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おや、これはすぐに動きましょう(対凶悪立てこもり犯罪者集団編・其の一)

 こんにちは。蓮華です。


 今日も今日とて、私はモニターと睨めっこで。

 同じ部屋にはドールコレクターと円さんが楽しそうにお喋り。


 いつもと同じだったんですよ。

 数分後までは。



この国は執行制度のお陰で犯罪率が他国より低い。

 それは精神をすり減らし日々尽力している拷問士達の賜物です。


 凶悪犯罪も比例して少ないのですが、高レベルの犯罪者を執行できるのは特級のみ。

 なので、地方で掴まった凶悪犯罪者は纏めて中央執行局に送られます。


 この日も、数人の高レベル犯罪者が中央執行局に輸送される予定でした。

 

 事件が起きたのは、彼らが到着して一時間も経たない間です。

 レベルブレイカーなどが拘留される地下に彼らを運び込もうとした時。

 

 彼らは行動を起こしました。

手錠はすでに外れており、対応していた職員を人質にとって。


 あまりの手際の良さ。念蜜に計画したのでしょう。

 ものの数時間で執行局は占拠されました。

 人質は拷問士や職員を含め135人。



 その一報、私の元にすぐに入ってきました。


「・・・・・・執行局で立てこもり事件っ!?」


 メールを読み上げ私が声を上げると、部屋の雰囲気が一変。


「・・・・・・蓮華ちゃん、詳しく」

「執行局って・・・・・・あれだ、ちゃんリョナさんが・・・・・・」


二人は立ち上げり、こちらの言葉を待っている。

 現状得られるだけの情報をかき集めます。

 

 刑執行庁の特殊任務支隊ヘリオガバルスはこんな時なにをしてたのでしょう。

 あ、ドールコレクターやカリバさんによってほぼ壊滅してたんでした。

 では、他の機関の暗部などは。

 あ、この前、私が消したんでした。

 再編成中のこの時を狙ったのか、それともたまたまか。

 あっちのタイミング的には最良。


「輸送された高レベル犯罪者が起こしたみたいですね。拘束はすでに解かれている。多分輸送中にはすでに自由だったのでしょう」


 なら、なぜ局に着く前に脱走なり事を起こさなかったのか。

 つまり、それは。


「局に用事があるんだね。てことは先導者は中か」


ドールコレクターがすでに扉へ歩き始めていました。


「お待ちなさい。私も行きます」


 引き出しを開け、無造作に中のものをバックに詰め込みます。


「拷問士は自室にいたならば、ある程度猶予はあります」


 部屋は内側から鍵がかかるでしょう、でもそれはあくまで拷問士にかぎってはです。他の職員はそうではありません。

 他の機関は全体で考えるので、二の足を踏むのは必至。


「これより、私達昆虫採集部の目的は一つ。リョナ子さんの救出が目的です!」


 ごめんなさい。私は国家認定犯罪者ハンターです。

 ですが、深緑深層のマーダーマーダーではなく。

 ここからは、リョナ子さんの友人として動こうと思います。


「全ては向かいながら考えます」


 上着を羽織り。


「さぁ、行きますよ」


 二人の間を抜け、先頭を切ります。

 両隣のドールコレクタ―も円さんもすでに笑みはなく。


「急ぎましょう」


 こうして私達はエレベーターに乗り込みました。



 時を同じく。


 こんにちは、シストです。

 ちょっと耳を疑うような情報が僕の元に届きました。

 

 急遽、緊急招集をかけます。


「執行局で立てこもり事件が起こった」


 ざわつくメンバー達。

 悠長に説明している時間はなさそう。

 僕の行動はすでに決めている。

 後は、他のメンバーの判断を委ねる段階。


「行こう、シストくん」


 最初に声をあげたのは目黒ちゃんです。

 

 ちょっと前なら、このまま二人で向かっていた事でしょう。

 ですが、幸か不幸か、少し前に彼女は会っています。


「私、まだリョナ子さんにお勧めの本聞いてないんだよね~」


 タシイが続けて立ちあがり。


「あら、お母さんもよぉ。まだ手料理を振る舞ってないわぁ」


 呼んでなかった母さんも横からユラリと登場。


 満場一致だね。


 最後に僕が腰を上げて。


「では、殺人鬼連合、今から出るよ」


 僕達は動き出す。

 たった一人の一般人を助けるために。


 待ってて下さい。

 すぐに僕達がお迎えにあがります。



 

