あのね、変な二人も一緒なの。(殺人観光客おもてなし編)
どうも、どうもー、葵だよ。
私達は、とある宿泊ホテルにいるの。
隣にはいつものように円ちゃんがいて。
さらに今回は・・・・・・。
「ああぁぁぁ、空気わりぃぃ、なんでだろぉ」
「あれじゃな~い、近くいる汚物が悪臭放ってるんだよ、絶対そう」
とても感じが悪い二人組。
明らかに私達に言ってるね。
ツインテールの彼女は、普段は凄く可愛いのに、今は機嫌最悪と顔が歪みまくってる。
同調するように鼻で笑うのは長めのおかっぱで目の周りが真っ黒な少女。
そう、私達の他にいるのは九相図と眼球アルバム。
私達も、九相図達も、身につけているのは結構本格的なメイド服。
なんで私達が鉢合わせて、尚且つ使用人の衣装でこのホテルにいるかというと。
「タシイ、目黒ちゃん、ちょっと父さんからお手伝いを頼まれたよ。今、この国には殺人旅行者の団体さんが来てる。奴らは各国を巡りながら殺しを楽しむツアー客だ。情報は得たものの、厄介な事にこの参加者達は各方面に影響力がある方々ばかり。公に事は起こせないという事で、穏便に消えてもらおうって事になった、なので全員の消息を絶って欲しい」
多分、九相図達はこんな感じで指示されたと思うの。そして私達も大体同じ。
「おお、姉御、それあいつだ、殺人鬼連合のキラキラした奴だっ、凄い、姉御のレパートリーは無限大だっ! インフィニティー物まねだっ!」
円ちゃん褒めすぎだよぉ、そうでもないよぉー。
「おおおおおいいいぃぃぃぃっ! なんだ、こらっ! てめぇ、今のまさか、おにねー様の真似じゃねぇえだろうなぁぁあ!」
「うちのリーダーの真似するなんて、いい度胸だね、待ってて、今殺してあげるから」
あらやだ、激昂してるじゃない。もう、この人達すぐ切れるから嫌だよぉ。
「あぁぁぁっ! なんだ、姉御になんか文句あるのかっ! 姉御のやることは全て正しいのだっ! 姉御になにか言う事あるならまず私を通すのだっ! でも行き止まりだっ! 袋小路だっ! 追い詰められて死ねぇえぇ」
あ、こっちにもいたよ。すぐ見境無くなる子。
「まぁまぁ、それは後にしようよぉ。もう時間だよ。そろそろツアー客が訪れるよ」
殺気立つ三人をにこやかに宥める。
「ちぃっ、まじ殺す、終わったら殺す、後で絶対殺す」
「穴ボコにしてやる、お前が忘れても私は覚えてる、必ず刺す、刺す、刺す、刺す」
うわー、この人達怖いねぇ。口だけじゃないからなぁ。終わったらさっさと帰ろう。
こうして、私達は殺人ツアー客をお迎えすることに。
今回ツアー客を迎え入れるのは。
知る人ぞ知る、曰く付きのホテル。
今は改装されてしまって前々の不気味な雰囲気はまるで失われてしまったけど。
実はこのホテル、以前は踏み込んだら脱出不可能の殺人ホテルとして有名だったの。
宿泊した客は謎の失踪が相次ぎ。
のちに調査した結果。驚くべき自体が発覚した。
ホテルの全室が秘密の通路で全て繋がっており、それはまるで迷路のようで。地下室への落とし穴、のぞき穴、スライドする壁、拷問器具などが置かれた部屋、死体を処理する部屋、用途に合わせて色々作られていた。
経営者の殺人狂は、ここで何十人というお客を快楽のために殺し続けていた。
内装なんかは綺麗になったけど、至る所がそのまま残ってる。
私も一度は来てみたかったの。まさかこんな形で来るとは思わなかったよ。
数十年の時を果て、今このホテルでお持て成しをするのは。
私達、現代に生きる四人の殺人鬼。
時間通りに団体さんが到着。
皆、ぞろぞろ中へ入ってきた。
「ようこそ、おいで下さいました」
深々と頭を下げてお出迎え。
ツアー客は色々な国から参加していた。
