おや、うん、これはお互いをスイッチですね(対凶悪立てこもり犯罪者集団編・其の二)
こんにちは、蓮華です。
今、私達は凶悪犯罪者達に占拠された執行局に乗り込んでいる最中です。
私達の目的は一つ、中にいるリョナ子さんの救出。
なにやら殺人連合の皆さんも出張ってきてるみたいですね。
この時の私達は、表面上では冷静さを装っていました。
でも、誰も彼もが内面ではパニクっていた。
私も、ドールコレクターも、殺人鬼連合の皆さんも。
それだけみんながリョナ子さんを心配していたのです。
だからでしょう、本来なら考えられないようなミスを犯していた。
その事に気づくのはもう少し先の事でした。
地下から一階に登ります。
ここからが本番でしょう。
「さて、このまま進むのはリスクが高いです。先制攻撃を仕掛けましょう」
まずは初撃で大打撃を与える予定です。
「ん、どうするのだ?」
円さんが首を傾げます。
「ここで使っちゃうんだねぇ」
ドールコレクターは察したみたいですね。
そうです、今回は時間がない。
リョナ子さんの救出もそうですが、私達がやってる事は所属する機関にしてみれば褒められたことではありません。早急に目的を果たしここから脱出したい所です。
「出し惜しみはなしです」
今し方、私達が乗ってきたエレベーターがまた下からある人物を運んできました。
扉が開いて、出てきたのは。
「お~、追いついた」
兎の仮面、黒いタンクトップにショートパンツはいつも通り。
もはやおなじみ、殺し屋集団ハイレンズのボス、蛇苺さんです。
相変わらず存在感がありますね、強者のオーラといいますか、私達のようないかに相手の裏をかくか、なんてつねに考えてるような者には一生出せないやつです。
「お疲れ様です。本当は潜入前に合流したかったのですが、こちらも少々焦っていたもので・・・・・・」
「いいよ、いいよ。あの迷路は面倒だったけど、なんかやばそうなおばさんが方向を教えてくれたから後は楽だったよ」
脱走防止の可変隔壁ですね。プロとはいえよくルートもわからず抜けられたものです。
「左手を壁につけて後はひたすら全力ダッシュさ。時間的に結構ギリギリだったけどね」
なるほど、その余りあるスタミナで壁が変化する前に駆け抜けたのですね。その割には全く息が切れてません、やはりこの方、化け物ですね。
「で、私は今回なにすればいいのかな?」
お、そうでした、感心している場合ではない。
「私達はこれから中央階を目指します。なので、蛇苺さんには先行していただき、もし敵に遭遇した場合、速やかに排除してもらいたいのです」
職員や拷問士は胸にそれぞれ身分証をつけているはずです。
なので、それがない者は全て敵と見なします。
「一応、今回の実行犯の面々は画像でお見せします。後は、蛇苺さんの判断に委ねますね。一般人とそれ以外を見分けるのは得意でしょう」
「ふ~ん、とりあえず悪そうなやつを倒せばいいのね、オーケーオーケー、任せといて」
蛇苺さんが、その場で何度か軽く飛び跳ねます。
「あ、この人達は手出し無用でお願いします、一応今回にかぎり私達と協力関係にありますので・・・・・・」
シストさん達、殺人鬼連合と衝突されても困りますね。
「あぁ、この前の奴らか、うん、仕事上で会ってる者の顔は忘れないよ、だから大丈夫さ、じゃあ、もう行くよ」
蛇苺さんの脚が、地面をきつく踏みます。
そう思ったら、一瞬、弾けるように駆け出した蛇苺さんの姿はすぐに見えなくなりました。
「さて、私達も行きましょう」
「うふふ、蓮華ちゃんあんな事言ってたけど、蛇苺ちゃんを陽動に使ったのね。てことは私達は別ルートかな?」
ドールコレクターが、意地悪そうに微笑んでますが、蛇苺さんなら言わなくても重々承知でしょう。
「対象は16人。ですが、必ず別に首謀者がいます。私達はそちらを抑えましょう」
現段階では、交渉を有利に進めるために準備をしているはず。
予想外の事態はさすがに想定外でしょう。
抑えるなら今です。
うまくいけば、他の仲間を全部無効化できます。
それに放置しておくとどんな妨害があるかわかりません。
むしろリョナ子さんと合流した後が問題です。
先に安全を確保しておかないと。
