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おや、うん、これは問題発生です。(対凶悪立てこもり犯罪者集団編・其の三)

  こんにちは、蓮華です。

 今、私達はリョナ子さん救出のため執行局の中に。


 私は今回の先導者が監視室にいると考えました。

 しかし、監視室は最上階、今の私達では遠すぎる。

 なので、お願いしたのです。

 同時に潜入した、本来敵であるあの方達に。


 そちらはお願いしますね。

 殺人鬼連合の皆様。



「蓮華ちゃん、さっき私も監視室の可能性は高いっていったけど、正直確定ではないよ」


 私、ドールコレクター、円さんの三人は小走りに目的地に向かいます。

こっちは、監視室の扉を開けるために管理室へ行かなくてはなりません。


「そうですね。先導者が誰だけ分からない、相手を知らない状態での読み合いは不可能です。裏の裏を読んでも、さらに裏をかかれるかも、そうやっていくと結局一周してしまいますし」


 せめて、正体が分かればいいのですが、それも監視室を抑えなければ無理でしょう。


 とにかく今は監視室を制圧するのが先です。



 程なく、監視室が見えてきました。

 

そこで待ち受けていたのは。


「お、本当だ、本当に来たぞ」

「はっ、まじだ、しかも女だ、いいぞ、いいぞっ」


 一人は中年のおじさんですね。お腹もぽっこり、見た目的にはそこらにいそうな普通の男性です。

 もう一人は、二十代くらいの中肉中背の男。こちらもごく一般的な様相。


 でも、私は知っています。

 こいつらが誰で、どんな事をしてきたのかを。


 中年の方は、数十年前に6歳の少女、8歳の少年を殺害。いずれも遺体を解体し、性器を食しました。しかし、これで終わりでは無い。これほどの大事件にもかかわらず、彼はレベル4の執行のみで釈放されてしまった。これは司法取引と、彼が以前この国に勤仕していたからです。男は釈放された翌年からまた大量殺人を犯します。水商売の女性を標的に、絞殺して屍姦。その遺体を解体した後、性器を切り取り食らう。これを7回繰り返しました。

 現時点でのレベルは17。つまりレベルブレイカーに認定されました。


 若い方は、13歳で母親を口論から撲殺。未成年、その家庭環境を顧みて更生可能と判断、更生施設に送致。ですが、その時、この男はその行為に性的興奮が芽生えていた。人を殺す事に快感を得てしまったのです。その7年後、その願望を実現させた。飲食店でバイトしていた女性の仕事後を狙い後をつけた。彼女が自宅のドアを開けた瞬間、背後からナイフを突き刺し、即座に強姦、その数十分後に帰宅した妹も襲い、ナイフで瀕死にした後にまたも強姦。一息ついたのち姉妹に止めを刺し、現金を奪ったうえで放火、逃走。

 こちらもレベルは複合で12。こちらもレベルブレイカー認定です。


男達はこちらを見て笑います。


「あの、金髪、俺が犯して殺した奴にちょっと似てる、これはいい、同じ事をすればあの時の感覚が戻りそうだ」


「あぁあああ、女、女、女を殺せる、殺して、犯して、もうできないと思ってたのに、あああはっはははは、やった、最高ぉ」


 にやつき、獣のように、涎を撒き散らして。


 こちらに走り出した男達。

 おじさんは手に鉈を。若者の手には包丁を。


 私の前に連れの二人が飛び出します。

 

 互いに、自分の得物で相手の刃物を防ぐ。

 

「なんだ、その小さなナイフ、やる気あるんか、おらおら、俺は泣き叫ぶ女の声が大好きなんだ、早く聞かせろ、きゃーぎゃー、ぎゃー、やめて、やめてくださいって嘆願しろ、泣け、叫べ、その度、興奮する、ああ、あの時のあの餓鬼の目が忘れられねぇ」


「俺もだ、殺した後だと、人形みたいで、だがそれが逆にいい、温かい体がどんどん冷たくなって、柔らかい体もどんどん硬くなって、その変化が楽しくて、不思議だろ、何回でも何度やっても全然こっちは衰えない、むしろ絶頂がずっと続くんだあ」


