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なんか、エレクトリックみたい。

 一応、名称は微妙に変えてあります。

 こんにちは、リョナ子です。

 執行局立てこもり事件から数週間が経ち、漸くここも落ち着きを取り戻してきた感じ。

 今回の件を受けて、大幅な組織改革が必要になり、職員、拷問士達の身辺調査を徹底、内部のセキュリティもさらに強化策が打ち出された。


 ま、それはそれとして、僕の仕事内容は同じなわけで。


 わたわたしていた間に、仕事は溜まっていた。

 特級の僕達もローテーションを組んで、対処する事に。


 特級拷問士は変わった人が多い。


 毒の拷問士、ドク枝さん。

 虫の拷問士、蟲盛さん。

 他には、銃使いやら、元殺人鬼などもいたね。


 そして、今回僕と合同執行をする拷問士は・・・・・・。


 その人の部屋に着いた。

 

「どうも、リョナ子です」


 軽めにノック。でも返事はない。


「どうもっ! リョナ子ですっ!」


 強めにノック。でも返事はない。


「入りますよー」


 扉を開く。

 この人の部屋に入るのは初めてだね。


 まず、印象を受けたのは、所狭しと部屋一面に飾られたギター。

一体、いくつあるんだ。


 そして、中央。

 ヘッドフォンをして、無我夢中でギターを弾いている女性。

 

 左右の三つ編みを後ろでお団子状に纏めたオレンジの髪。

 ヴィクトリア朝の服装には、所々歯車やらの金属が散りばめられている。

 スチームパンクっぽいけど、他の要素も色々融合されてる感じだね。

 

「こんにちはっ! リョナ子です、来たんですけどっ!」


 大声で叫ぶが、まるで聞こえていない。

  

「来たんですけどっ!」


 相手の肩を揺さぶって漸くこちらに気づいた。


「こんにちはっ、リョナ子です、来ましたよ」


 こちらを見たので、そう口にしたけど。


「え? あんだって?」


 聞こえてない。

 いや、ヘッドフォン外せ。


「ヘッドフォンっ!」


 自分の耳を指刺しながらそうジェスチャー。


「え? あんだって?」


 なんだよ、耳の遠いばあさんかよっ。

 

 頭にきたので、僕は強引にヘッドフォンを奪った。 


「あぁ、なにするんだっ、それ買ったばかりなんだよ~、スノーのMDR10000α、ビジリアンブルーが良い色だべした~」


 正直、どうでもいい。

 話が全く進まない。


 この少し訛りが入った女性が、今回合同執行のパートナー。

 特級拷問士、歌音さん。


「今日はよろしくお願いしますね」


「おう、よろしくだっ!」


 挨拶と共に、アンプに繋ぎなおしたギターをギュイ~ンと鳴らした。


 今回は、高レベルっていうより、数が多い低レベル執行を、どんどんこなす予定。 


「早速、職員にどんどん連れてきてもらいますね。交換、交換で行きましょう」


「おう、望むところだ~」


 そしてギュイ~ン。



「罪人入りますっ!」


「はい、どうぞ~」


 職員が罪人を運んできた。

 すぐに書類を確認。


「罪状窃盗、歌音さん、レベル2です!」


「おう、やるっぺよ」


 そう言うと、歌音さんは壁に目を移した。


「窃盗5件、なら、これだべ」


 壁に飾られていたギターに手を伸ばす。


「ファンダー、ジャズマステー、その名の通りジャズ対応のギター、ボディ形状はオフセットウェストコンターボディーの左右のくびれが非対称。それは座っていても演奏しやすい。通常のピックアップよりサイズが大きく、太くハリのあるサウンドが特徴だ~。そしてフローティングトレモロによって緩やかなビブラートも可能っ!」 


 説明しながら、椅子に固定された罪人の前に立つ。

なにをするのかと思っていたら。


「ライブスタートだっぺ!」


 ギターを握りバッティングフォーム、罪人の顔目掛けて力いっぱいフルスイングした。


「あゃぁぁぁぁあああああああああああああ」


 同時に悲鳴。歯が何本か抜け落ちる。

 口から大量の血が吐き出された。


「いいサウンドだべ、よし、次っ!」


 合図をすると、すぐに職員が新たな罪人を運んでくる。

 本当は僕の番だけど、やる気まんまんみたいなのでこのまま繋げる。

 書類を確認。


「数件の詐欺でレベル3ですっ」


「おう、ならこれだべっ!」


 また壁から一つ選び出す。


「ギブサン、フラインクっ! 発売されるのが10年早かったといわれる斬新なデザインはV型を逆さにした形状。見た目の鋭さと反してその音はオーソドックスで甘く太い。濃厚な中低音域からなるロングトーンが魅力的だべ。とても素直なその音は幅広いタイプのギタリストが愛用する。そしてこれは刺す事ができるっ!」


 刺す事ができるっ!?