人種や言葉は違うけど、一つだけ共通点があった。
今、このホテルにいるのは狂人のみ。
勿論、私達も含めてだよぉ。
その夜。
草木も眠るって時間。
私達は薄暗い地下室に集う。
程なく、上から人が降ってきた。
「あああぁぁあががっ!」
結構な高さから落ちてきたからね。
まず最初のお客様は、30代くらいのアジア系の男性。
コンクリートの床にたたきつけられまだ立ち上がれない。
俯せで呻き声を上げる男を、私達が囲みながら見下ろす。
「じゃあ、最初は私達がやるよぉ」
灰色の壁に囲まれた一室で、いよいよ私達の本当の仕事が始まる。
私達は男を全裸にすると両手両足を背中側に縛って、それを天井から吊した。
「うぅ・・・・・・どういうことだ、これなんだ、お前ら、なんなんだ・・・・・・」
この縛り方、駿河問いっていうんだけど、まず自分の体重のせいで脚より筋力のない腕が引き延ばされる。なので手首や肩はすでに痛みが発生しているはず。
本来は背中に重石をのせて放置したり回転させて苦痛を与えるのだけど。
「ケバブりますか」
私は長めの包丁を取り出す。
「円ちゃん、思いっきり回して」
「ういうい」
宙に浮く男の体を公園にあるジャングルジムを回転させるように力を加える。
「ああ・・・ああ・・・・・・・いいだだあああぁあ」
この時点でかなりの激痛なんだけど。
回る男の体に、ナイフを近づける。
そして。
「あああふぁがぁあぁあああああああ」
〈葵ちゃん活躍中〉
「うふふ、もっとだよ、もっと早く」
「ういうい、最高速だ」
回る、(うふふ)、回る、(うふふ)、回る、絶叫、回る、回る、回る。
「あはやああ、あはが、ばたあやあぁあ、え」
これまで散々他の国で現地の人を殺してきたんだもん、最後は殺される体験までできるなんて最高じゃない。
「姉御、姉御、私もやる、やりたい」
「うんうん、耳狙ってみよう」
円ちゃんと交換。
今度は私が回す役。
「おおおお、なんだ、案外難しいぞ、全然取れない、あ、■、裂いちゃう」
う~ん、円ちゃんの場合、削るっていうより切り裂いてるね。まぁ、二つ名通りだし、別にいいんじゃないかな。
「よし、私達もやろうか、目黒ちゃん、適当に落として」
「はいよ」
あっちも我慢できなくなったみたい。
眼球アルバムが操作すると、部屋のベットが抜けてここへと真っ逆さま。
さっきと同じく床に勢いよく激突、墜ちてきた人の体は痙攣していた。
「これいいね、来た時点で無抵抗、やりたい放題」
二人のお相手は、女だね。20代くらいの若い白人女性。
「私達はオーソドックスでいいや」
「そうだね、基本が一番だね」
九相図と眼球アルバムは女を椅子に座らせ手足を縛った。
意識が朦朧をしている女が、二人の顔を見ている。
きっとこれ以上ない笑顔。ここからじゃよくわからない。変わりに怯えた女の顔ははっきりうかがえた。
「まず、鼻を(あぁ?)す、次は歯を全部(あぁ?)る、次は額を(あぁ?)る」
「アタシが最後に目を(あー)する、オーケー?」
「ノー、ノーノーノー」
女は必死にそう口にしたけれど。
九相図の手にはバールが、それはすでにもう全力でスイング出来るように体は捻りきっていた後。
「はい、ドーンっ!」
「ノォッォォォォォォォォォォォォォォォっ!!!!!!!!!!」
〈タシイ、活躍中〉
「はい、次、口狙うから、前歯いくから」
再び、振りかぶる。
「アイアヤアヴァアアアアアアアアアアアアアアノオオオオオオノイオオオオオオオ」
必死に叫ぶ、どうにかしたいと、声を上げずにはいられない。
でも、その声が届くはずもなく。
〈タシイ活躍中〉
「ちょっと待って。目を傷つけられちゃ困る。眼球先に(せいっ)るよ、こいつアンバーだ、綺麗な色」