「ドールコレクター、貴方が首謀者ならどこにいます?」
私もある程度予想はしていましたが、確信を得ましょう。
「そうだねぇ、この手の奴は、自分が至高、自分以外は信用しない。だから、指示は全部自ら行う。ここには監視カメラが沢山設置してある。私ならまず目を奪うかな、脱出などの算段はできていてもまだ先」
ふむ、やはり監視室ですね。
部屋はたしか、最上階。
となれば・・・・・・。
こんにちは、シストです。
今、僕達殺人鬼連合はリョナ子さん救出のために、犯罪者達に占拠された執行局に来ています。屋上から潜入しました。
まず、先手としてこちらのリーサルウェポンである瑞雀ちゃんを早々に放ちました。
瑞雀ちゃんは、国家の裏で汚れ仕事を行う暗殺者。
本来、僕らのメンバーではないのですが、緊急事態という事でレンタルしました。
彼女がいれば鬼に金棒、ただの犯罪者なんて一ひねりです。
瑞雀ちゃんとまともに戦える人は、僕の知る限り二人くらいでしょう。
一人はもう死んでしまいましたけど。
「首謀者は蓮華さん達にまかせるとして、僕達は・・・・・・」
素直にリョナ子さんの元に向かおうか、そう思っていたら電話が震えます。
「ん、蓮華さんですね」
僕らが来ているのはもう知っているはず。
何の用でしょう。あちらはあちらで忙しそうなのに。
「はい、シストです。この前はどうも、はい、ええ、そうです。今ですか? 降りてきたばかりなので最上階ですね。はい、あぁ、なるほど・・・・・・わかりました。じゃあ、それはこちらでお受けします、そうなるとドアが問題ですね、それはそちらにお願いすると、はい、了解です」
こうして僕は通話を切る。
内容が気になるのか、連れの二人が僕の顔をじっと見ていた。
「深緑深層、なんだって?」
「つ~か、なんであいつがおにねー様の番号知ってるわけぇ?」
一応、僕達と蓮華さん達は敵同士だからね、印象がいいはずはない。
「まぁまぁ、なんかね、今回の首謀者は監視室にいる可能性が高いらしい。なので、今そこに一番近い僕達が行くことになった」
僕がそういうと二人は露骨に嫌そうな顔になった。
「はぁ~? なんで私達があいつらの言う事聞かなきゃならないの~」
「そうそう、アタシらはリョナ子ちゃんを助けにきただけだし」
まぁ、そういうよね。
でもね。
「悔しいけど、あっちの考えが間違う事はない。なので、これは必要事項だと思う。迅速にリョナ子さんを助けたければやるしかないね」
納得はいってなさそうだけど、二人は歯をギリリと食いしばってそれ以上何も意見をいうことはなかった。
監視室には鍵がかかってるだろう。
でも、ここの警備システムはほとんどが電子管理。
システム管理室は一階にあって、そちらは蓮華さん達が抑えにいってくれている。
監視室にはすぐについた。
でも、ドアの前には人影が。
「お、いたぞっ! こいつらだ!」
「てめぇらか、よくも福田をっ!?」
いかにも人相の悪そうな二人組。どちらにも手にはナイフ。
なるほど、やはり監視室で見てるね。
僕達の行動は筒抜けか。
「そいつベビーGだね。そして、そっちが30キラー。ベビーGは連続強姦魔、被害者を犯した後殺害、その体にアルファベットをナイフで刻んでいく。Aから始まり掴まった時点でそれはGまで数えた。そして30キラーは、刃渡り30センチのナイフで通り魔行為を繰り返し、その被害者はおもにカップル。どちらかを半殺しにしたまま、まるで見せつけるかのように片方をじっくり殺す手法」
生きてるって事は、瑞雀ちゃんが通り過ぎた後に出てきたのかな。
いずれにせよ、それは早いか遅いか、相手が誰かってだけの違い。
「はっ、それはそれは・・・・・・」
「アタシらがいえた事じゃないけど・・・・・・」
タシイがバールを床に引き摺りながら前に出る。
目黒ちゃんも並んで、向かっていく。
「殺しがいがあるじゃんかよぉぉぉぉ」
「二人の眼球、交換してあげるよ、どっちも汚いからよく似合うと思う」
蓮華さん達が鍵を開けてくれるまでの丁度いい暇つぶしになるかな。
でもどちらの男も、肉体的にはひょろひょろの貧相で。
ほら、やっぱり。
すぐに大きな悲鳴が聞こえはじめた。
葵円は次回頑張ってもらいます。