 二人の犯罪者は躊躇なく刃物を振り回します。


 う~ん、レベルブレイカーだけあってその思考、言動、相当やばいですね。

先ほどの経歴も凄いですよね。

 とんでもない異常者です。


 でも、信じられないことに、あれが生易しく見えちゃうほどの異常者もこの世にはいるんですよ。

例えば、すぐ近くにいる二人の少女なんかがそうですね。


 悪意、殺意、男達が刃物を打ち付けられる度それは確実に彼女達の体に染み渡ってるはずなんです。

 でも、彼女達が表情を変えることはありません。

 毒を猛毒で打ち消してます。


 でも、様子がおかしいですね。彼女達は別段強くはありませんが、ただ異常ってだけの者に遅れをとる事もないのですが、今は防戦一方です。

 力では劣っていますから、このままではジリ貧になる。

 一体どうしたことでしょう。


「蓮華ちゃん、ここの監視ってリアルタイムで別の場所に送信されてるよねぇ。それってどうなってるの?」


 ドールコレクターが敵の攻撃を受け流しながら私に顔を向けました。

 あぁ、なるほど。それを気にしていたのですね。

たしかに、ドールコレクターのいう通り、ここの監視態勢は万全をきすため別の施設にも随時情報が送信されております。

 でも、それはここに潜入する前にとっくに対策済みですよ。

 まぁ、私がやるまでもなく、シストくん達がやっていたでしょうけど。


「それは、問題ありません。私も後で怒られたくありませんので」


 それを聞いたドールコレクターの切れが一段戻りました。

 でも、まだ本領ではない。

 もう一つ、鎖が絡まっているみたいですね。

 それは、きっと。


「あぁ、目にゴミが入りましたぁ、これは数分間何も見えませんー」


 私ですね。

 わざと目を押さえ、そう口にしました。


 闇が四つ。

 その一つが天に向かって吹き上がります。


「円ちゃん、禁則事項其の三、解除。好きにしていいよぉ」


「お、やったっ、いくぞ、いくぞぉぉ」


 隣の闇も同調したように同じく勢いをつけ。

 大きな黒いものは交わり、大きく、そして相手を呑み込んでいく。

 一面、隙間無く、彼女達の色に世界が変わる。


「いだぁぁぁああああああああ」

「ひゃあぁああああああがあああ」


 すぐに男の叫び声が周囲に轟く。


「あ、私は貴方の悲鳴には興味が無いの。ただ五月蝿いだけだもん、だから、ちょっと黙って」


「うくく、お前はバール女と気が合いそうなのだ、それがまた気に障るのだ」


 男達の体に傷が、それはどんどん数が増えていき。

 脚を集中的に狙われ、男達は床に這いずる事に。

 廊下に男達の血が塗られていきます。


「ああ、ああ、ストップ、ストップっ! 負け、俺の負け、もうやめ、冗談、冗談だからっ!」


「俺も、俺も、降参、許して、やめろ、もう、無理、これ以上は、痛い、痛いっ」


 さっきの威勢はどこへやら。

 男達は必死に懇願しはじめました。

 でも、それでやめる二人じゃありません。


「だから、五月蝿いんだよぉ」


 ドールコレクターが男の口目掛けて鋭く蹴りつけます。

口から大量の鮮血が溢れだし。

 男が口を押さえ、悶え狂っていると、ドールコレクターがそこへしゃがみ込みました。


「さっき、おじさんが殺した女の子と私がちょっと似てるって言ってたよね。どう、今でもそう思うかな?」


 見た目はどうか知りませんが、中身がこれですからね。本来の彼女を知ってる人なら絶対口にしないでしょう。


「姉御、こいつ、殺していいのか? それとももう少し遊ぶのか? でも時間がない、どうしよ?」


 円さんは、もう一人の男の耳を切り取ってそれを無造作に投げ捨てた所でした。


「いや、私達に殺されるなんてそんな幸福を与えちゃ駄目だよぉ。ここは執行局。この人達はすでに地獄に来ている。後は鬼がやってくれるよぉ。私達なんかじゃとても敵わないような手段でね」


 ほう、ドールコレクターもわきまえてますね。尊重し仕事を奪う事はしないと。

 彼らはここで彼女達に殺されるようにもっと挑発なりなんなりすれば良かったですね。

 後に知るでしょう、あの時殺されていれば良かったと。 

 