「ほいさぁあぁぁ!」


 歌音さんが、そのギターを罪人の胸目掛けて、槍のように突き刺した。

 勿論、肉を貫くことはなかったが、歌音さんの何回も突くたび、罪人からは絶叫が響く。 


「はい、次っ!」


「えっと、傷害罪でレベル3です!」


「おう、じゃあ、あれだっ!」


 またギターを取り出す。


「リッケンパッカー、333っ! 大きなダブルカッタウェイ、二段のピックガード、そしてヘッド部に刻印されたロゴなどの外見的特徴が多い、職人が一本一本手作りで製作してるから仕上がりはとても洗練している。アタックを強くすればソリッドな、サウンドアルペジオならばポップなサウンド、様々なプレイに対応できるっぺ。12弦モデルもあって主弦と副弦を通常の12弦のギターをは逆に配置することでリッケンパーカーならではの特徴的なサウンドを生み出すっ」


 喋りながら、振り上げて罪人の頭に叩き落とす。


「次っ!」


「はい、児童虐待、レベル4ですっ!」


 少しレベルが上がった。一瞬歌音さんの動きが止まる。

 でも、すぐにギターを選んだ。


「4ならこれだっぺ」


 そういい、手にしたのは。


「ギブサン、エクスポローラーっ! これまた斬新なデザイン、まるで斧のよう。マホガニー材特有のクリアな音色が特徴で太くパワフルなサウンドがハードロックやメタルのアーティストに好まれる。見た目は派手だが仕様は非常にオーソドックス。今持ってるこれは初期のコリーナ材で作られた非常にレアな一本っ!」


 え、そんなレアなものを・・・・・・。


「ひがあああああああぁぁぁあ」


 何度も罪人の体に打ち付ける。後から聞いたら色々拷問用に強化してるとかなんとか。


「はい、次っ!」


「放火、レベル4です!」


「なら、これだっ!」


 今度は黒いギター、そしてそれとは別にある物を取り出す。


「ファンダー、ストラトキャスコー。ストラップでギターを吊り下げたときのバランスを考慮、ボディー上方に突きだした左右のホーンがより長くなっている、シンクロナイズドトレモロユニットと呼ばれるビブラートユニットを搭載。3シングルコイルピックアップによる豊富なサウンドが特徴。リア側はより高音、フロント側は低音の効いた甘い音、センターはその中間のような独特な音色、それらを組み合わせたハーフトーンもストタトキャスコー独特の魅力あるサウンドだべ。そして、さらに・・・・・・」


 歌音さんは、そのギターにオイルをぶっかけた。

 そして、火をつける。

 燃え上がるギター。

 

 え、なにしてんの、この人。

 後から聞いたら、誰かの真似みたい。


 その燃えさかるギターでファイヤーアタック。


「はい、次」

「レベル2」

「じゃあ、ゼマテェスっ! メタルフロンティア。これは・・・・・・」


「はい、次」

「レベル3」

「じゃあ、グレッテ、カントリージェントルウーメン。これは・・・・・・」


 こうしてどんどん裁かれていく。


「はぁはぁ、今日もいいライブだったっぺ」

「お、お疲れ様です」


 結局僕は読み上げるだけだったね。

 なんか、他の拷問士と組むとこんな事が多いなぁ。


「今回はギターしか使ってなかったけども、次回はベースでいくべ」


 あ、僕にはよく見分けがつかなかったけど、ここにはベースもあるのか。

 そういえば弦がギターと比べ太くて数も少ないのがそうなんだっけ?


 しかし、特級はなんでこんなに変な人が多いのだろうか。

 まともなのは僕だけみたい。

 うちにあるのはムスタング。

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