眼球アルバムが千枚通しを取り出す。
女の髪を摘まむと、顔を引き起こし。
「二個、ゲット」
〈目黒ちゃん活躍中〉
あっちも乗ってきたね。よし、どんどん行こう。
次の獲物が落下してくる。
今度は黒人みたい。
凄いね、今回は人種、性別、千差万別。
「うふふ、私達は人種、性別、宗教、文化、どんな事も差別はしない。全ての人は公平に・・・・・・」
鉈を握る。気分が高揚して顔が緩む。
「殺してあげる」
〈葵ちゃん活躍中〉
「そんなの入らんぞ、まぢ入れるのか、やるのかっ!?」
「はっ、切り裂きぃぃ、よく見てろや、絶対いけっからよぉ」
最初は二組に分かれてやってたけど、いつの間にか全員で代わる代わる好き勝手初めてしまっていた。
「あ、この中東系の人、目が青いねぇ、これ私も欲しいよぉ」
「あぁ? たく、しゃーないね。今回だけだぞ、お前はいいから私の目を返せよ」
いつもは険悪だけど、こうして一緒に楽しい事をしてると自然と距離も近づく。
多分、みんな変なテンションになってるからだと思うの。
獲物は尽きない、どんどん落ちてくる。
恰幅のいい男性。この人は護身用かな、銃を持っていた。
すぐ撃てるからかな、これリボルバーって回転式のやつだね。
ふむふむ、閃いたよ。
「ねぇねぇ、タシイちゃん。勝負しようよ。ルーレットで」
「あぁ? 勝負だ?」
私は全弾6発抜くと、弾を5個戻す。
「外れを引いたほうが負けね。ジュースでいいよ」
「おもしれぇ、やってやるよ」
持ち主の男を椅子へ括り付けて。
「じゃあ、私からね」
太股に銃口を向け、トリガーをひく。
同時にかなりの音が室内に響いた。
「びがやああぁぁあああぁぁあああ」
貫通した弾は地面にめり込み。
「よし、私だな、これでいいのか?」
九相図は、私と同じように逆の太股に。
「角度に気をつけてね、跳弾しないように」
九相図は慣れない道具に少し緊張しているご様子。
それでも特に問題はないまま交互に撃つ。その度あがるのは銃と男の声。
私の番で、引き金を引いたけど。
手応えはなく、どうやら私の負けみたい。
「あ~、私の負けだよぉ」
「はっ! やった、ドールコレクターに勝ったぞっ! おらぁジュースだかんな、終わったら奢れよ」
ゲームとはいえ九相図に負けるのは結構悔しいね。
相手もやたらと嬉しそう。
「ちぇ、しょうがないかぁ」
私はそのまま手にした銃を男の口に無理矢理突っ込んで、くわえさせる。
「これ、ありがと、お返しするよぉ」
そして、発砲。
脳を撃ち抜かれ、一部が飛び散り、男の頭が小さく跳ねたのち、反動で戻った首を深く埋めた。
「これで23人目。後は添乗員だけだねぇ」
「あ、そういやおにねー様にそいつは生かしておけって言われてた」
私達もそうだね、蓮華ちゃんがその人に色々聞きたいってあるとかなんとか。
そう思い出して横を見ると、その添乗員らしき男はすでにここにいて。
「あ、円ちゃん、ストップっ!」
「目黒ちゃん、そいつは殺しちゃ駄目なやつだ」
〈目黒ちゃん活躍中〉
「え、そうなのか、ああ、でもまだやり始めたばっかりだ、だから生きてるのだ」
「あぁ、ごめん、でもほら、(あ~れ)しか取ってないし」
辛うじて生きてるね。
なら、まぁいいのかな。
「口さえ残ってれば」
メイド服のエプロンは赤い染みが広がり、日も明けてきた頃に、ようやく私達のオモテナシは終わりを迎えた。
後は、メイドらしく、お片付けしなきゃね。
何はともあれ、これでこの国で犠牲者が出ることはなかった。
水際で阻止できたし、ツアーを組んだ所や顧客も判明するだろうし。
今回、私達いっぱい良いことしたよぉ。
前後編にすれば良かったかもです。