男達を拘束、一緒に管理室に入ります。

 この中には他に仲間はいないようですね。


 職員達は最初の時点で纏められどこかに1カ所に監禁されているのでしょう。

 拷問士達は基本、自室に立てこもってる。

 でも、あの人達は正義感の塊のような者も多いですからね。

 職員が人質になってる時点で、下手な行動は起こさないと思いますが。


「よし、監視室は抑えました。シストくんに連絡。これで先導者が見つかればいいのですが・・・・・・」


 こうして私はスマホに手をつけました。



 こんにちは、シストです。

 今、僕達は蓮華さんの合図待ちです。


「ほら、ほら、どこが、痛い、あぁ? ほら、言え、早く、ほらほら」


 扉にいた犯罪者の二人組はすでにタシイ達にやられてぐったり壁にもたれてます。

 顔は腫れ、全身血だらけ、息も絶え絶えって感じ。


「うう、全部、どこもかしこも、痛いぃぃ、痛いっですっ」


 男達の前にしゃがんで、二人はまだ何かやってますね。


「ああ、それは駄目だ。これはお注射が必要だ。どれ、アタシが打ってやるよ、ほら、腕出して」


 目黒ちゃんが男の腕を強引にひっぱると、関節付近に千枚通しを突き刺した。


「あぎゃぁあぁあああああああああ、いあががががだだあ、いだあいあ、いだああ」


 男が叫ぶ、にやついてたタシイ達の顔がさらに砕ける。


「目黒ちゃ~ん、こいつまだ痛いってさ、注射足りないんじゃな~い」

「そうだねぇ、後、2、3本いっときますかー」


 今度は眼球目掛けて。

 突き刺す。


「ひゃああがあぁあああああああああああああああ」


 一際、大きな声が響く。


「こらこら、殺しちゃ駄目だよ。こいつらはさっきの巨額の横領犯とは違う。レベルブレイカーなんだから簡単に殺したら拷問士に恨まれるよ」


 目を離すと相手は死ぬ。

 タシイ達は殺人鬼で、殺すのは専門だけど拷問は素人だからね。

 餅は餅屋に任せなきゃ。


「お、蓮華さんからきたよ」


 震えるスマホを取り出して、内容を確認。

 無事、管理室に入ったみたい。


 ここの扉は開けたみたいだから、中に入れる。


「タシイ、目黒さん、気をつけて、中に先導者がいるかも」


 蓮華さんとの通話を切らないまま、細心の注意を払い扉を開ける。


だが、そこに人の気配はなく。

 多くのモニターだけが執行局の様々な場所を映していた。


「どうやら外れですね。はい。え、はい、ちょっと待ってください。えっと・・・・・・17番ですね。ええ、空です。てことは、そういう事ですね。じゃあ、僕達は・・・・・・はい、了解しました」


 タシイと目黒さんが僕の顔を見る。

 僕は今し方蓮華さんに言われた事をそのまま伝えよう。


「ここに首謀者はいなかった。でも逆にこれで目星がついた。僕達はこれから・・・・・・」


 中央に向かって、いよいよリョナ子さんの所に向かうはずだったんだけど。


「ああ、蓮華さん、聞こえますか。ちょっと大変な事が起こってます」


 通話を切らないままで良かった。

 モニターの一つにとんでもないものが映っていた。


「すいません、今回、うちもプロを連れて来たんですよ、で、雑魚掃除のために最初に解き放ったのですが・・・・・・どうやらそっちのプロと遭遇してしまったようです」


 モニターには、瑞雀ちゃんと蛇苺の戦う姿がばっちり流れてる。


「わぁ、凄ーい。二人とも人間の動きじゃないよ。あんな至近距離で銃を撃ちあって、どっちもそれをかわしてる」

「おお、あの体勢から蹴りをいれるか、アタシ達じゃとても真似できないね」


 タシイと目黒ちゃんもモニターを眺め、すっかり目を奪われている。


「ああ、はい、じゃあ、あれはほっといて、雑魚掃除は僕達が・・・・・・はい、じゃあ、そういう事で」


 予定が狂った。本来仕事をする人達があんな状態。


「仕方ない、残りの犯罪者は僕達とあっちで手分けして倒す事になった。蓮華さんが先導者を、僕はここで目になる。タシイと目黒ちゃんはリストを見せるからそれぞれ敵の元に向かってもらいたい」


 拷問士の個室など目が届かない場所もあるけど、ある程度はここで把握できる。

 僕が指示を送り、他の殺人鬼達を向かわせる。

 

さて、ここからは僕達のターン。

 

 もう少しです。


 もう少しだけ待っていてください。


 今、貴方のためだけに。


 僕達が全力で駆け回ります。

 pixiv内で双月暦さまより、また色々リョナ子のキャタクタ―を書いて下さりました。タイトル検索でも出てくると思うので、是非!

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