 再び蓮華です。

 私達三人は執行局の外へ。

 すでに周囲は騒然としていました。


ただ、人質多数という事で中々手を出せません。

 本来は人命優先でしょうから、当たり前なのですが。


 私達は違います。

 他の多数を無視して、ただ一人だけのために動くのです。

 

 だから、なにも考えなくていい。


「レベルブレイカーが拘留されている地下に降りてそこから上がりましょう」


 あそこの地下は外の別箇所からエレベーターから行けます。

 以前、リョナ子さんとシストくんが出てきた場所ですね。


「私の予想だと、あの場の檻はすでに放たれているでしょう。ですが、まだ出てきてるとは限りません。最初から全力でお願いしますね」


「・・・・・・・・・・・・」

「・・・・・・・・・・・・」


 無言の二人、これはかなりきてますね。肌がピリピリします。

 あそこは彼女達の古巣です。

 まさかこんな形で戻るは思わなかったでしょう。


 人目を避けて執行局の敷地内に。

 さすがに私でも今の状況で中に入れるとは思えません。


 駆け抜けるように、施設の中へ。

 エレベーターを最下層にセット。


 私達を乗せた箱はどんどん落ちていきます。

 まるでそれは地獄へと向かうように。


「あそこの壁は、迷路のようになってます。なので囚人も例え解放されていたとしてもエレベーターまではすぐには行けないでしょう。パターンわかります?」


 万が一のために、あの場の壁は数分置きに配置がかわる仕組みでしたよね。


「大丈夫。全部覚えてるよ」


 いくつあるか分かりませんがそのパターンを全て記憶してますか。

 いくら、元あそこの住人だとはいえ、恐れ入ります。


 浮遊感がやみ、箱が目的地に。


 三重の扉を開け、いよいよ中へ。


 空気が変わりました。

 やはりここはこの世と隔離された場所。


「・・・・・・檻が解き放たれている。でも、まだ出てきてないね」


 ドールコレクターの顔がさらに険しく。


「円ちゃん・・・・・・」


「ういうい」


 ドールコレクターが声をかけると、一気に二人の殺気が増しました。

 近くにいるだけで頭を鈍器で何度も殴られているようです。


 共鳴するように、あちこちから闇が登ります。

 こちらの敵意に対して敵意で返してきます。

 ただの犯罪者ならこの二人に怯むはずなのに、さすがにここの住人は並じゃないですね。そもそも多勢に無勢。向ける人数により分散してしまいますか。


「自分の家から出てきちゃ駄目だよぉ~」


「黙ってお座りだ。もし命令を聞かないなら・・・・・・」


 警告。その場に押さえ込もうとしてるんですね。

 ですが、素直に聞く連中でもなさそうです。


ここで足止めしている余裕はないのですが。

 とはいえ、ここで切り札を出すのも・・・・・・。


 その時です。


 甲高い音が響き出しました。


 鉄と鉄をぶつけ合うような音。


 はっとし、後ろを振り向くと。


 包丁を檻の格子に打ち付けながらゆっくりこちらに歩いてくる一人の女性。


「あら~、やっぱり来てたのねぇ~」


 この場が一番似合う方でした。もしかしたらと思ってましたが、これで確信しました。


「ヴィセライーター・・・・・・」


彼女が来た瞬間、いくつも立ち上っていた闇が急に消えました。


「カリバおば様、さすがだねぇ、おば様のお陰で犬が吠えるをやめたよ」

「私でさえおっかないのだ、このおばさん、半端ないのだ」


 この状況でヴィセライーターが現れたって事は答えは一つです。

 それでも、連れの二人は警戒を解いていませんね。人食いカリバから目を離さず、ナイフをきつく握りしめていました。


「ここはおばさんが見ていてあげるわぁ。貴方達もこんな所でゆっくりしてられないでしょう、さっさとお行きなさい」


 自らお目付役をかってくれましたか。これはとても有り難いです。

 これ以上の保護者はいませんので。しっかり悪さしないように見ていてくれるでしょう。


「カリバさん、貴方がここにいるって事は・・・・・・」


 勿論、来てるのですね。目的は私達と一緒ですか。


