」

「それにですね、ドールコレクターが大事な妹を見てないわけありませんよ。なのでタシイや目黒ちゃんが助けなくても彼女はあの場に駆けつけたでしょう」


 レンレンが誰かと電話してるのだ。

 でも良かった。今日の姉御はとても幸せそう。

 

 これが見られただけで私は満足なのだ。

 円視点は多分あっても後一回。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