「そりゃいるわよ~、私の可愛い子供達は上から潜入したわぁ」


 なるほど、そっちから。ヘリかなにかで屋上から中へ。


「あの四人は、中央を目指すっていってたわぁ。貴方達も早くしないと先を越されるわよぉ」


 中央はリョナ子さんの部屋があるフロアです。

 ここまで来て、あちらに横取りされるもの癪ですね。


「では、ここはお願いしちゃいますね。檻は開いてるとはいえ、化け物レベルはさらに中で拘束はされてるはずです。なので大丈夫だとは思いますが・・・・・・」


 例外があるとすれば、ですが。

 それは上にいって確かめましょう。


私達は本館へ続くエレベーターを目指します。


 ん、さっき四人と言いましたか。

 いつもの三人はいいとして、後一人とは・・・・・・。

 もしかしたら、私と同じ種類のカードを切ったのかもですね。



 

 さて、シストです。

 

 僕らは屋上へ降り、扉をこじ開け中へ。

 

 すぐに目にはいったのは、職員らしい人の首を腕で締め付けながら、銃を突きつける体格のいい男の姿。

 そりゃ上からの突入は想定しますよね。


 でも、まさかこんなに早く行動を起こされるとは思わず。

 そして、登場したのは、僕達のような少年少女達です。


 多少面をくらったようですが、男は人質を盾に叫びます。


「あぁ!? なんだ、お前らっ! いや、どうでもいい、そこから動くなっ! 動けばこいつの命は・・・・・・」


 はは、とてもベタなセリフですね。

 人質の職員は女性ですね、かなり怯えています。

 だけど、ごめんなさい。


 タシイと目黒さんが構わずどんどん進んでいきます。


「お、おいっ!? 動くなっ! まじでこいつ、殺すぞっ!」


「や、やめっ、助け、助けて・・・・・・」


 まるで耳にはいらず、二人は男のすぐ近くに。


「殺れ、殺れぇ、殺っちまえ、私達には関係ねぇ、関係あんのは一人だけだ、他は誰が死のうが生きようが知った事・・・・・・ねぇぇぇぇんんんだよぉぉぉぉぉっ!」


 瞬時に背中から取り出したバールが、女を巻き込んで男の頭部にクリーンヒット。

 すかさず、目黒さんの千枚通りが、男の脇腹に穴を開ける。


「うあがあぁぁ」


 男が人質から手を離した。

 タシイが続けざまに男の膝を思い切り叩き割る。

 膝をつく男の髪を掴んで、目黒さんがその顔面に何度も針を突き刺す。


 そのまま倒れる男の体に馬乗り、目黒さんの千枚通りを握った両手がこれでもかと振り下ろされる。顔、胸、首、ドンドン穴が開き、穴が増え、穴から血が。

 短い呻きが止めどなく上がり、それでも手は止まらない。


「死んだかな?」

「さぁ、どうだろ」


 息を切らせて、ようやく目黒さんが男から離れる。

 止めとばかりに、タシイが血だらけの男の顔目掛けてバールを振り下ろす。

 鈍い音がはっきりと聞こえた。


「あ、さっき聞いたよねぇ、お前ら誰だって」


 まったく動かなくなった男を見下ろし。


「私達は・・・・・・」


 二人が口を開く。


「殺人鬼連合だっ!」


 それを見ながら僕は短く息を吐いた。


「・・・・・・どうみても聞こえてないよ」


 人質の方は気を失ってるっぽいね。このまま放置でいいかな。


「・・・・・・瑞雀ちゃん、お願い」


 僕の後ろで静かに立っていた少女が頷く。

 三人で頼んだんだ、貸してって。


「画像で見せたメガネの女性以外は好きにしてもらって構わない」


 瞬きすらほとんどしない瞳は大きく開き、まるで機械のようにもう一度小さく首を振って。


 血のように赤い髪の少女は一気に廊下を駆け抜ける。

 二丁拳銃を握り走る姿はすぐに見えなくなった。


「よし、僕達はゆっくり下に降りようか。対象は16人。今1人やったから残りは15人かな」


 とはいえ、別に先導者はいるはず。なかなか狡猾な人物。

 それはそちらにお任せしますよ。


 読み合いは、そっちの方が得意でしょう。

 ま~た何も考えないではじめちゃいました。

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